ビジネススーツにおいて、「ベーシック」と「無難」は異なるものです。本記事では、日本ベストドレッサー賞選考委員でファッション・プロデューサーのしぎはらひろ子氏の著書『一流の男だけが知っている 賢いスーツの買い方』(プレジデント社)より、一部を抜粋・編集して、スーツの着こなしは「ベーシック」にこだわった方がいい理由を紹介します。
ベーシックと無難は違う…「品格が出る」ビジネススーツの着こなし方 (画像はイメージです/PIXTA)

ビジネスにおける「ベーシック」と「無難」の違い

「ベーシックな服を選べば、無難ですよね?」

 

実はこの質問、多くの方から受けるものです。これからお伝えすることは、ビジネスシーンに関してのことだということを、先にお断りしておきます。

 

「ベーシック」な服装とは、「何も足さない、何も引かない基本の形であり、完成されたデザイン」のことです。そして背景には、「相手をリスペクトする」というビジネスファッションの目的に対応する、文化的な背景や慣習、つまり「ルール」があります。

 

一方、「無難」な服装とは、「欠点もない、とりたてて非難すべき点もない、さして優れた点もない」、つまり可もなく不可もない平凡な服のことです。

 

「ベーシック」とは、没個性(=無難)ではありません。美しく整って完成され、パーソナリティを際立たせるものなのです。ですから、同じ「紺のスーツに、白のワイシャツ、ワインレッドのネクタイ」を着たとしても、100人いれば100通りの着こなしになります。

 

かつて、某大手証券会社に勤める100人を前に講演会を行ったことがあります。見事なまでに全員が紺のスーツに無地の白シャツ、ネクタイ着用でした。

 

しかし、どの人が管理職で、どの人が主に外を回る営業の人なのか、私には一目でわかりました。明らかに装いに品格とクラスの違いが表れていたのです。これは決して「無難」ではありません。

 

たとえば「紺のスーツ」といっても、ものすごい数の種類があります。「ルール」の中で「ベーシック」な服を選び、シャツやネクタイを組み合わせることで、個性が生まれるのです。

 

ビジネスファッションに求められるものは、単なる「おしゃれ」ではありません。自己満足に完結した「おしゃれ」は、相手に不快感を与えることがあります。場合によっては、会社の看板以上に個人を前面に押し出してはいけない職業もあるでしょう。

 

そうではなく、自分の職業や立場を見た目で表すこと。すなわち「この人、仕事ができそう」「この人なら安心して仕事を頼めそう」と感じてもらうことこそが、ビジネスファッションには求められます。

 

そのためには「ベーシック」にこだわるのが、結局、一番の近道なのです。