近年の日本では人口減少が進み、賃貸オーナーからは「先行きが不安」の声が挙がり始めてきた。そこで注目したいのが、シニア層を対象とした賃貸住宅経営である。本連載では、シニア向けの賃貸住宅経営の可能性について、すでに15年以上前から元気なシニア向けに特化した賃貸住宅のパイオニア、旭化成ホームズ株式会社シニア事業推進部営業推進室長の依田悦夫氏と営業開発室長の岩並健太郎氏に話を伺う。第4回は、同社が手がけるシニア向け賃貸住宅の防災力について焦点を当てていく。

目指すは損傷に強く、修繕期間の短い建物

旭化成ホームズが展開するシニア向け賃貸住宅『ヘーベルVillage』は、超高齢社会のなかで安定的な賃貸経営を行いたいオーナーにとって、非常に魅力的な商品である。しかし近年は地震や大雨など、建物へ甚大な被害を与える自然災害が続出している。賃貸オーナーであれば、長きに渡り戸建て・賃貸住宅の施工を行ってきた旭化成ホームズの防災に対する考えや取組みは気になるところだ。

 

 

旭化成ホームズ株式会社シニア事業推進部営業推進課長 岩並健太郎氏
旭化成ホームズ株式会社シニア事業推進部営業開発室長 岩並健太郎氏

岩並氏「総合化学メーカーだった旭化成工業が住宅事業に進出したのは、今から50年近く前の1972年です。当時の日本は高度成長期で、建物を壊しては建て替える『スクラップ&ビルド』が当たり前でした。私たちはこうした既成概念に疑問を持ち『ヨーロッパの石造りの家のように、何百年と建ち続ける家を作ろう』という理想を掲げました。そうした建造物は、やがて国の文化的な財産ともなっていくという考え方が、私たちの家造りのベースにありました」

 

旭化成ホームズの建てる建造物の高い防災力を語る際、まず筆頭に挙がるのは『ヘーベルハウス』という商品名の由来ともなった軽量気泡コンクリート・へーベルである。

 

岩並氏「旭化成がドイツのヘーベル社と技術提携して日本に導入し、現在も変わりなく採用しているのが、軽量気泡コンクリート・へーベルです。軽量、高強度、高断熱性、高調湿、そして高遮音など、多くの優れた複合性能を持つ素材ですが、特に防災面で注目してほしいのが、高い耐火性。水に浮くほど軽く、内部に気泡を含有しているコンクリートのため、なかなか燃えません。『ヘーベルVillage』では、外壁や床、天井にヘーベルを採用しています」

 

旭化成ホームズ株式会社シニア事業推進部営業推進室長 依田悦夫氏
旭化成ホームズ株式会社シニア事業推進部営業推進室長 依田悦夫氏

大地震が発生した後、建物により甚大な被害をもたらすのは火災と延焼である。「特に住宅の密集する都市部においては、時間帯や気象条件により焼失の可能性が高まってしまう」と依田氏はいう。

 

依田氏「へーベルを使用した外壁は、耐火実験により『連続1時間の加熱でも損傷なし』という結果が出ています。また私たちは損傷を抑えるだけでなく『その後の修繕期間ができるだけ短い建物づくり』を目指しています。もちろん一時避難の可能性はありますが、『ヘーベルVillage』であれば短期間の修繕で、その後も住み続けることが可能なため、オーナーは賃貸経営を継続することができるのです」

 

 

 

システムラーメン構造をより強固にする独自システム

賃貸住宅を経営するオーナーは、二次災害の火災だけでなく大地震そのものについても留意しなくてはならない。

 

『ヘーベルVillage』を含む旭化成ホームズの建造物は、30年間大規模修繕が不要な「ロングライフ性能」、ならびに初期保証30年間(最長60年間保証)を備えている。一般住宅に比べ、階層が高くなる賃貸住宅において高い耐震性を実現するのは、重鉄・システムラーメン構造だ。

 

依田氏「ラーメン構造とは、柱と梁からできた構造体。ふたつを一体化させるように接合するのが特徴です。私たちは分厚い鉄骨部材を採用したうえで工程をシステム化し、現場で発生しがちな誤差を未然に防いでいます。また重要な接合においては、強度、精度、そして品質を高レベルで達成する独自システムを採用。その立体格子構造が地震エネルギーを適切に吸収します」

 

岩並氏「さらにシステムラーメン構造にオイルダンバー制震システム『サイレス』をプラスしています。オイルダンバーには振動を和らげる機能が認められており、高層ビルの制震装置としても採用されているほどです」

 

耐火、耐震、制震を備えた基本構造
耐火、耐震、制震を備えた基本構造

 

このように高い耐火・耐震性を保つ構造が、災害から建物と入居者を守るため大いに役立ってくれる。また数十年の長きに渡り、大規模修繕を必要としないロングライフ性能は、賃貸経営におけるランニングコストの削減に貢献してくれるだろう。

 

次回は『ヘーベルVillage』の収益について、深掘りしていく。

 

 

取材・文/西本不律 撮影/杉能信介(人物)