副業の推進、公的年金への不安などにより、不動産投資を行う会社員、いわゆる「サラリーマン大家」が増加しています。しかし知識が不十分のまま不動産投資に乗り出してしまい、きちんとメリットを享受できている人は少ないのが現状です。今回は「固定資産税の誤課税」の問題について、サラリーマンの節税相談で定評のあるトランス税理士法人の中山慎吾税理士が解説します。
恐ろしい…埼玉県新座市在住60代夫婦「固定資産税誤課税」で家を失う ※画像はイメージです/PIXTA

「固定資産税の誤課税」が相次ぐ3つの理由

東京都は、都内の冷凍倉庫への固定資産税課税にあたり、冷凍倉庫ではなく一般倉庫として評価。所有会社は20年以上にわたり過大な固定資産税を払い続けました。平成18年調査で一般倉庫ではなく冷凍倉庫と判明した時点で、都は5年分の過徴収税額を還付しましたが、会社側は納得せず国家賠償法に基づき提訴。都は、過去20年分にあたる2億6,100万円と、2億6,500万円の損害賠償を支払いました。そのうち、遅延損害金が1億300万円。裁判費用が570万円。

 

なぜ誤課税が多いかということになりますが、いくつかの原因があげられます。

 

・実地調査が行われていない

地方税法第408条には「固定資産は毎年少なくとも1回は、実地調査しなければならない」という規定があります。賦課課税で市区町村の評価に対する信頼性を高めるために必要な規定ですが、市区町村は単なる訓示規定として毎年の実地調査はほとんど行っていません。

 

・担当者が素人

東京都を例にあげると、都の職員は都税事務所に就職するのではなく都に就職します。職場のローテーションで固定資産税の現場に配属され、2~3年で他の部署に移っていきます。固定資産の評価は複雑で難しくなっているのに、これではミスが多発するのもやむをえません。

 

・情報開示が意味不明

課税明細書には、「固定前年度課標等」「固定本則課税標準額」「都計前年度課標等」「都計本則課税標準」など専門用語がずらりと並び、素人が理解するにはなかなかハードルが高いです。毎年送られてくる納税通知書・課税明細書にどういう評価をしているかが、もっとわかりやすく説明されていれば、納税者ももっと早く気付いたかもしれません。