すでに2020年4月1日から施行されている改正民法。120年ぶりの改正ということで話題になりましたが、不動産投資家には重要な注意点があります。それは「借地借家法」という法律の制限を受ける賃貸借契約についてです。本記事では、改正民法における変更点とともに、賃貸経営で知っておくべき基本を解説します。※本連載は、将来お金に困ることがないように、若いうちからできるライフプランニングに役立つ情報を紹介する「ライフプランnavi」の記事を抜粋、一部改変したものです。

借地件の契約は、特別法の「借地借家法」が優先される

マンションなどに入居者を住まわせる場合、賃貸借契約を締結します。賃貸借契約は一般的には民法の規定が適用されるのですが、住宅やマンションを貸し借りする場合の賃貸借契約(借家契約ともいいます)には借地借家法が適用されます。

 

どういうことかというと、法律には、一般的に通用するような規定を設ける「一般法」と、その一般法が対象とする分野内で更に狭い範囲に適用される「特別法」があるからです。一般法と特別法では、特別法が優先されます。民法は一般法であり、借地借家法は、借地契約と借家契約(建物の賃貸借契約)について適用される特別法です。

 

つまり、賃貸借契約については、原則的には民法の規定が適用されますが、借地借家法に書かれていることは、借地借家法の制限を受けるということになります。

 

たとえば、改正前の民法では賃借契約の存続期間は最長20年とされていますが、借地借家法での借地権は最長30年とされ、建物賃貸借の存続期間は民法の規定を適用しないとしています。民法と借地借家法とで異なる規定があり、借地件の契約に関しては、特別法である借地借家法が優先されるのです。

借家に関する「3つの規定」とは?

借地借家法は「借地」と「借家」について規定していますが、不動産投資で関わるのは「借家」がほとんどですので、ここでは「借家」についてのみ解説していきます。

 

借家に関する規定は次の3つについて定めています。

 

1. 契約期間や契約更新に関すること

2. 賃借人の権利に関すること

3. 定期建物賃貸借について

 

1番目の「契約期間や契約更新」については、すべて強行規定です。強行規定とは、たとえ当事者間での合意があったとしても、その合意は無効になり、法の条文が適用される規定のことです。たとえば、賃貸借契約書で、借地借家法の各条文と異なる取決めをしても、それらは無効になるということです。

 

2番目の「賃借人の権利」に関する部分では、転借人も含む賃借権に関する規定が強行規定です。

 

3番目の「定期建物賃借権」については下記の項目でまとめて解説します。

 

2020年の民法改正により借地借家法にも影響を与える規定があります。

[図表]改正民法が借地借家法に影響を与える範囲


上の表は、改正民法が借地借家法に影響を与える範囲を記載したものですが、これまでと同じように借地借家法で規定されていることは民法より優先され、借地借家法に規定がないものは民法にしたがうという関係は変わりません。

入居者の権利と大家の義務

民法が制定された明治時代では、「絶対的所有権」があり、賃貸人と賃借人との力関係において、賃貸人(オーナー)に有利な法整備となっていました。この力関係の是正を目的とした「建物保護ニ関スル法律」並びに、大正時代に制定された「借地法」と「借家法」を統合した法律が「借地借家法」です。

 

そのため、借地借家法は、基本的に賃貸人(入居者)の権利保護を前提として作られた法律です。賃貸人(オーナー)と賃貸人(入居者)の関係において、一般的には入居者のほうが立場が弱いものです。生活の拠点となる家を借りる契約において、いきなり「明日出て行ってください」と言われ貸借人が困るという事態を防ぐために考えられました。

 

裏返すと、賃貸人(オーナー)には賃借人の権利を守る義務が生じます。それらは賃貸借契約書に反映されます。ここでは国土交通省が公表している「賃貸住宅標準契約書」にもとづき、その権利と義務について見ていくことにしましょう。

 

 ●契約更新について 

 

契約更新については「賃貸住宅標準契約書」第2条で「協議により更新できる」とされています。一般的には契約期間を2年間とし、自動更新または合意更新としている契約書が多いですが、賃貸人(オーナー)からの更新拒絶や契約解除は大変むずかしくなっています。

 

借地借家法第26条第1項には次の規定があります。

 

