日々発表される統計や調査の結果を読み解けば、経済、健康、教育など、さまざまな一面がみえてきます。今回は「栃木県と群馬県の年収事情と暮らしぶり」について見ていきます。
「栃木県」VS.「群馬県」会社員の年収差は「5000円」…暮らしぶりに違いは? ※画像はイメージです/PIXTA

隣り合う栃木と群馬…人口規模も給与事情も似たり寄ったり

栃木県と群馬県……ともに北関東と一緒に語られることの多い2県。総務省『令和2年国勢調査(速報)』によると、栃木県の人口は193万4016人で、5年前の調査と比べて4万0239人、割合にして2.03%の人口減。一方で世帯数は79万3753世帯で、前回調査から3万0656世帯、割合にして4.01%増となりました。

 

かたや群馬県の人口は194万0333人。5年前の調査と比べて3万2782人、割合にして1.66%の人口減。一方で世帯数は80万2343世帯、5年前調査から2万8391世帯、割合にして3.66%増となりました。

 

人口差は6000人、世帯数差も8000世帯ほどと、ほぼ同じといってもいい規模間の両県。そんな2つの県の給与事情を見ていきましょう。

 

厚生労働省『令和2年賃金構造基本統計調査』によると、栃木県の会社員の月収(所定内給与)は29万1500円で、推定年収(きまって支給する現金給与額と年間賞与その他特別給与額から算出)は457万1000円。47都道府県のなかでは、第17位です。男女別にみると、男性会社員の月収は31万5900円、推定年収は506万2000円。女性会社員の月収は24万4100円で、推定年収は361万4000円です。年齢による男性会社員の平均年収の推移を見ていくと、年齢と共に年収はぐんぐん上がっていき、定年前の50代後半で655万8000円に達します。

 

一方、群馬県の会社員の月収(所定内給与)は28万6200円で、推定年収は456万6000円。47都道府県のなかでは、第18位です。男女別にみると、男性会社員の月収は31万4000円、推定年収は509万1000円。女性会社員の月収は23万3100円で、推定年収は356万3000円です。年齢による男性会社員の平均年収の推移を見ていくと、年齢と共に年収はぐんぐん上がっていき、定年前の50代前半で630万0000円に達します。

 

【栃木県の男性会社員の年収推移】

「20~24歳」 317万6000円(304万6000円)

「25~29歳」 396万0000円(377万8000円)

「30~34歳」 470万6000円(431万2000円)

「35~39歳」 496万8000円(455万2000円)

「40~44歳」 526万4000円(478万0000円)

「45~49歳」 591万2000円(522万1000円)

「50~54歳」 627万1000円(543万6000円)

「55~59歳」 655万8000円(572万5000円)

「60~64歳」 422万2000円(390万3000円)

「65~69歳」 324万7000円(311万0000円)

 

【群馬県の男性会社員の年収推移】

「20~24歳」 321万6000円(303万4000円)

「25~29歳」 392万6000円(366万5000円)

「30~34歳」 446万6000円(411万5000円)

「35~39歳」 500万0000円(452万9000円)

「40~44歳」 558万6000円(498万2000円)

「45~49歳」 572万6000円(512万9000円)

「50~54歳」 630万0000円(552万5000円)

「55~59歳」 627万3000円(546万2000円)

「60~64歳」 403万7000円(376万8000円)

「65~69歳」 399万7000円(374万7000円)

 

出所:厚生労働省『令和2年賃金構造基本統計調査』より作成

(かっこ)内金額は男女計

 

さらに総務省の「令和2年度課税標準額段階別所得割額等に関する調」で、市町村別の年収事情を見ていきます。

 

栃木県のトップは県南部に位置し、JR「小金井駅」が中心駅となる「下野市」で371万5748円。県庁所在地の「宇都宮市」は第2位で350万2245円でした(関連記事:「栃木県・市町村別『平均年収』ランキング」)。

 

一方で群馬県のトップは、県下一の商業都市である「高崎市」で339万2914円。県庁所在地である「前橋市」は第2位で、329万6830円でした(関連記事:「群馬県・市町村別『平均年収』ランキング」)。

 

