マイホームの「購入」を検討すべき4つの条件
どうしてもマイホームを持ちたいと思うときもあるだろう。それに物件によっては購入したほうが毎月の支払うお金が減るときもある。ただ、どんな場合でも、40歳くらいになるまでは待ったほうがよい。なぜなら、住宅にも寿命があるからだ。
住宅の寿命は、今後の関連技術の進歩や住宅の構造、修繕管理の状況などで一概には言えないけれど、ある程度の修繕管理をしているのを前提に、60〜80年と言われている。保守的に60年とすると、君が100歳まで生きるとした場合、新築の住宅を35歳で購入したら、95歳のときに住宅の寿命がきてしまうのだ。
もしかしたら住宅の寿命はもっと長いかもしれないけれど、君の寿命はそれよりもっと長いかもしれない。生きているうちに住宅の寿命がきて建て替えなくてはいけなくなったら、そのときの費用は、もう一度物件を買い直すくらいの金額になることもあるのだ。おそらく君の人生で最大の買い物になる住宅購入において、ギャンブルはしないようにしよう。
これらも踏まえ、将来的には次の四つが当てはまるようになってから購入を検討すべきだ。
・夫婦のみでずっと生活していくなどのライフステージが決まる
・君の余命年数より長い余命年数の物件が見つかる
・割安な物件が見つかる
この四つが満たされていれば、購入の最大のデメリットである住み替えのしにくさが回避できて、賃貸を継続するより経済的なメリットが得られる。割安な物件のおおまかな目安は、購入価格が毎月の家賃の200倍以内に収まっているかだ。200倍以内なら、生涯の住宅費は賃貸を継続するよりも支出は少なく済む。基準になる家賃については、近隣の類似物件の相場を不動産サイトで調べればすぐにわかる。
購入する場合は、たとえ手持ちのお金があったとしてもそれは使わず、世界経済への投資のメリットを享受するために、住宅ローンを固定金利で組もう。
たとえば固定金利で年利1.4%を支払わなくてはいけないとしても、世界経済へ投資をすれば、やや保守的に想定しても金利より高い5%の年間リターンを得られる。これを考慮すると、ローンが終了する35年後には、いまの手持ち金は5.5倍になるのだ(1〈手持ち金〉×1.0535〈年間リターン運用年数〉)。
他方で手持ち金を頭金に回した場合は、ローンの返済額が手持ち金の約1.3倍少なくなる(固定金利1.4%、元利均等)。つまり、手持ち金を投資に回せば差分の4.2倍、得をするのだ。「手持ち金を使わないと毎月の返済額が増えてしまう」と心配する必要もない。いまの家賃の200倍以内に収まっている割安物件なら、毎月の返済額は修繕積立費や固定資産税などを加えたとしても、家賃を上回る額にはならない。手持ち金は投資に回すべきなのだ。
「固定金利」と「変動金利」…どちらを選ぶべきか?
固定金利と変動金利には、それぞれメリットとデメリットがあるけれど、金銭的には金利の上昇局面では固定、下降局面では変動が得になる。
金利はさまざまな要因で変動するけれど、もっとも影響するのは「経済」と「お金の信用」の二つだ。経済が成長していく過程では、企業や家計が投資や消費により多くのお金を必要とするので、限りのあるお金の金利は上昇する。経済が後退していく過程では投資や消費が減っていくので、多くのお金は必要でなくなり、金利は低下する。
二つめのお金の信用については、お金の発行元である政府の財政状態(収入と支出のバランス)が大きく関係する。
たとえば、収入に対して支出が大幅に増えて政府の財政が不安定になると、政府の信用は低下する。すると、信用が低下した政府が発行している国債(政府の借金)の金利が上昇し、それに連動して住宅ローン金利を含むすべての金利が上昇するのだ(金融機関が信用の高くない人にお金を貸すときには、リスクの見返りとして、より高い金利を要求するのと同じ原理だ)。
世界経済が長期的に成長していくのは間違いないけれど、人口減少を迎えた日本経済がどうなっていくのかはわからない。政府や政府が発行する日本円の信用がどうなっていくのかを見極めるのも、とても難しい。金銭的にどちらが得かは結果論でしかないので、精神的に安定できる固定金利を選択しよう。わからないことにギャンブルをするのはよくない。
君が住宅の購入を検討するとき、変動金利の低さを謳い文句にした広告に触れたり、住宅販売をするスタッフに変動金利をすすめられたりするかもしれないけれど、耳を傾けないようにしよう。
秋山 哲
ユニバーサル・スタジオ・ジャパン
マーケティングディレクター