これまで52の新規事業を立ち上げてきた「起業のプロ」守屋実氏が、起業に伴って発生する問題点とその対処法について解説します。※本連載は守屋実氏の著書『起業は意志が10割』から一部を抜粋・再編集したものです。
スタートアップに立ちはだかる「ヒトや組織の問題」への対処法 (※画像はイメージです/PIXTA)

スタートアップ成功に向けて、最大の難関は?

今回はスタートアップを経験した際の失敗からの学びについて話をしたい。

 

起業の成功は簡単なことではないので、その分、失敗の話にも事欠かない。

 

当然、その学びをまとめた書籍も多々ある。たとえば、PMF(プロダクトマーケットフィット)について取り上げられることも増えた。これは、自社のプロダクトやサービスがあるマーケットに適合(フィット)している状態のことである。

 

いつからこの言葉が一般的になったのかは知らないが、PMFができなかったことによって資金が底をつき、解散や倒産に見舞われるというスタートアップの失敗パターンは、よくある事例だ。

 

また、PMF以前の問題として、「我々は何の課題に挑むのか?」というそもそもの初期設定の切れ味が悪く、そこから先、何をしても苦難の道であったという話もPMF同様によくある失敗事例だ。加えて、PMF以降の問題として、「いかにスケールしていくか?」という課題もある。投資を回収するタイミングで、成長し切れないという事例も多々ある。

 

そういった中で、最大の難所だと思っているのは「ヒトや組織の問題」だ。

 

スタートアップが成長していく過程では、良くも悪くも避けられないヒトや組織に関する山場や谷場がある。その一連を僕は「組織の動態論」と呼んでいる。

 

悲観的に捉えているというよりは、事業も組織も成長するには突破するべき壁があるということだ。そして、その壁は次のステージへの扉でもある。つまり、成功へのマイルストーンの意味もあるのだ。

「可変的」な組織運営が求められる

「組織の動態論」とは何か。日本において、「組織」というと固定的で、動きがないもののイメージが強い。しかし、今後はそこに可変性を表す、「動態論」の発想を組み合わせて考える必要がある。

 

組織とは、動き続け、変わっていくものだという理解に転換していくことが求められるのだ。

 

動態論のスタートは、「とにかく売る。想い120%!!」の熱量である。その熱量により、ゼロからイチへの見えない道のりを力強く進み始めることができる。とはいえ、その時期がいつまでも続くわけではない。企業が成長していくうちに、やがて「仕組みができておらず、組織がグチャグチャ」という状態に気づき始めるのだ。致命的な状態になる前にそれに気づき、手を打つ必要がある。

 

仕組み化できると一時健やかな時期が訪れる。しかし、残念ながらすべてが解決するわけではなく、やがて、中途半端な権限委譲や不慣れなマネジメントで社員のモチベーションダウンといった課題に直面することとなる。

 

こうして「組織の動態論=人と組織の良循環+人と組織の悪循環」に見舞われながら成長をしていくのである。

 

この未来を見通して、組織を捉えてほしい。備えることで、悪循環を最小限なものとし、良循環を大きくしていただきたい。

 

[図表1]組織の動態論
[図表1]組織の動態論