2021年「日本人の平均寿命」過去最高を記録
――老後、安心して暮らすには2000万円必要です
世間を賑わした「老後資金2000万円問題」。金融庁の金融審議会「市場ワーキング・グループ」が、「夫65歳、妻60歳の時点で夫婦ともに無職である」「30年後(夫95歳、妻90歳)まで夫婦ともに健在である」「その間の家計収支がずっと毎月5.5万円の赤字である」という前提のもと試算を行った結果、老後資金は2000万円不足する、というものでした。
このあとも、「老後資金は3000万円は必要だ」「いや、1000万円くらいでいい」「5000万円は必要だ」など、さまざまな議論が交わされましたが、そのなかで一定数、こんな声が聞かれました。
――長生きするつもりはないから、そんなにお金は必要ない
「老後資金2000万円問題」であれば「夫95歳、妻90歳まで生きたら」が前提でしたが、厚生労働省『令和2年簡易生命表』によると、日本人の平均寿命は女性は87.74歳、男性が81.64歳……確かに試算は、随分と長生きな夫婦をモデルケースに扱っています。
――そんなレアケースで試算した数値なんで意味がない。結局、老後のためにそんなにお金は必要ない
そう思われても仕方のないことかもしれません。ただ寿命を色々な角度から見ていくと、少々、考え方が変わるかもしれません。
まず日本の平均寿命の推移を見ていきます。いまから10年ほど前の2010年、男性は79.55歳、女性は86.30歳でした。さらに10年さかのぼった2000年は男性77.72歳、女性84.60歳。さらに10年さかのぼった1990年は男性75.92歳、女性81.90歳。この30年あまりで男性は5.72歳、女性は5.84歳、平均寿命は延びました。
仮に同じスピードで平均寿命が延びていったとしたら。現在30歳の人の60年後、男性の平均寿命は90歳を超え、女性の平均寿命は95歳を超えます。あまりに単純な計算ですが、そうならないとも言い切れるものでもありません。
また平均で語られることが多い寿命を、「中央値」で見ていきましょう。男性の寿命の中央値は84.58歳。平均寿命との差異は2.95歳あります。また女性の寿命の中央値は90.53歳。平均寿命は2.79歳。30年前と比較すると、男性の寿命の中央値も5.45歳、女性の寿命の中央値も5.82歳延びています。「老後資金2000問題」の試算の前提となった「夫95歳、妻90歳まで生きたら」の現実味が増してくる、というわけです。