高齢化が進む日本…年金制度は破綻してしまうのでは?
日本の高齢者の生活を支えている年金。日本の公的年金制度は、保険料を納めている20歳以上の国民のほか、受給者自身や企業など、社会全体で支えられ、大きく日本国内に住む20歳以上が全員加入する「国民年金(基礎年金)」と、企業などに勤めている人が加入する「厚生年金」の二階建て構造となっています。
よく公的年金は預貯金のようなもので、将来受け取る年金のためにコツコツと保険料を納めているだと誤解している人が多いようですが、日本の公的年金制度は納められた保険料をその時々の給付に充てる「賦課(ふか)方式」。単年度決算、というイメージで、その時々の現役世代の保険料を原資し、インフレや給与水準の変化に対応しやすい方式となっています。
しかし現役世代と年金受給世代の比率が変わると、保険料負担の増加や年金削減の必要が生じるデメリットもあり、これが現役世代の不安の要因になっているともいえます。
そこで国は「現役世代の保険料負担が増えることは仕方がないが、際限なく保険料が上がることはない」とし、法律で保険料の上限を決定。5年に一度、保険料を再計算(財政再計算)し、およそ100年先まで人口と経済の仮定を立て、一定の範囲内で給付水準を自動的に調整するようになっています。
また年金給付の財源は、税金と「年金積立金」を活用することでバランスを取る想定になっています。年金積立金は、保険料から年金を支払いのち、余った分。高齢化が今よりも進んでいなかった時代の預貯金といえるものです。厚生労働省『公的年金財政状況報告平成30年度の概要』によると、時価ベースの年度末積立金は前年比2.6兆円増の200.7兆円で、年金支給額の約5年分。これは他の先進国諸国と比べても余裕のある状態です。
そして年金積立金の多くを「年金積立金管理運用独立行政法人(GRIF)」が運用。2001年度以降の累積収益は、収益率3.37%(年率)、収益額85.3兆円(累積)と、なかなかの実績を誇ります。
「積立金=年金給付の原資」ではないのがポイント。よく運用益がマイナスになったと大きく報道されることがありますが、仮に積立金がゼロになったからといって、年金制度そのものがすぐに破綻するわけではありません。
とはいえ、現役世代の将来不安が払拭できるわけではありません。 厚生労働省の『2019(令和元)年財政検証結果レポート』によると、所得代替率(現役世代の手取り収入に対する年金給付水準の割合)は5割程度としています。
――現役世代の手取りの半分の年金があれば暮らしていける
そのような保障をしてくれているわけではありません。国をあげて資産形成を推奨していますが、それは「将来の暮らしは年金だけでは足りませんよ」「国は年金給付は保障しますが、老後生活を保障するわけではありませんよ」と公言しているのと同じです。多くの人が将来を見据えて、不安を感じています。そこで行動するか、それとも何もしないか。自身の老後のためにできることは2択でしかない、といえるでしょう。