前回2月の記事では、2021年7月1日以降、リスボンとポルト、および沿岸地域の不動産投資による「ゴールデンビザ」の発給が停止されるとお伝えしました。その後のポルトガル政府の発表により、「ゴールデンビザ」プログラムの変更は、2022年1月から施行されることが最終的に決定されました。本記事では「ゴールデンビザ」の投資条件変更について解説するとともに、年末までの残された期間における投資戦略をお伝えします。※本連載では、海外移住支援のプロフェッショナルである株式会社アエルワールドが、長期居住権や永住権にまつわる最新情報を解説していきます。

「ポルトガル・ゴールデンビザ」でヨーロッパ移住

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ゴールデンビザは、不動産などへの一定額以上の投資により発行される長期居住ビザです。

 

ポルトガルの場合、50万ユーロ以上の不動産に投資することが条件ですが、都市再開発地域にある築30年超でリノベーションを行う中古物件に投資する場合は、35万ユーロ以上の投資によってゴールデンビザ申請が可能です。投資不動産の種類に条件はなく、自分が住むための物件でも、賃貸用物件でも構いません。居住用物件への投資が一般的ですが、店舗、オフィス、ホテルルーム、倉庫、駐車場など、購入する不動産の種類は問われません。

 

投資する不動産は5年間継続して保有することが求められます。ゴールデンビザを取得後、年平均7日間の滞在を含む一定の条件を満たせば、5年後以降に永住権や市民権の申請が認められます。また、永住権や市民権を取得すれば、不動産を売却することができます。

 

シェンゲン協定によってEU諸国への自由な行き来が可能になることに加え、極めて短期間の滞在要件で市民権の申請までできるゴールデンビザは、世界でも最も人気のある投資ビザプログラムです(関連記事:『物価が低く、住みやすいポルトガル…「ゴールデンビザ」の魅力』『富裕層に人気のポルトガル「ゴールデンビザ」…投資条件変更へ』)。

2022年1月1日以降の投資条件の主な変更点

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(1)リスボン、ポルト、および沿岸地域の居住用不動産投資によるゴールデンビザの申請が認められなくなります。内陸部、およびアゾレスとマデイラの自治区における不動産は今回のプログラム変更の対象外です。

 

(2)プログラム変更の最終段階で、居住用以外の不動産は、プリグラム変更の対象から除外されることが決まりました。たとえば、ツーリスト用不動産と位置づけられるホテルルーム(年間決められた日数の利用権付き)は、2021年以降もリスボンやポルトに位置する物件の投資によるゴールデンビザ申請が認められます。

 

(3)プログラム変更の対象外となる内陸部の不動産は、価格が都市圏の不動産に比べ低く、人口低密度地域*にある不動産には20%の投資規定額のディスカウントが適用されるため、28万ユーロ以上での不動産投資が可能です。(*1平方Km当たりの人口が100人以下の人口密度が低い地域)

 

(4)不動産以外の投資オプションについては、規定投資額が引き上げなどの条件変更が決定しています。たとえば、ファンド投資(ベンチャーファンドやプライベートエクイティーファンド)の投資額は現在の35万ユーロから50万ユーロへ、資金移転(銀行預金)は100万ユーロから150万ユーロに引き上げられます。

ゴールデンビザ…投資条件変更の背景と目的は?

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2012年10月にスタートしたポルトガルのゴールデンビザは、2020年12月までの累計で、投資家数9,389人、家族含めて合計25,439人がビザを取得した、世界で最も注目されている長期居住ビザプログラムの一つです。

 

国別投資家数の累計では、中国人4764人、ブラジル人989人、トルコ452人、南アフリカ人394人、ロシア人359人が上位5位ですが、最近では米国人投資家が急増(2020年単年は75人で第3位)しており、ポルトガルの人気の世界的な広がりを反映しています。

  

ゴールデンビザを申請するための投資オプションは複数ありますが、最も人気が高いのは不動産投資で全体の約90%を占めています。一年を通じてにぎわう首都リスボンや北の都ポルトが最も高い人気を集めてきました。なぜ、来年以降はリスボンやポルトなどでの居住用不動産投資によるビザ申請が認められなくなるのでしょうか? 以下のような理由が考えられます。

 

1.リスボンやポルトなどの大都市の不動産価格上昇に歯止めを

近年、EU各国をはじめ世界中の投資家によるポルトガルの不動産投資が活発になっています。恵まれた気候、割安な物価、外国人に優しく住みやすい環境、外国人居住者の国外所得をほとんど非課税にするNHR税制などがその理由にあげられます。また、リスボンやポルトなどの大都市や沿岸地域を中心に、観光客や旅行者向けの短期レンタル市場が伸長し、外国人による不動産投資意欲を後押ししています。

 

ゴールデンビザはEU以外の国々の投資家を対象にするプログラムですが、フランス人、英国人、ドイツ人など欧州国民によるポルトガルへの不動産投資は、実際、ゴールデンビザ投資家による投資額を大きく上回っています。その結果、不動産価格と賃貸価格の上昇により、ポルトガル人が都市中心部に住みにくくなる弊害が出てきているようです。今回の変更には、特に居住用不動産価格と賃貸価格の上昇を抑制する狙いがあります。

 

2.大都市周辺や沿岸地域から、内陸部の不動産への投資促進

大都市に加え沿岸地域など人口高密度エリアでの不動産投資を抑制し、人口低密度エリアである内陸部への投資を促進する目的もあります。ポルトガルの内陸部には、歴史に恵まれ風向明媚で素敵な場所が数多くあり、不動産価格は大都市と比べて大幅に割安な水準にあります。

 

また、マデイラ島とアゾレス諸島はプログラム変更の対象外となっており、現在の条件で引き続き不動産投資をすることができます。政府には内陸部や島嶼部に海外からの投資資金を呼び込み、地域発展の梃子にしたい考えがあります。

 

3.不動産以外の投資オプションの促進

不動産以外の投資オプションとして注目を集めつつあるのは、ベンチャーファンドやプライベートエクイティーファンドに投資するファンド投資です。投資金額は35万ユーロで、不動産投資に付帯する関連費用の負担がないことも評価の一因です。ポルトガル国内の未上場企業やプロジェクトにファンド資産の60%以上を投資し、最低5年間は売却できない設計です。しかし、来年以降、ファンド投資金額は50万ユーロに引き上げられます。

リスボンなど不動産投資によるゴールデンビザ申請期限

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現在、リスボンやポルトの居住用不動産投資により、ゴールデンビザを申請することは引き続き可能です。しかし、人気の35万ユーロ物件の供給は減少傾向にあり、物件選択の余地が限られてくる状況にあります。

 

ゴールデンビザの申請には、それに先立って不動産売買契約を完了する必要があります。不動産の選択から売買契約の締結までは、通常3ヵ月程度かかります。その間、弁護士契約、ポルトガル税番号の取得、現地銀行口座の開設に加え、ビザ申請のための各種必要書類の準備をしなければなりません。銀行口座開設の申込の際、マイナンバーカード(個人番号)の提出が通常求められます。

 

ゴールデンビザの申請は11月末までを目標にして、駆け込みの申請が殺到する年末・クリスマスを避けることをお勧めしています。それに間に合うように不動産契約を完了するためには、できるだけ早い購入不動産の選択が必要と言えるでしょう。