リフォームすらためらわれる老朽化住宅、建て替えしにくい狭小地でも、駅近に位置しているなら勝算は十分あります。最新の建築技術で床面積を最大限確保しつつ、上へと空間を求めることで、建物の広さ、快適さ、そして収益性に大きな可能性が広がります。優れた建築工法と賃貸運営のノウハウを併せ持つ、パナソニック ホームズの榎本克彦氏が解説します。

賃貸併用・店舗併用住宅で受けられる「税務メリット」

錦糸町のモデルハウスの3階、リビング部分。
錦糸町のモデルハウスの3階、リビング部分。

近年では東京のみならず、大阪や名古屋などの大都市圏でも、賃貸併用・店舗併用住宅を建設するケースが増えています。新規参入を図るハウスメーカーも出現するなど、状況は変化しているのです。その背景には、都市部の土地のポテンシャルを最大化するため、賃貸併用・店舗併用住宅を考えるオーナーの増加があるのかもしれません。

 

利便性の高い場所に自宅を構えて住まうだけでなく、そこに「賃貸」部分を設けて収益確保の手段を確保すれば、不動産そのものの価値も高まります。

 

なにより、賃貸部分の収益があればこそ、自宅の建築だけでは叶えられないラグジュアリーな外装・内装も実現できるのです。

 

また、賃貸併用・店舗併用住宅を建てることは、税制上のメリットにもつながります。賃貸部分の建設に事業用ローンを利用する一方、自宅部分は住宅ローンで資金調達し、住宅ローン控除(住宅ローン減税)※1による所得税の軽減を狙う方法もあります。

 

※1 住宅ローン控除とは、住宅ローンの年末残高に応じた控除額を原則として10年間にわたって所得税から控除できる(差し引ける)という制度です。賃貸部分の事業用ローンも家賃収入から返済額を差し引くことが認められているため、その分所得税負担が軽くなります。

 

賃貸併用・店舗併用住宅も自宅の一形態であるという法的な解釈から、固定資産税も軽減されます。たとえば、1戸当たり200m2までは固定資産税が6分の1、200m2を超える部分は3分の1になります※2

 

※2 店舗併用住宅は、土地が家屋の床面積の10倍までの場合、居住用割合が1/2以上で居住用部分が50~280m2であれば、全体を居住用として計算できます。居住用割合が1/4~1/2以下のときは、0.5が対象となります。なお、地上5階建て以上の建物は、居住用割合1/4~1/2の場合は0.5、1/2~3/4の場合は0.75、3/4以上の場合は全部が対象となります。

 

相続発生時も、一般住宅同様に相続税の軽減措置あり

相続発生の際も、一般の住宅と同様の相続税の軽減措置が受けられます。

 

土地の相続税評価額は、適正な時価(地価公示価格)の8割を目安とする「路線価」をもとに算定されますが、賃貸住宅を建てた土地は、借地権割合(30〜90%)に応じ、さらに路線価から減額されます。

 

錦糸町のモデルハウスの3階、ダイニング部分
錦糸町のモデルハウスの3階、ダイニング部分。

 

もし相続財産が1億円の現預金であれば、相続税評価額は額面通りの1億円ですが、不動産の場合は、地価公示価格で1億円の土地が8,000万円の相続税評価額となるうえ、賃貸住宅(借地権割合60%)を建てれば、6,560万円まで評価が下がります。そこに「小規模宅地等の特例※3」が適用されれば、さらに相続税評価額が低くなります。

 

※3 小規模宅地等の特例は、被相続人(財産を遺す人)または被相続人と生計を一にする親族が「居住・事業、貸付」のいずれかに用いていた土地に適用され、一定の面積を限度として相続税の評価額が50〜80%減額されます。自宅の敷地については、330m2に相当する部分までが80%の評価減となります。賃貸住宅の敷地については、200m2に相当する部分までが50%の評価減となります。

