加速度的に進行する、日本の超高齢化
2007年、日本は、65歳以上の人口割合が全体の21%以上を占める超高齢社会に突入した。その後も高齢者人口の増加のスピードは加速しており、2016年には27%台、そして2019年には28%にまで上昇している。5年後の2025年には30%の大台に乗り、20年後の2040年には、首都・東京でも「4人に1人が65歳以上」になるという。このような流れのなかで認識を深めていくべきなのは「高齢者の生活そのもの」についてである。
現役世代は老いに対して「高齢になると足腰が弱り、歩行も困難になる……」、「もし孤独死してしまったら……」などと心配するだろう。しかし2017年度の厚生労働省『介護保険事業状況報告』によると、65歳以上の高齢者のなかで要介護認定を受けている人は、全体の18.0%程度に過ぎない。それ以外の高齢者は程度の差こそあれ、自身の力で生活を営む気力や体力を維持し続けているといえるだろう。
こうした高齢者は「アクティブシニア」と呼ばれている。年々数が増加していく彼らの生活を向上させ、イキイキとした毎日を送ってもらうために何が必要なのかを考えることは、今後の日本社会のなかでも重要な課題といえるのではないだろうか。
「元気なシニア向け安心賃貸住宅」の高い成長率
超高齢社会の到来をいち早く察知し、元気なシニア向け賃貸住宅『へーベルVillage』を展開しているのは、『ヘーベルハウス』で高い知名度を獲得している旭化成ホームズだ。
岩並氏「私たちは1998年に『ロングライフ住宅の実現』を宣言しました。耐震・耐火性はもちろん、家族構成やライフスタイルの変化へも柔軟に対応可能なアフターサービス体制を整備し、60年間建て替えなしで住み続けられる戸建て住宅を提供してきました。また戸建て住宅とは別に、大規模な土地活用にまで対応できる賃貸住宅『ヘーベルメゾン』事業も展開しています。そのなかで蓄積されてきたノウハウをもとに、シニア世代の入居者に特化した賃貸住宅のかたちを考えるようになりました」
下記は、元気なシニア向け賃貸住宅『へーベルVillage』の管理棟数・戸数累計推移を表したもの。2005年から10年ほどは年間数棟ペースで推移していたが、近年、急激な増加を見せ、2020年には96棟にも達しようとしている。驚異の成長率から、同社の展開と社会的ニーズの合致が見事に証明されたといえるだろう。
マイホームの先にある人生も、ワンストップでサポート
依田氏「超高齢社会の到来に向け、何かを始めなければならないと考えたのは私たちだけではありませんでしたが、他社は“サ高住”の方向へ舵を切りました。大手では独壇場だったからこそ、しっかりとノウハウを蓄積することができたのだと思います」
サ高住とは、いわゆる「サービス付き高齢者向け住宅」を指す。大きく一般型と介護型があるが、主流となっているのは後者で、スタッフによる入居者サービス(安否確認・生活相談など)から食事までが提供される。近年は土地活用法のひとつとしてもよく候補に挙がるが、戸数50戸以上を確保できる大規模な敷地が必要など、懸念事項が多い。
もちろん旭化成ホームズもサ高住に無関心なわけではなく、2019年には『Village(ヴィラージュ)リーシュ』というサ高住事業をすでに展開済みだ。しかし一般的な戸建て・賃貸住宅とサ高住の間に、あえて「元気なシニア向け賃貸住宅」を設けたところに、旭化成ホームズの経営方針が見えてくる。
依田氏「主流の介護型サ高住で心配されるのは、まだ元気に自活できるアクティブシニアに対し、スタッフのサービスが過剰になってしまうこと。自分でできることは自分でやる、これが健康寿命を伸ばす何よりの秘訣です。『へーベルVillage』は、アクティブシニアが生活しやすい空間設計を重視していますが、基本的には入居者が悠々自適に過ごすための賃貸住宅。子どもたちが独立し、手入れが重荷となってきた広い持ち家から、より生活しやすい環境へ移動するイメージです。そこに『万が一の心配』に対するサポートをプラスしています」
さらに「建て替えなしで住み続けられる我が家での暮らし、そしてその先にある人生まで守っていきたい――。それが私たちの考え方です」と岩並氏は続ける。
岩並氏「『ヘーベルハウス』の戸建て住宅で暮らしていた方が、人生の節目を迎え『へーベルVillage』へと転居し、その後にサ高住である『Villageリーシュ』へ入居するという流れを用意するのが、私たちの目標です」
自社の哲学という明確な筋を通しながら時流に沿う、元気なシニア向け賃貸住宅を軌道に乗せた旭化成ホームズ。その商品『へーベルVillage』への興味は尽きない。しかし高齢者に特化した賃貸住宅は、まだ一般的とはいえない状況だ。次回以降、高齢者向け賃貸住宅経営にどのような不安点があるのか、また旭化成ホームズがどのような対策を講じているのかについて、両氏の話を伺っていく。