人をお金で「勝ち組」「負け組」に分ける考え方の蔓延が、ひきこもりを増やし、長期化させているのではないでしょうか。不況時に欧米から取り入れられた「成果主義」は、日本人の民族性とは本来なじまないものなのではないか、と臨床心理士の桝田智彦氏は語ります。 ※本連載は、書籍『中高年がひきこもる理由』(青春出版社)より一部を抜粋・再編集したものです。
「勝ち組」に追いつめられて…ひきこもりと関係する“日本人の民族性” ※画像はイメージです/PIXTA

「企業が生き残るための考え方」と「人を追い詰めない考え方」

それでも、中空構造の長所に目をやれば、甘えてもいい、甘えなくてもいい、成果が出てもいい、出なくてもいい、生産性が高くてもいい、低くてもいい、ということになります。

 

決めつけることをしない、ゆるくて、曖昧模糊(あいまいもこ)としたところに社会の懐の深さや豊かさを見る思いがします。

 

現代社会に蔓延する「行きすぎた成果主義」や「極端な生産性至上主義」や、「勝ち組・負け組」の言葉が多くの人々の心を傷つけ、疲れさせ、追いつめているように感じます。

 

企業が生き残るためには成果主義や生産性重視といった考え方も取り入れなくてはならないのかもしれません。しかし、それらが行きすぎると、人々を不幸にします。

 

ときには中空構造という、日本人が深層に持つ民族性に思いをめぐらせつつ、行きすぎにブレーキをかける必要もあるでしょう。

 

 

桝田智彦

臨床心理士/一般社団法人SCSカウンセリング研究所 副代表