所有マンションの売却…必要となる「手続き」と「税金」

所有する投資用マンションを売却する場合、どんな点に注意が必要なのでしょうか? 投資物件の売却は「投資の総決算」であり、失敗するとトータルの運用成績が悪くなってしまいます。本記事では、投資用マンション売却時の注意点と、実際の手続きや税金等について解説します。※本連載は、将来お金に困ることがないように、若いうちからできるライフプランニングに役立つ情報を紹介する「ライフプランnavi」の記事を抜粋、一部改変したものです。

マンションの売却にはどんな手順が必要?

1. 概算査定額を調べる

 

マンションの売却を検討するにあたり、まずはどのくらいの価格で売れそうか、「概算査定額」を調べます。「一括査定サイト」を使えば手軽です。該当のサイトにマンションの概要を入力すると、複数の不動産仲介会社が概算査定して額を提示してくれます。

 

概算査定額とは、あくまでも「この額で売ることができそうな額」であり、「売値」ではありませんが、不動産のプロが算出した額であるため、売値に近い額になるはずです。

 

また、一括査定サイトでの調査だけでなく、そのマンションを購入した不動産会社など、付き合いのある不動産業者があるなら、その会社にも聞いてみるといいでしょう。

 

2. 売却スケジュールを立てる

 

概算査定額を調べ、売却を決めたら、次は売却スケジュールを立てます。概算査定をした不動産会社によっては、売却期間の目途も示してくれます。また、購入時のローンがまだ残っていれば、概算査定額とローン残債を比較します。ローン残債のほうが概算査定額より多ければ、ローン完済のための資金計画を立てる必要があります。

 

3. 売却希望価格を決める

 

それらをクリアすれば、売却希望価格を決めることができます。売却希望価格は、購入希望者に提示する金額です。売却希望価格はオーナーが自由に決めることができます。ただし、売却価格と売却までの時間には、一般的に、

 

●概算査定額より高く設定すると、売却に時間がかかる可能性がある

●概算査定額より低く設定すると、収益は減るが、短期で売却できる可能性がある

 

という関係があります。

お金が必要な時期が決まっているなら…

できれば高く売りたいのは当然のことですが、お金が必要な時期が決まっているのなら、ある程度金額を下げる必要もあります。最適なバランスについては、仲介を依頼する不動産会社に相談するとよいでしょう。

 

なお、不動産会社との契約の際には、次のような書類が必要になるので、売却活動に入る前に用意しておきます。

 

●権利証

●間取り図

●建物の測量図

● 登記事項証明書

●マンション管理規則

不動産会社との契約は「買取」もしくは「仲介」

マンションの売却は、オーナーが自分で買い手を探して不動産売買契約を結ぶこともできます。が、不動産会社を介さない「純粋な個人売買」はリスクや手間も大きくなります。副業での不動産投資の場合は、通常、不動産会社自身に買い取ってもらうか、売却の仲介を依頼するかのいずれかが無難です。

 

買取と売却仲介には、それぞれ次のような特徴があります。

 

<買取の特徴>

●不動産会社がそのマンションを買い取る

●不動産売買契約は、オーナーと不動産会社の間で締結する

●売却価格は売却仲介より安くなる可能性が高い

●価格に満足できるのであれば、すぐに売却できる

 

<売却仲介の特徴>

●不動産会社は買主を探すだけで、不動産売買契約はオーナーと買主の間で締結する

●不動産会社とオーナーは「媒介契約」という契約を結ぶ

●不動産会社に支払う仲介手数料を考慮しても、買取より高く売却できる可能性が高い

●一般的には買取よりも時間がかかる。買主がみつからずに売却までの期間が長期化することもある

 

よく用いられるのは、最初に売却仲介での売却活動を行ってみて、しばらく経っても売買が成立しなければ買取に切り替える、という方法です。ただし、短期間で売却したいオーナーは、最初から買取を選択することもあります。

仲介をしてもらう「媒介契約」には3種類ある

仲介をしてもらう「媒介契約」には、「一般媒介契約」「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」の3種類があります。

 

「一般媒介契約」の特徴

●複数の不動産会社に売却仲介を依頼できる

●オーナーが自分で買主を見つけたら、直接買主と不動産売買契約を結ぶことができる(不動産会社を介さなくてもよいので、仲介手数料が発生しない)

●不動産会社からオーナーへの業務報告義務はない

●不動産会社の担当者のモチベーションが高まらないというデメリットがある

 

「専任媒介契約」の特徴

●1社の不動産会社にしか売却仲介を依頼できない

●オーナーが自分で買主を見つけた場合、直接買主と不動産売買契約を結ぶことができる(不動産会社を介さなくてもよい、仲介手数料が発生しない)

●不動産会社からオーナーへの業務報告義務がある(2週間に1回以上)

●不動産会社の担当者のモチベーションが高まる

 

「専属専任媒介契約」の特徴

●1社の不動産会社にしか売却仲介を依頼できない

●オーナーが自分で買主を見つけた場合でも、不動産会社を介さなければならない(仲介手数料が発生する)

●不動産会社からオーナーへの業務報告義務がある(1週間に1回以上)

●不動産会社の担当者のモチベーションがもっとも高まる

 

たとえば、自分の知り合いからの紹介で買ってくれる人が見つかるかもしれない、といった場合は、「専属専任媒介契約」は避けなければなりません。一方、そういった可能性がゼロで、完全に不動産会社に任せるというのなら、「専属専任媒介契約」としたほうがよいでしょう。

