買わないほうがいい金融商品その1…ゼロサムの商品
投資のなかには決してやってはいけないものもあることを覚えておいてほしい。
一つは投機だ。投機とは、勝者のリターンと敗者のリターンを足すと金額がゼロになる商品にお金を投資することだ。為替取引を例に、もう少し具体的に説明しよう。
いまが1ドル=100円だとして、君が誰かから1ドルを100円で買ったとしよう。この時点では、どちらも勝者でも敗者でもいない。それが1年後、1ドル=120円になったとする。1年前に1ドルを100円で買った君は、この時点で20円のもうけを上げて勝者に、一方、1年前に1ドルを100円で君に売った相手は、君と同額の20円を損して敗者となる。
これがゼロサムの取引だ[図表1]。
ゼロサムの商品は、もうかる確率が低いのでやめたほうがよい。なかでも次の三つの商品には気をつけてほしい。
● FX(外国為替証拠金取引)
● デリバティブ(金融派生商品)
● 短期売買を目的としたすべての金融商品
聞きなれない言葉があるかもしれないけれど、こうした商品にお金を拠出した場合、そのお金は社会に価値(商品)を提供するためには使われない。単に、金融商品を売買しているにすぎないのだ。これらに君の大切なお金を出すのはやめよう。
一方、世界経済への投資はプラスサムだ。つまり、全員が勝者になれるのだ。いま君を含めた100人が、1人につき1万円を世界経済へ投資したとする。毎年5%のリターンだと、10年後は、100人全員の資産が、1万6289円(1万円×1.0510)になる。
全員が勝者になれる理由は、投じた資金が、社会により大きな価値(商品)を提供するために活用され、対価としての売り上げ・利益が増加して、それに連動して株価(投資信託価格)が上昇するからだ[図表2]。
ただ、世界経済への投資などプラスサムの商品であったとしても、短期的に取引するとすべてゼロサムになってしまう。株価と経済は長期的に見ると連動しているけれど、短期的には売買する人の思惑や心理で株価は動いている。
市場の状況にもよるけれど、市場が安定しているときは3ヵ月未満、不安定なときは1年未満を短期と捉えよう。こうした期間内で金融商品を売買してもうけようと思ってはいけない。君の大切なお金を、一か八かのギャンブルに使うことになるのだ。