人口規模的にも大差のない「栃木県」と「群馬県」。会社員の平均年収もわずか5000円という僅差で、全国順位も17位と18位。隣り合う県は、給与事情も非常に似ているようです。

家計調査で明らかになった栃木県と群馬県・勤労世帯の家計

次に栃木県と群馬県の平均的な暮らしぶりを、総務省『家計調査家計収支編2020年』から、二人以上世帯/勤労世帯で見ていきましょう*。

 

*『家計調査』では県庁所在地を調査対象としているので、地域全体の実情とは異なる可能性があります。

 

栃木県の勤労世帯(世帯人員3.27人、世帯主年齢49.0歳)の持ち家率は79.6%。全国平均80.1%と同程度です。また配偶者(女性)の有業率は49.0%。全国平均54.7%に比べて5ポイントほど低く、専業主婦が多い地域といえるでしょう。

 

一方で群馬県の勤労世帯(世帯人員3.33人、世帯主年齢49.9歳)の持ち家率は84.0%。全国平均80.1%と比べて、持ち家率の高い地域です。また配偶者(女性)の有業率は64.0%。全国平均54.7%に比べて10ポイントほど高く、共働き世帯の多い地域といえるでしょう。

 

持ち家率と女性の有業率の差は、収入・支出の面でも差が生じています。世帯収入は配偶者収入で3万円ほど差が生じ、群馬県のほうが世帯収入が6万円強多い一方で、消費支出はほぼ同程度。持ち家率の低い栃木県のほうが「住居費」は多く、ほか「光熱・水道」「保健医療」「教育」の項目に関しては、群馬県よりも支出が多くなっています。

 

また平均消費性向は栃木県が63.5%に対し群馬県が62.6%、黒字率は栃木県が36.5%に対して群馬県は37.4%。栃木県のほうが消費欲は高く、群馬県のほうが貯蓄欲が高い、という傾向が見られました。

 

【栃木県の勤労世帯家計の平均値】

■実収入 59万5758(60万9535円)

「世帯主の収入(うち男)」43万4751(43万1032円)

「世帯主の配偶者の収入(うち女)」6万9361円(8万7666円)

■実支出 43万7606円(41万6707円)

「消費支出」3万08051円(30万5811円)

 食料 7万6293円(7万9496円)

 住居 1万5128円(1万8824円)

 光熱・水道 2万1515円(2万1696円)

 家具・家事用品 1万3750円(1万3364円)

 被服及び履物 1万0299円(1万0654円)

 保健医療 1万4412円(1万3068円)

 交通・通信 4万6972円(4万9469円)

 教育 1万6151円(1万6548円)

 教養娯楽 2万8523円(2万6824円)

 その他の消費支出 6万5007円(5万5868円)

「非消費支出(直接税、社会保険料等」11万0757円(11万0896円)

 

【群馬県の勤労世帯家計の平均値】

■実収入 65万4823円(60万9535円)

「世帯主の収入(うち男)」42万7332円(43万1032円)

「世帯主の配偶者の収入(うち女)」9万9575円(8万7666円)

■実支出 43万7606円(41万6707円)

「消費支出」33万1409円(30万5811円)

 食料 8万0888円(7万9496円)

 住居 1万1835円(1万8824円)

 光熱・水道 2万0492円(2万1696円)

 家具・家事用品 1万5470円(1万3364円)

 被服及び履物 1万2629円(1万0654円)

 保健医療 1万3656円(1万3068円)

 交通・通信 6万7336円(4万9469円)

 教育 1万4660円(1万6548円)

 教養娯楽 3万2265円(2万6824円)

 その他の消費支出 12万5412円(5万5868円)

「非消費支出(直接税、社会保険料等」12万9042円(11万0896円)

 

出所:総務省『家計調査家計収支編2020年』二人以上世帯/勤労世帯より

※数値はそれぞれの項目の平均値。加算しても実収入、実支出にはならない

※(かっこ)ない数値は全国平均

 

あくまでも2020年の統計調査結果に基づくものではありますが、「栃木県」と「群馬県」は、同程度の規模、給与事情ですが、持ち家率や世帯における女性の有業率の違いから、消費志向、貯蓄志向に違いが見られました。共に語られることが多い両県ですが、家計の事情は異なるようです。