日々発表される統計や調査の結果を読み解けば、経済、健康、教育など、さまざまな一面がみえてきます。今回は、「賃貸派の高齢者」に焦点を当てていきます。
家も借りられない「住宅弱者の高齢者」…生涯、賃貸派はリスクか? ※画像はイメージです/PIXTA

高齢者だと家は借りづらい…改善の方向に

高齢者世帯は増加傾向。賃貸物件が豊富な大都市ほど、賃貸派の高齢者世帯が多い傾向にあります。しかし家賃滞納や孤独死などのリスクから、「賃貸では高齢者は敬遠される」というのが通説。実際に「高齢者の入居は断る」という不動産オーナーの声、「何件も入居を断られた」という高齢者の声をよく耳にします。特に単身者の場合はリスクが高いと見なされる傾向にあります。

 

このように高齢者は賃貸物件を借りづらい、いわゆる「住宅弱者」とみなされているのが現状です。

 

しかし、近隣に頼れる家族がいる場合は、入居審査も通りやすくなるといわれています。家族の協力があれば、高齢者の賃貸暮らしも安心、というわけです。さらに高齢化をチャンスと捉え、積極的に高齢者にリーチする賃貸オーナーも増えています。

 

空き家が問題視されているように、現在は“家あまり”の状況。貸し手市場から借り手市場に変わっていくでしょう。高齢者専用レジデンスも増加傾向にあり、高齢者の賃貸ニーズに応えています。今後、「高齢者は家を借りられない」という状況は改善されていくといわれています。

 

また住宅ローンの負担を嫌って、あえて賃貸を選ぶ人も増えています。国土交通省『令和2年度住宅市場動向調査』によると、新築マンション居住者(世帯主)の平均年齢は43.5歳。「購入資金総額」は4393万1500円で、「首都圏平均」は4458万円、「近畿圏平均」は3987万円、「中京圏平均」は3476万円。

 

また「購入金総額」のうち、「自己資金」は平均1124万円で、「借入金」は平均3269万円。住宅ローンの 「平均返済期間」は31.1年で、年間返済額は139万1000円。つまり月々11万5000円の返済を30年余り続け、完済するのは後期高齢者である75歳になる直前。これでやっとローン地獄から解放されて悠々自適な生活が始まる……というには少々遅いと感じる人も少なくないでしょう。

 

仮に60歳定年までに何とか完済しようとしたら、月々の返済額は16万~17万円程度。結構な負担増です。毎月毎月、家計は火の車で、節約の日々……。「そんな思いまでして、持ち家にこだわるのは馬鹿らしい」と、賃貸を望むのも当然かもしれません。

 

もちろん、賃貸のほうが家計的に楽というわけではありません。多くの場合、住居費は持ち家だろうと賃貸であろうと、家計において大部分を占めることに変わりはありません。賃貸でも持ち家でも、結局は「楽ということはない」というのが真実。どちらにするかは、それぞれの価値観でしかありません。

 

1ついえるのは、持ち家派だろうが、賃貸派だろうが、将来は誰もが年金頼りの生活となり、それだけでは安心できないということ。そして、そのような将来に備えるために、現役世代であれば計画的な資産形成が重要である、ということです。