不動産売買契約の手続きと費用

買主が見つかったら、不動産売買契約を締結することになります。

 

不動産売買契約を結ぶとき、オーナーは買主から手付金を受領することができます。手付金の額には決まりはありませんが、売却価格の10%が目安です。マンションの引き渡しと、買主の代金の支払いは、後日同時に行いますが、このときに買主が支払う代金は、手付金の額を差し引いた額になります。

 

ローンの残債がある場合、オーナーは売却前にローンを完済して、抵当権を抹消しなければなりません。抵当権が設定されたままでは売却できません。もし、売却で得た代金でローンの残債を完済したい場合は、つなぎの資金が必要になります。その点については、金融機関と事前に打ち合わせておく必要があります。抵当権の抹消手続きは、司法書士に依頼するのが一般的です。

 

マンションの引き渡し、売却代金の入金後が、不動産会社に売却仲介手数料を支払います。売却仲介手数料は法律で上限が決まっていて、その額は「売却価格×3%+6万円+消費税」です。

 

また、仲介手数料以外に、不動産売買契約書の作成には、印紙税が課せられます。印紙税は、印紙を購入して契約書に貼り付け、それを消印(割り印)することで納付します。印紙税の額は契約額によって変わり、たとえば「1,000万円超~5,000万円以下」の場合、10,000円です。

入居者がいる場合の注意点

賃貸マンションは、入居者がいても売却できます。その際、入居者には「賃貸借契約継承の通知」または「賃貸人変更通知」(以下、通知)を行います。

 

入居者の事前承諾は必要ありません。通知は、オーナーが変わったことや、それに伴い家賃の振込先が変わることなどを記した文章を、旧オーナー(売った人)と新オーナー(買った人)の連名で作成し、入居者(賃借人)に送付するだけで終わります。

 

また、入居者がいる場合は、旧オーナーと新オーナーは、賃料や敷金の清算を行います。そして通知のなかで、敷金などが新賃貸人に継承されたことを知らせます。

所有マンションの売却時に課される「譲渡所得税」とは

マンションを売って売却益が出た場合は、譲渡所得税(所得税+住民税)が課されます。譲渡所得税は、「課税譲渡所得」がプラスになったときに発生します。課税譲渡所得は次の計算式で算出します。

 

課税譲渡所得 = 譲渡収入金額 -(取得費 + 譲渡費用)

 

譲渡収入金額:マンションの売却代金

取得費:マンションを購入代金や購入諸費用、リフォーム代などから、減価償却費を差し引いた額(親が買ったマンションなどで、取得費が不明の場合、概算取得費(譲渡収入金額の5%)を適用)

譲渡費用:売却仲介手数料などの売却活動にかかった費用

 

取得費は、マンションの購入額ではなく、購入額から減価償却費を差し引いた額になっている点に注意してください。減価償却費は毎年計上していくものなので、購入から年数が経てば経つほど、取得費は小さくなります。

 

譲渡所得税の額は、「課税譲渡所得×税率」で算出しますが、税率は、マンションの保有期間のちがいにより、「短期譲渡所得」の税率と「長期譲渡所得」の税率とにわかれます。短期譲渡所得とは、マンションの所有期間が5年以下(その年の1月1日現在で計算)の状態のことで、5年超は長期譲渡所得になります。

 

短期譲渡所得の税率は39.63%(=所得税30.63%+住民税9%。復興特別税含む)です。

 

長期譲渡所得の税率は20.315%(=所得税15.315%+住民税5%。同)です。

 

なお、マンションを売却して、譲渡収入金額が「取得費+譲渡費用」より低かった場合は、譲渡損失、つまり赤字となります。この場合は当然、譲渡所得税はかかりません。

 

また、投資用(事業用)マンションの売却による譲渡損失の金額は、同じ年に売却した他の不動産の譲渡所得から差し引きことはできますが、給与所得や不動産所得(家賃収入)など、他の所得とは損益通算できません。

買換えなら「特定事業用資産の買換え特例」を忘れずに

自宅マンション(居住用財産)を売却する場合には、さまざまな税法上の優遇措置が講じられています。譲渡益が出た場合は、「3,000万円特別控除」をはじめ、さまざまな減税の特例措置があります。また、譲渡損失が出た場合にも「譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」といった特例措置があり、税金を減らすことができます。

 

ところが、投資用(事業用)マンションの売却では、そのような措置はほぼありません。10年超所有した事業用(投資用)マンションを売却して、別の事業用不動産を購入した場合、「課税の繰り延べ」が受けられる「特定事業用資産の買換え特例」という措置がある程度です。

 

この点は、マイホーム(居住用)マンションの売却と大いに異なる点であり、勘違いしやすい点でもあるので、よく確認してください。

まとめ

投資用マンションの売却は「段取り」が重要です。不動産会社の担当者からアドバイスを受けながら、計画的に進めましょう。計画さえ立ててしまえば、あとは「階段」をひとつずつ登っていくだけです。また、譲渡所得の課税関係については、投資用(事業用)と自宅用(居住用)でルールが異なる点が多いので、十分注意してください。

 

 

 

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著者紹介

連載お金に困らない将来設計とは?今からできる「資産形成」の基礎

※本連載は、『ライフプランnavi』の記事を抜粋、一部改変したものです。