コロナ禍によって、生活に困窮する人が増えていますが、一方で、周囲から羨まれるほどの「高給取り」の人たちもいます。なかでも夫婦ともに正社員で高収入という「パワーカップル」は、コロナ禍でも余裕を醸し出しているかのように見えます。実際のところはどうなのでしょうか?
夫婦ともに年収700万円超…「パワーカップル」を待つ厳しい未来 (※写真はイメージです/PIXTA)

高給取りだから「生活がラク」というわけではないが…

世間的に羨ましがられるパワーカップルですが、実際はどうなのでしょうか。共働きで子どもを意識的に作らないDINKs(Double Income No Kids)であれば、確かに余裕があるかもしれません。

 

しかし年収が共に700万円以上のパワーカップルであっても、この日本では余裕があるとは決していえません。まず問題になるのは税金。高給取りが「税金で半分はもってかれる」などといっているジョークを聞いたことがあるでしょう。

 

会社員であれば、まず「所得税」は非課税となる諸手当を除いた部分にかかります。「住民税」は住んでいる都道府県、市区町村に納める税金で、前年の年収によって金額が決定されます。

 

所得税の税率は、年収330万円から694万9000円は20%、年収695万円~899万9000円では23%。900万~1799万円になると33%に跳ねあがり、1800万~3999万9000円までは40%、4000万円以上だと45%にもなります。確かに「税金で半分はもっていかれる」は本当のようです。

 

さらに給料からは「健康保険料」「厚生年金保険料」「雇用保険料」、「介護保険料」(40歳以上)といった社会保険料が天引きされます。

 

高給取りであればあるほど、天引きされる額も増えていきますから、年収ほど生活は楽ではない、というのが現状です。

 

またパワーカップルは前述の通り消費意欲が旺盛といった特徴があります。社会的なステータスを意識して、それ相応な生活をしようと努力をしようとするでしょう。二人の給料からすると少々予算オーバーなマンションに住み、子どもにもさまざまな習いごとをさせる……一般の会社員と比べると、支出はだいぶ大きくなるでしょう。

 

またパワーカップルの場合、意外と貯蓄はしていない、というケースも少なくありません。「よく稼ぎ、よく使う」という感覚のまま50代を過ごし、定年になったときに恐ろしい事態に直面する可能性があります。

 

金融広報中央委員会『家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査] 令和2年』によると、金融資産保有額から借入金を引いた純資産額は、50代ではじめてプラスとなり、60代で大きく増えていることから、老後を見据えて貯蓄を本格化させるのは50代だといえます。

 

【年齢別「純資産額」の推移】

「20歳代」-186万円

「30歳代」-1776万円

「40歳代」-1046万円

「50代」368万円

「60歳代」1054万円

 

出所:金融広報中央委員会『家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査] 令和2年』より、各年齢平均値より算出

 

そんな50代で、老後を見据えた貯蓄ができなかったとしたら……。定年直後は夫婦で退職金があるから余裕かもしれませんが、生活水準の見直しを行わないと、あっという間に使い果たすでしょう。

 

老後で年金頼み、という状態でも生活水準を落とすことは難しいとされ、「老後破綻」の要因のひとつといわれています。生活を見直すことをせずに高収入を謳歌する「パワーカップル」に待ち受けるのは、そんな残念な結末かもしれません。