会社員であれば、いつか訪れる定年。それまで一心不乱に働く代わりに、老後は、趣味に旅行にと、悠々自適に暮らす……そんな未来図を思い描いている人も多いことでしょう。しかし想定通りいくとは限りません。都内在住の男性を例に、老後生活のリアルを見ていきましょう。
悠々自適な老後を夢見た「65歳・元会社員」定年直後に想定外の悲劇 ※画像はイメージです/PIXTA

働けるまで働きたい高齢者…その動機に隠された老後への不安

――勤めていた会社は60歳定年で、そのあと65歳まで再雇用の制度がありました。年金がもらえるようになるまで5年。その間、働けるものなら働きたいと思い、結局、65歳まで働きました。

 

そう話すのは、都内在住の元・会社員。

 

――私たちの世代は「24時間働け!」という時代でしたから、とにかく、ガムシャラに働きました。老後は「たまに旅行にでもいって、ゆっくり過ごしたいね」と妻とよく話していたものです。

 

厚生労働省『令和2年高年齢者の雇用状況』によると、65歳までの雇用確保措置のある企業は164,033社、99.9%。さらに66歳以上働ける制度のある企業は54,802社で33.4%、70歳以上働ける制度のある企業は51,633社で31.5%と、高齢化の進行、人材不足を背景に、年を重ねても働くことのできる環境整備が進んでいます。

 

しかし、すべての高齢者が積極的に働きたいと思っているかは別の話。厚生労働省『第15回中高年者縦断調査(中高年者の生活に関する継続調査)』によると、65~69歳になっても仕事をしたいという人は56.4%、70歳以降でも仕事をしたいという人は39.0%。また仕事をしたいという人の51.2%は「生活費を稼ぐため、仕事をしなければならない」と回答。現役で働いている高齢者の背景には、切実な状況がありました。

 

老後の生活を支えているのは年金。厚生労働省『令和元年度 厚生年金・国民年金事業の概況』によると、国民年金受給者の平均年金額は月5万6049円。厚生年金保険受給者(国民年金+厚生年金を受け取れる人)の平均年金額は月14万6162円。

 

また月額受給額の金額別分布を見ていくと、国民年金の場合、「6~7万円未満」が受給額のボリュームゾーンで18.19%。また受給額が平均以下の5万円未満は41.55%と、5人に2人は平均以下という水準です。一方、厚生年金の場合、10万円に満たない人が20%を超え、平均受給額の14万円以下は2人に1人の水準です。

 

【国民年金「月額受給額の金額別分布」】

~1万円未満 6.25%

1万~2万円未満 4.69%

2万~3万円未満 4.05%

3万~4万円未満 5.16%

4万~5万円未満 8.57%

5万~6万円未満 12.83%

6万~7万円未満 18.19%

7万~8万円未満 18.33%

8万~9万円未満 11.73%

9万~10万円未満 5.63%

10万円未満 4.57%

 

【厚生年金「月額受給額の金額別分布」】

5万円未満 2.91%

5万~10万円未満 20.76%

10万~11万円未満 6.93%

11万~12万円未満 6.27%

12万~13万円未満 5.71%

13万~14万円未満 5.51%

14万~15万円未満 5.58%

15万~16万円未満 5.77%

16万~17万円未満 6.08%

17万~18万円未満 6.28%

18万~19万円未満 6.11%

19万~20万円未満 5.67%

20万円以上 16.39%

 

出所:厚生労働省『令和元年度 厚生年金・国民年金事業の概況』より

 

総務省『家計調査 家計収支編2020年』によると、高齢者のいる二人以上世帯(世帯人数2.57人)の1ヵ月の平均消費支出は25万4205円。また単身高齢者の1ヵ月の平均消費支出は、60歳以上で14万1951円、65歳以上で13万8542円。年金だけでは心許ない生活となりそうです。前出の男性は65歳で会社員人生を終えていますが、以降も働きたいというのもうなずけます。