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連載栄養療法の実践現場から考える「新しい医療」の可能性【第3回】

「足りない栄養素」を見れば病気の真因がわかる…慢性疾患25000例を治療した医師が語る「分子整合栄養医学」の要諦

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「足りない栄養素」を見れば病気の真因がわかる…慢性疾患25000例を治療した医師が語る「分子整合栄養医学」の要諦 (※写真はイメージです/PIXTA)

飽食の時代にも関わらず“栄養不足”が懸念されている現代日本の食生活。ビタミンやミネラル不足、糖質過多といった偏りが、病気の発症や悪化を進めてしまうと言われています。そのような背景から、栄養状態を改善することで体に備わっている治癒力を高める「分子整合栄養医学」が、適切な管理が難しい慢性疾患に対し、根治も期待される新たなアプローチとして近年、日本にも広まりつつあります。この考え方に基づいた治療を20年以上前から実践し、延べ25000例もの治療実績を持つ東京都葛飾区の宮澤医院・宮澤賢史医師に、その特徴や手応えなどについてお話を伺いました。

足りない栄養素に着目すると、病気の根本原因がわかる

分子整合栄養医学は1960年代に米国のポーリング博士らが提唱した、適切な栄養コントロールで体内の細胞や分子の働きを向上させ、病気を改善へ導く治療法です。

 

そのもっとも大きな特徴は「個別化」であると宮澤医師。「単に標準摂取量や推奨量を摂れば良いというものではなく、患者さん個々人の栄養状態を調べたうえで不足している栄養素を特定することから治療が始まります。『足りない栄養素に着目すると、病気の根本原因がわかる』というのが、分子整合栄養医学の基本的な考え方だからです」

 

うつや慢性疲労など原因がはっきりせず現代の標準的な治療が奏効しにくい疾病も、この考え方を当てはめれば栄養面から根本原因を突き止めることができ、根治への道筋が拓けてくるというわけです。事実、分子整合栄養医学は原因不明の精神科疾患に対しての歴史が古く、海外では1960年代から治療に取り入れられているそう。

 

分子整合栄養医学における治療の大枠は、栄養素の不足を解消し体内の細胞や分子レベルの働きを高め疾患の改善や予防を目指すというもの。ただし実臨床では、患者さんの個別の栄養状態によって異なる戦略が求められます。これが、分子整合栄養医学は「個別化医療」であるとされる所以です。

 

宮澤医師と分子整合栄養医学との出会いは2001年。「妻が慢性的な疲労で苦しんでおり、当時勤務していた大学病院でも原因がわからず途方に暮れていたときでした。栄養状態を調べたところ、潜在性鉄欠乏とビタミンB不足が根本原因であることがわかったのです。これらの栄養素を補給したところ、症状は見事に改善しました。私はすっかり栄養療法の魅力にとりつかれ、2005年には大学病院を辞め、自ら栄養療法を実践すべく今のクリニックで治療を始めたのです」

 

単なる栄養補給ではなく「栄養不足になる原因」に対処

分子整合栄養医学は、名前のイメージから、単に足りない栄養素を補う治療法と捉えられがちですが、そうではないと宮澤医師。

 

「栄養が足りなくなる理由を考え、そこに手を打つことが大事です。私は今までの診療経験から、治療内容と順序を大きく5つに分け、原則的に下の段から行っていきます【図表】。これらのどれも重要なのです」

臨床分子栄養医学研究会HPより引用
【図表】治療ピラミッド 臨床分子栄養医学研究会HPより引用

 

「たとえば慢性疲労の場合、ミトコンドリアでエネルギー産生に使われるビタミンや補酵素の不足が直接的な原因としてまず疑われますが、その背景にはもしかしたらストレスなどで副腎疲労が起きていて、副腎から分泌されるホルモンバランスが崩れ、エネルギーの消耗に繋がることがあるかもしれません。さらに、副腎疲労があると腸壁が薄くなり、本来は体内に入ることのない物質が透過し、炎症のもとになることがわかってきています。副腎疲労で筋肉や腸の壁を作るタンパク質が分解されやすくなるからです。食事などで摂ったビタミンが吸収されにくいことがあるのかもしれない、ということです」

 

こうしたスキームを作ろうと思った背景には自分自身の苦い経験がある、と宮澤医師。「分子整合栄養医学を勉強しはじめたころ、私は大量のサプリメントを摂っており健康に自信があったにも関わらず、多忙からうつになってしまったのです。その理由を教えてくれたのは、ビタミンC点滴療法の先駆者、H.リオルダン先生でした。

 

米国で研修の際に、日本では見たことがない腸内環境検査を勧められ、受けてみたところ、腸内環境がボロボロであることが判明したのです。

 

さらに詳しく体内を検査したところ、歯の中からアマルガム(水銀含有の詰め物)のかけらが見つかりました。重金属検査を行うと、計測の針が振り切れるほど大量の水銀が検出されたのです。

 

そこで一度、サプリメントを必要最低限のもの以外はすべて中止し、食事を変え、水銀の解毒治療を行いました。そうしたところ、うつ症状が軽くなっただけでなく、アマルガムが入っていた歯と同じ側に出ていた乾癬が消失し、運動時に起きていた動悸もしなくなったのです」

 

栄養の吸収を妨げる炎症や毒を取り除き、栄養素がきちんと吸収・利用される状態にしてから、不足している栄養素を与える――この順番こそが大事、と宮澤医師は強調します。

 

こうした宮澤医院の治療方針についての詳細は【コチラ】読むことができます。

サプリメントを使うことで治療期間が3分の1まで短縮

栄養療法と聞くとサプリメントや点滴などで大容量・高濃度の栄養素を体内に入れるメソッドを思い浮かべがちですが、それは一選択肢に過ぎない、と宮澤医師。

 