建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間の満了の一年前から六月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、その期間は、定めがないものとする。

 

ここでは賃貸人(オーナー)が契約の更新をしない場合には、6ヵ月前までに通知をしなければ契約は更新されることを規定しています。

 

次に第27条第1項には次の規定があります。

 

建物の賃貸人が賃貸借の解約の申入れをした場合においては、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から六月を経過することによって終了する。

 

賃貸人が契約解除する場合は、解除申入れから6ヵ月経過すると解除できるとされているのですが、第28条には、「正当な事由がなければ賃貸人からの更新拒絶や契約解除」という旨が書かれています。

 

では「正当な事由」とはなにかというと、「賃貸住宅標準契約書」第10条で明示されていますが、賃料の滞納や使用目的違反など限られた理由です。簡単にいうと、よほど特別な事業がない限り、オーナー側からの契約解除や更新拒絶はできない、ということです。

 

 ●借家権の効力について 

 

賃借権は登記されていなくとも、鍵を受取るなど引渡しを受けていれば、第三者に対抗できる権利です。そのため、賃借人(入居者)はオーナーチェンジやサブリースなどによって、所有者または賃貸人が変更されてもこれまでの借家権は引きつづき保護されます。つまり、「オーナーが変わって、事情が変わったから出ていってくれ」とはいえないということです。

 

このように、借家権は入居者にとって強い権利ですが、家賃の見直しについては入居者にも賃貸人にも平等に権利を認めています。周辺の相場や著しい物価の変動などが起こり、家賃が不合理な設定になった場合には、賃貸人と賃借人のどちらからも変更の請求が可能になっています。これは、「賃貸住宅標準契約書」第4条に賃料改定に関する条項が記載されています。

 

第8条では「禁止事項」が記載されており、賃借人は賃借物件内で改築や模様替えなどが禁止されています。一方借地借家法第33条では、賃貸人の同意を得た場合に限り、物件内でおこなった造作などの買取り請求権を認めているので注意が必要です。

 

借家権は相続されるので、賃借人が亡くなった場合その権利と義務は相続人に承継されます。物件が居住用物件の場合、相続人がいなくても内縁関係の同居者には同様の権利があることも覚えておきましょう。もともと契約をしていた人が亡くなったとき、いわゆる同棲相手が住んでいたら、その同棲相手に「出ていってくれ」とはいえないということです。

定期建物賃貸借と普通建物賃貸借の違い

借地借家法は基本的に賃借人の権利を強く保護する法律ですが、それだけだと貸借人には不都合です。そこで賃貸人の権利を大きく認めているのが「定期建物賃貸借」です。

 

定期建物賃貸借と普通建物賃貸借の大きな違いは、名前のとおり「定期」がつくことです。一般の賃貸借契約は期限を定めても、期限が来ると更新することになっていますが、定期契約は期限が来ると契約は終了する方式です。この期限は1年以内であっても有効とされます。

 

契約の方法および終了期には次にあげる手続きをおこなうことが必要です。

 

1. 契約は公正証書などの書面でおこない、更新しない旨を明記する

 

2. 契約期間が定期であり更新がない旨の説明は、契約書および重要事項説明書とは別に、賃貸人から賃借人へ書面にて説明する必要がある

 

3. 契約満了の1年前から6ヵ月前の期間に、賃貸人は賃借人に期間満了する旨を通知する

 

以上の要件を満たすことによって、賃貸人は契約期限の到来により賃貸借契約を終了させることができるのです。

 

なお定期契約をしていても事情により契約の延長を望む場合は、契約終了を迎えたのちに再契約をすることが可能です。

まとめ

2020年4月に施行される改正民法との関連をふまえつつ、借地借家法の要点を解説しました。賃貸借契約においては賃借人の権利保護がより強くなっています。不動産投資家にとって所有物件を賃貸事業に活用することは、入居者に対する義務を負うことでもあります。

 

よく「オーナーなのだから、建物は自由に使えるだろう」と勘違いをする人もいますが、賃貸借契約を結んでしまうと不自由な面も増えます。だからこそ、法律をしっかり理解して適正な契約を結び、投資物件を有効活用していきましょう。

 

 

 

※本連載は、『ライフプランnavi』の記事を抜粋、一部改変したものです。