株式インデックス投資の手数料はどのくらいなのか?
長期投資では手数料によって株式インデックス投資の最終残高が大きく変わることを説明したが、より分かりやすくするために、積立投資した場合の手数料を実額で示し、投資収益のどのくらいを占めるかを見てみよう。
具体的には図表5と同様、信託報酬の現水準を過去データに遡って適用し、4つの金融・経済危機直前から毎月2万円を積立投資した場合、「信託報酬総額」と「投資総収益に占める信託報酬の割合」を試算した【図表6】。
投資期間が長くなればなるほど、2021年9月末までの「信託報酬総額」と「投資総収益に占める信託報酬の割合(以下、対収益占率)」が大きくなる傾向にあり、同時に信託報酬の違いによる差も大きくなる。
米国株式(S&P500)インデックス型投資信託の場合だと、投資期間が短いコロナ・ショック直前からの試算では信託報酬が違っても信託報酬総額は2,000円~3,000円程度で、対収益占率も1%~3%程度に過ぎない。しかし、リーマン・ショック直前から試算すると、最安値の信託報酬0.33%の場合、信託報酬総額は34万円、対収益占率は4%だが、最高値の信託報酬0.61%の場合だと、信託報酬総額は62万円、対収益占率は8%になる。さらに、ITバブル崩壊直前から試算すると、最安値の信託報酬の場合、信託報酬総額は88万円、対収益占率は6%だが、最高値の信託報酬の場合だと、信託報酬総額159万円、対収益占率は10%にもなる。日本バブル崩壊直前からの試算では、最安値の信託報酬の場合、信託報酬総額は365万円、対収益占率は8%だが、最高値の信託報酬の場合だと、信託報酬総額は652万円、対収益占率は15%にもなる。
先進国株式(MSCIコクサイ)投資信託に投資する場合は信託報酬の違いによる差がさらに大きくなる。投資期間が短いコロナ・ショック直前からの試算でも、最安値の信託報酬0.15%の場合、信託報酬総額は0.1万円、対収益占率は1%だが、最高値の信託報酬1.05%の場合だと、信託報酬総額0.6万円、対収益占率は5%になる。
リーマン・ショック直前からの試算だと、最安値の信託報酬の場合、信託報酬総額は12万円、対収益占率は2%だが、最高値の信託報酬の場合、信託報酬総額81万円、対収益占率は13%になる。さらに、ITバブル崩壊直前からの試算だと、最安値の信託報酬の場合、信託報酬総額は33万円、対収益占率は3%だが、最高値の信託報酬の場合だと、信託報酬総額219万円、対収益占率18%にもなる。
日本バブル崩壊直前からの試算では、最安値の信託報酬の場合、信託報酬総額は135万円、対収益占率は4%だが、最高値の信託報酬の場合だと、信託報酬総額は847万円、対収益占率24%にもなる。
日本株式(日経平均株価)に積立投資をした場合でも、同様に信託報酬の違いによって、信託報酬総額や対収益占率の違いが大きく、長期投資になればなるほど違いが大きい。日本バブル崩壊直前から試算すると、同じ1,194万円の投資総収益の前提であっても、0.14%の信託報酬が最安の投資信託を購入すれば、信託報酬総額は44万円だが、最高値の0.88%だと、258万円も差し引かれることになる。
このように、繰り返しになるが、同一指数へ株式インデックス投資では、投資総収益がほぼ同じであるにもかかわらず、信託報酬の差によって手数料の総額が大きく異なり、実際の受取金額に思った以上に大きな影響を与えることが分かる。さらに、時間の経過とともに信託報酬の差は累積的に大きくなるため、長期投資では信託報酬に注目し、なるべく手数料が安い投資信託を選択することが大切であると思われる。