ここまでは、子どもを持つ人が経験する波でしたが、子どもを持つ、持たないにかかわらず、誰もが経験する波があります。
それが、現役時代とリタイア前後の収入の波です。これはいくつかパターンがあります。現役時代との収入の落差が大きい順から挙げていきます。
②年金収入のみの生活となるパターン。
③いったん定年年齢を迎えて再雇用されたものの、現役時代よりも収入は減ってしまうパターン(再雇用ではなく、リタイア後に別の職場で働いたり自営業になったりする場合もこちらのパターンに入る)。
④働きつつ公的年金を受給するパターン。働いて得る給与と厚生年金額によっては、「在職老齢年金」という制度によって、厚生年金の支給が一部または全部停止になる場合があります。
なお、年金収入のみの生活といっても、人によってその収入額には差があります。そもそもの公的年金額も人によって違いますが、勤め先からの企業年金が受け取れる人、あるいは確定拠出年金の受け取りがある人もいます。また、個人年金保険を自分で掛けてきていて、その受け取りがある人もいるでしょう。
いずれにしても、リタイア前後で収入の変化がある人のほうが圧倒的ですから、自分達の場合は、どういった収入の変化が予想され、リタイア後に受け取れるものにはどういったものがどれくらいありそうなのかを把握しておくことが、「老後まで安心な家計」につながります。
ちなみに、特に気をつけておくべき共働きカップルは、年齢差があるカップルです。夫婦のうち、どちらかが先に定年を迎えれば、今までダブルの収入であったものが、一気に片方だけの収入となる場合があるからです。
また、夫婦の片方が先の①~④のパターンのいずれになるかによって、どれくらい入ってくるお金がボリュームダウンになるかは変わります。「そうはいっても退職金があるではないか?」と思うかもしれません。しかし、退職金はリタイア後も長く続く生活のための大切な老後資金です。
片方が定年退職になったからといって、その直後から退職金を月々の生活のために取り崩していては、夫婦2人ともがリタイア生活に入ってからの老後のお金が心もとなくなってしまいます。こうした片方が先に定年に入る場合、年齢差が開いていればいるほど、入ってくるお金の波をしっかり把握しておくようにしましょう。
また、年齢が近いカップルは、一気に2つの収入がボリュームダウンすることになりますから、現役時代からの落差が大きくなります。あらかじめ、入ってくるお金のボリュームに合わせて、生活費のダウンサイジングを図るなど、波を乗りきる心構えを早いうちからしておくことが大切です。
福島 えみ子
マネーディアセオリー株式会社 代表取締役
江尻 尚平
スマートアイデア株式会社 代表取締役