会社員であれば、いつか訪れる定年。それまで一心不乱に働く代わりに、老後は、趣味に旅行にと、悠々自適に暮らす……そんな未来図を思い描いている人も多いことでしょう。しかし想定通りいくとは限りません。都内在住の男性を例に、老後生活のリアルを見ていきましょう。
悠々自適な老後を夢見た「65歳・元会社員」定年直後に想定外の悲劇 ※画像はイメージです/PIXTA

定年退職後、悠々自適な老後が待っているはずだったが…

――会社を定年退職したときは、寂しい気持ちがありました。しかしまだまだ65歳。これから色々楽しめる、とワクワクする気持ちもありました。

 

厚生労働省『令和2年簡易生命表』によると、男性65歳の平均余命は20.05歳、女性65歳の平均余命は25.82歳。定年後、老後生活は20年以上に及ぶのが平均的。仕事で忙殺される日々から解放され、ワクワクするのもうなずける話(関連記事:【2021年】平均余命早見表…あと何年生きられるのか?』)。

 

しかし男性は定年後、思いもよらぬ事が起きたといいます。

 

――介護が必要になったのです、妻が……定年してすぐのことでした。

 

前出の厚生労働省『第15回中高年者縦断調査(中高年者の生活に関する継続調査)』によると、高齢者(調査時64~73歳)のうち「介護している」人は9.6%。また「親(自分の父母/配偶者の父母)」を介護している人が7.4%。さらに「配偶者」が1.5%。100人1人程度の割合ですが、自身のパートナーの介護を行っています。

 

――退職金もあるし、それなりの預貯金もあったのだから、60歳定年で会社を辞めても良かったんです。ただ漠然とした不安から、再雇用制度を利用した……。こんなことになるなら、60歳で会社を辞めて、妻との生活を楽しめば良かったと、後悔することもあります。

 

後期高齢者になる前に配偶者の介護を行うことを、他人事か、自分事か、捉え方は人それぞれという水準ですが、介護自体は10人に1人と、他人ごとではないレベルです。「定年後には悠々自適な生活を」と考えている人も多くいるでしょうが、思い通りにならない場合も想定しておいたほうがいいでしょう。

 

――妻の介護度は低いので、大きな負担にはなっていませんが、行動は制限されますね。ただ最近は介護タクシーなどで遠出できるサービスなどもありますので、できる範囲で妻との生活を楽しむつもりです。