プロフェッショナル投資家になることで広がる運用の幅
前連載(こちらを参照)では、日本では販売されていないグローバルスタンダードなファンドの魅力を説明してきましたが、ポートフォリオの中に組み入れる商品は、ファンドだけではありません。ここからは、債券と保険商品を活用した運用方法を紹介していきます。さらに資産運用において「運用のプロ宣言」をすることで、より運用の幅が拡大します。こうしたワンランク上の投資ノウハウについても確認しておきましょう。
まずは、債券についてです。香港は、債券の販売数も銘柄数も世界トップクラスです。日本でも債券は日本国内外のものが数多く販売されていますが、「日本仕様」にしなければならないため、発行体は日本での販売を躊躇してしまいます。
みずほ銀行や三井住友銀行といった日本のメガバンクでも、日本では販売しないような利回りの高い債券を海外で販売することがよくありますが、これは日本の発行体は知名度が低いためです。香港などでは外貨建ての債券を売買するプロが多いため、流動性が高いという事情はあるでしょう。香港やシンガポールのような、国際金融センターであると同時にタックスヘイブンに近い環境の国や地域で販売することが多く、こうした地域にある銀行に口座を開設すれば、日本よりも高い利回りで、日本のメガバンクの債券に投資することもできるのです。
下記図表は、日本ウエルス銀行(NWB)が現在(2018年5月)取り扱っている債券の全銘柄です。周知のように、債券の取り扱い銘柄は日々刻々と変化します。日本では見たこともない有利な銘柄が数多く販売されていることが分かります。いくつか、ピックアップしてみましょう(英語版のウェブサイトで債券リストが掲載されています)。
資産運用の「コア」になる債券の具体例
・SOFTBANK GROUP CORP(ソフトバンク)
日本を代表するIT通信業者である「ソフトバンク」の米ドル建て債券です。表面利率(Coupon Rate)は4.75%、償還日は2024年9月19日です。格付けは、S&Pが「BB+」、ムーディーズが「Ba1」と、投機的格付けですが、日本では人気のある企業であり、アリババやYahoo!の大株主でもあります。債券リストの参考価格を基に満期まで保有した場合の最終利回り(Yield to Maturity)は、4.609%になります。
ちなみに、同時期に日本で販売された、円建ての「第51回ソフトバンク無担保社債(2017年3月16日発行、2024年3月15日償還)」の表面利率は2.03%となっています。米ドルで販売されているものと比較すると、2.72%も表面利率が低いことになります。
・モルガン・スタンレー(MORGAN STANLEY)
米国の投資銀行「モルガンスタンレー」の米ドル建て社債です。償還日は2023年2月25日、表面利率は3.75%。最終利回りは3.031%です。格付けは、ムーディーズが「A3」、フィッチが「A」になります。
米国の大手投資銀行として知られていますが、リーマンショック後は他の投資銀行に先駆けて富裕層向けビジネスに注力し、コモディティ分野の事業から一部撤退する傍ら、債券トレーディングの体制を強化するなど、選択と集中を進めました。
それらの施策が実を結んだのか、最近では常にライバルとして比較されるゴールドマン・サックスの時価総額を10年ぶりに追い抜いています。
・富通保険(FTL CAPITAL LTD)
中国系保険会社「FT Life」の米ドル建て社債です。償還日は2023年4月25日、表面利率は4.125%。最終利回りは3.888%です。格付けは、ムーディーズが「Baa2」、フィッチが「BBB+」になります。
元々はイギリス発祥の保険会社であるAgeas(エイジアス)のアジア拠点であったが、2016年に北京を本拠とするJDグループが買収し、FT Lifeとして生まれ変わりました。香港地場の大手保険会社の一角を占めています。
・サウジアラビア国債(SAUDI INTERNATIONAL BOND)
産油国として名を馳せるサウジアラビアの米ドル建て国債です。最近では次期王位継承者と目されるムハンマド・ビン・サルマン皇太子による同国有力者の大量拘束や、周辺諸国との合同でのカタール周辺の封鎖等の政治スキャンダルが目立ちます。
償還日は2026年10月26日、表面利率は3.25%。単価が96.029の参考価格のため、最終利回りは表面金利を上回る3.798%です。格付けは、ムーディーズが「A1」、フィッチが「A+」になります。
派手な粛清の一方、女性の運転解禁や35年ぶりの映画館解禁、ソフトバンク・ビジョン・ファンドへの巨額の出資等、原油依存脱却のために同国としてはかつてない規模の改革を次々と打ち出しています。2019年には新規上場の銘柄としては史上最大規模とも言われる国営石油会社のサウジ・アラムコのIPOが実現するとの見方もあり、その動向に注目が集まっています。
・Bank of China Aviation
1993年にシンガポールで設立され、その後2006年にバンク・オブ・チャイナが100%子会社化した航空機リースの大手「Bank of China Aviation」のオフショア人民元建て社債です。償還日は2020年10月17日、表面利率は4.50%。最終利回りは4.040%です。格付けは、フィッチが「A-」になります。
新規の航空機をメーカーから調達し、それらを世界各地の航空会社にリース、もしくは売却することを生業としています。
会社発表によると、創業から24年間、一度も赤字を出したことがない優良企業であり、保有する航空機も平均的な運航年数が4年未満と比較的若い機体を主軸としています。
ここで紹介する債券はオフショア人民元建となっており、A-の格付けで満期までの残存期間が3年未満の割には最終利回りは4%台と、比較的高めです。
直近は、米国が世界に先駆けて政策金利の引き上げを実施しており、超低金利時代から徐々に金利が上がってきました。それに伴い、NWBで取り扱っている各国の米ドル建て国債や、社債も最終利回りが高まっています。
日本は未だに超低金利で世界から取り残されている中で、3~5%の利回りが得られるこれらの債券は、資産運用のコアに据えるのに適切な商品かもしれません。ポートフォリオを組む際には、債券の位置づけが重要になります。
また、NWBでは、米ドル建て以外にも、英ポンド、ユーロ、豪ドル、オフショア人民元、NZドルなど様々な通貨を取り扱っており、取り扱いリストにない債券以外にも、たとえばインドのA社、カナダのB社の社債を探してくれ、といった要望があれば、世界の市場に出回っているありとあらゆる債券を仕入れることができるようです。