まとめ
本稿では、日本から見た代表的な4つの金融・経済危機(日本バブル崩壊、ITバブル崩壊、リーマン・ショック、コロナ・ショック)において、株価暴落直前という最悪のタイミングで毎月2万円積立投資をした場合、信託報酬を差し引いても相当の収益を得られることを確認できた。
しかし、投資が上手く行き、投資元本より時価残高が大きくなっている場合、信託報酬の料率が「%」で表示されていることもあり、たいしたことないと、信託報酬等の手数料をあまり気にしていない人もいるのではないだろうか。
でも考えてほしい。日々の暮らしの中、家電製品などをオンラインで購入しようとしたら、その商品をさまざまなサイトで価格比較をする人が多いのではないのだろうか。「最も安価で買える」、「ポイントを多く貯められる」、或いは「送料無料」、「販売業者の信頼感」など、多くの要素を考慮してから実際の購入を決めた経験が少なくとも一度くらいはあるのではないだろうか。
株式インデックス投資においても同様であると言える。同一指数への株式インデックス投資では、投資総収益はほとんど同じになるが、信託報酬を含めた手数料の違いによって受取金額は大きく左右される。特に長期投資では、無視できないほどの大きな金額を手数料として投資総収益から差し引かれる。
家電製品どころではない金額の違いになる。しかし、信託報酬を含めた手数料を全く気にせずに、勧められた投資信託をあまり気にせず購入している人がまだ多くいるのではないだろうか。
一部の金融グループでは同じ指数に連動するインデックス型投資信託の手数料を統一し、最低水準にそろえる動きが始まっている。また、一部の資産運用会社の間では、投資信託の手数料引き下げ競争が激しくなっている。
しかし、投資信託の手数料引き下げは、既存の投資信託の手数料を下げるか、安い手数料の投資信託を新しくつくるかの二択になる。後者の場合は、既存の高い信託報酬がそのまま残り、投資家にとっては気が付かずに高い信託報酬の投資信託を購入するリスクがある。
従って、今から株式インデックス投資を始める人は、信託報酬を含めた手数料をしっかりと確認し、なるべく手数料が安く、資産残高も比較的に大きいか、資産残高が小さくても信頼できる運用会社の投資信託を選択してほしい。まずは手数料が安い「つみたてNISA対象」などの投資信託から、成長が見込める株式インデックス型投資信託を選択してみてはいかがだろうか。
熊 紫云
ニッセイ基礎研究所