「基本は食事・運動・睡眠。つまり日常生活を見直すことが先決であり、サプリメントなどによる外からの補給は、あくまで日常生活による適切な栄養摂取・吸収が軌道に乗るまでの暫定処置の位置づけです」

 

とはいえ、サプリメントの“威力”は決して小さくはありません。宮澤医師いわく「サプリメントを使えば、治療期間を“使わない場合”の半分から3分の1にまで短縮可能」。使用期間は個々人の病態の改善度合いにより差があるそうですが、いずれにしても分子整合栄養医学には欠かせない存在と言えるでしょう。

 

ただしどんなサプリメントでも良いわけでは決してなく、宮澤医院では開院以来、品質面で信頼のできる医療機関専用サプリメントを使っているとのこと。

 

「ビタミンは目的によって摂取量が変わってきます。たとえばビタミンCなら、100mgなら壊血病予防、10gなら風邪予防、100gならがん治療といったようにです。慢性疾患の改善には高用量を必要とするケースが多く、高用量のラインナップが揃っている医療機関専用サプリメントでなければ効果的な治療は難しいと考えます」

 

なお、どの栄養素が必要かは、生化学検査の結果から代謝経路などを考慮し医師が読み解いてアドバイスする必要があります。それには分子整合栄養医学の知識が必須であり、きちんと勉強した医師でないと効果的な栄養療法は行えないと言えます。

栄養療法やサプリメントの「正しい知識」を広めたい

サプリメントに限らず、健康に良かれと思ってしていることが実は逆効果だった…ということはよくある、と宮澤医師。「適切な利用の仕方や品質の見極め方を知っていないと、かえって健康に悪影響をもたらすことも」と警鐘を鳴らします。

 

「近年目立つのは、スポーツ飲料を大量に摂ったお子さんが体調不良になり運ばれてくるケース。スポーツ飲料に含まれる糖を代謝するためにビタミンB1が消費され、欠乏症を起こしているのです。しびれやむくみ、神経症状などが主ですが、重篤になると心不全を起こすことも」

 

正しい栄養療法やサプリメントの知識を多くの人に伝えたい、そんな思いから宮澤医師は2013年より分子栄養学実践講座を開講。2回の基礎集中講座と8回のテーマ別講座+症例検討会という形式で、栄養療法に必要なすべての知識を網羅した内容になっています。

 

第1期はたった6名で始まったこの講座も、年を追うごとに栄養療法に興味のある医療関係者や一般の方の評判を呼び、第17期目を迎える現在は数百名にも増え、総受講者は2000名を超えるほどに。

 

ヘルシーパスの田村社長はその準備段階に関わった第0期生であり、以降は講師として、医療機関専門サプリメントの製造・販売に携わる立場から、品質の良いサプリメントの見分け方や適切な使用をテーマに講義を行っているそう。

 

修了後は栄養療法クリニックの開業や栄養カウンセラーなどの道へ進む人が多数。栄養療法の登竜門と言っても過言ではありません。

 

分子栄養学実践講座についてより詳しい情報は【コチラ】に掲載されています。

 

「受講者の割合は医療関係者と自分や家族のために勉強したい一般の方が半々で、後者の受講が年々増えている」と宮澤医師。いまだ収束の見通しが立っていないコロナ禍を背景に、免疫力への関心が高まっている今、栄養やそれを吸収する腸を整えることの大切さは今後ますます、世間一般にも認識されていくことが予想されます。分子整合栄養医学が今まで以上にそのポテンシャルを認められ、脚光を浴びる日も近いかもしれません。

 

 

宮澤 賢史

宮澤医院 医師、医学博士

日本医師会認定産業医

 

田村 忠司

株式会社ヘルシーパス 代表取締役社長

 

宮澤医院 医師、医学博士
臨床分子栄養医学研究会 代表

問診事項と多くの血液、尿、唾液検査などにより疾患の原因を追究し、その原因に対する根本治療を行っている。

2001年から栄養療法を開始。ライナスポーリング博士の提唱する分子整合栄養医学を医療に取り入れた観点からの医療を展開。がんから糖尿病、リウマチ、精神疾患まで扱う範囲は幅広く、20000人以上に対して栄養療法の診療、データ解析、監修を行ってきた。

平成7年 東京医科大学医学部卒
平成12年 栄養療法を開始
平成19年 NPO法人高濃度ビタミンC点滴療法学会 設立
平成24年 分子栄養学実践講座 主宰
平成26年 医科歯科連携診療普及協会 理事長
平成27年 臨床分子栄養学研究会 理事長

【主な著書】
『医者が教える あなたのサプリが効かない理由』(イースト・プレス)

【臨床分子栄養医学研究会HP:https://orthomolecularmedicine.tokyo/

著者紹介

株式会社ヘルシーパス 代表取締役社長 日本抗加齢医学会 会員

1965年生まれ。富山県出身。1988年東京大学工学部産業機械工学科卒業。同年、株式会社リクルートに入社。通信事業を中心に経営戦略、新規事業立案、マーケティング戦略立案、営業活動に従事。

1988年「日本老化制御研究所」を擁する日研フード株式会社に入社。取締役経営企画室長、サプリメントの製造子会社の代表取締役社長として活動。

2006年「医療従事者が自信をもって使えるサプリメントを提供してほしい」という医師、薬剤師からの要請に応え、医療機関専用サプリメントの専門メーカー、株式会社ヘルシーパスを設立。栄養療法に取り組む医師、⻭科医師へのサポート・情報提供に取り組んでいる。

【株式会社ヘルシーパスHP:https://www.healthy-pass.co.jp/

著者紹介

連載栄養療法の実践現場から考える「新しい医療」の可能性