 

建築するなら…まず最初に決めておきたいこと

実際に賃貸併用・店舗併用住宅の建設を検討する際、どのようなステップを踏むのが望ましいのでしょうか。パナソニック ホームズ株式会社 営業推進部 特建営業センター所長の榎本克彦氏は解説します。

 

「まず、自宅をどのフロアに据えるのか考えるのがいいでしょう。最上階なら、一般的な2階建ての自宅とは比較にならない眺望が臨めますし、日当たりも良好です。もし庭がほしいなら、1階部分が適しています。自宅と賃貸部分は階層で区切るだけでなく、縦に分割したメゾネット方式とする方法もあります。この構造なら、一層の独立性が保てるほか、庭と高層階の両方のよさを楽しめます」

 

自宅部分のめどが立ったら、立地条件や容積率の規制などを踏まえつつ、何階建てにするかを検討します。当然ですが、より多くの賃貸・店舗フロアを設ければ、それだけ家賃収入も期待できます。

 

なお、最も重視すべきポイントはプライバシーです。最大限の配慮をするなら、オーナーの居住部分と賃貸部分の接点をなくす構造にしたほうがよく、ある程度で大丈夫と考えるなら、建物内を一部供用にして建設コストを下げる選択肢もあります。

 

最上階の書斎のバルコニー部分。
最上階の書斎のバルコニー部分。

 

自身もパナソニックホームズの賃貸併用住宅「ビューノ」のオーナーである、東京東支社  錦糸町営業所 所長の阿部亮介氏は説明します。

 

「自宅と賃貸住宅の入口の動線を分けることで、オーナーのプライバシーも保たれます。私の場合は、入居者の方と同じ屋根の下で暮らすということで、遮音性が最も気がかりでしたが、率直なお話、入居者様の生活音が気になったことは、まったくありません」

 

榎本氏が説明を補います。

 

「パナソニック ホームズの賃貸・店舗併用住宅の場合、賃貸運営はグループ内の専門の管理会社に一括で委託するため、オーナーが入居者と接触することはありません。もし入居者様にトラブルが発生した際は、管理会社が24時間対応します」

いまの満足は当然、将来の選択肢もゆとりをもって

賃貸併用住宅のデメリットとしてしばしば指摘されるのが、売却の難しさです。構造が特殊で需要が多いとはいえないことから、一般的に買い手がつきにくいとされています。しかし、柱や壁が少なく、室内の構造の変更が容易であるビューノの場合、一線を画しています。

 

賃貸部分のリビングダイニング。
賃貸部分のリビングダイニング。

 

「リノベーションを行う際も柱や壁の制約を受けにくく、大幅なコンバージョン(用途転換)が可能です。たとえば、子世代が暮らしていたフロアを賃貸住宅フロアに転用することも、賃貸部分を二世帯住宅の一部に転用することも容易です。各階でキッチンやバス、トイレの位置も自由に動かせますし、思い通りのレイアウトが可能です」

 

榎本氏は強調します。

 

将来的に売却を視野に入れる場合、買い手が見つかりやすい仕様変更をすませ、より有利な価格で売却するというプランも考えられます。先々の可能性や選択肢を見据えたうえで、どのような入居者やテナントを想定し、どれくらいの収益を見込むのかといった計画から、実際の賃貸経営の実務まで、パナソニック ホームズであれば、グループ企業一丸となった、ワンストップのサービスを提供できるのです。

 

 

監修:税理士法人 四谷会計事務所

★8月22日に開催のセミナーでは、税理士法人 四谷会計事務所の稲場広宣先生にもご登壇いただき、賃貸併用住宅にまつわる「税金」の解説をしていただきます。

 

 

パナソニック ホームズ株式会社
営業推進部 特建営業センター 所長
榎本 克彦

 

パナソニック ホームズ株式会社
東京東支社 錦糸町営業所 所長
阿部 亮介