不動産投資の「スタイル」とは?
不動産投資には、ひとつの物件を長期間保有して安定した家賃収入を確保する方法と、長期間保有はせずに物件の状況や収益性によって比較的早く売却して、物件を入れ替えていく方法があります。
長期保有型でじっくり稼ぐタイプ
長期保有型といっても、具体的に 「〇年以上」 という定義があるわけではありません。継続して安定した収入がある間は保有し、将来的に売却の機会があれば売却するという、あえて「出口戦略」を設定することをしないのがこのタイプです。
もし売却する場合は、次のようなことがきっかけとなるでしょう。
●購入時のローン返済が終了
●減価償却が終了
●周辺環境が変化し、高く売れそうな期待がある
●入居率が悪く、撤退を検討したい
また物件によって、長期保有型に向くものと、そうでないものがあります。
長期保有型投資に向く物件
●通勤に便利な立地条件
●単身者に便利な商業施設などが充実している
●金融機関の担保評価が高い
●管理体制がしっかりしている
20年や30年は保有しつづけると考えると、需要が変わらないエリアに限定されるのはいうまでもありません。
短期保有型で物件入れ替えタイプ
短期保有型投資といっても、厳密に「○○年以内」という定義はありません。譲渡所得の区分で短期譲渡になるのは5年以内ですが、譲渡所得税がかなり高くなります(39.63%。5年超の長期譲渡では、20.315%)。よほどの理由があるなら別ですが、サラリーマンが副業として行う不動産投資で5年以内に売却するのは、短すぎると考えられます。
5~10年ぐらいの期間で家賃収入を確保し、大規模修繕工事による分担金負担など、投資効率を下げる要因が生まれる前に売却する。このような戦略で投資をする手法を、ここでは「短期保有型」と定義します。
不動産投資はほかの投資と比較するとリスクは少ないといいますが、経年劣化という防ぎようのないリスクと、人口減少など社会的な変化によるリスクは常に考えなければなりません。
社会の変化するスピードが早くなっている今日、できるだけベストな条件で賃貸事業が成り立つ状況を作る必要があります。
たとえば、築25年の高利回り物件を購入して5年間家賃収入を得てから売却したとして、減価償却金額よりも売却ロスが少ないと、実質的なキャピタルゲインが得られることになります。そのうえで新規物件を購入し、また5年ほど運用する…というのが、短期保有型の事業イメージです。
「新築マンション」のメリットとデメリット
新築マンションは物件情報が集めやすく、購入する住戸によって内容が変わるといった心配もありません。初心者でも取り組みやすい面がありますが、新築だからこそあるデメリットもあります。
新築マンションのメリット
●入居希望者に人気がある
●築10年頃までは修繕費があまりかからない
●長期の融資を受けやすい
●減価償却期間が長い
新築マンションのメリットは以上のようなものがありますが、このなかで「新築と中古、どちらを購入するか」を考えるうえで大切なのが「減価償却」です。
ワンルームマンションの構造は「RC造(鉄筋コンクリート造)」であり、法定耐用年数は47年と、保有期間を通じて減価償却が可能です。また、いわゆるアパートローンの利用により、30~35年の長期融資を受けられる場合は、返済額を抑えることができます。
築古の中古マンションでは、長期保有をしようと考えても期間中に減価償却が終了してしまい、節税効果が減少するのです。
新築マンションのメリットを活かすなら、「長期保有型投資」スタイルが望ましいといえるでしょう。
また、新築なので築10年間はあまり修繕費がかからないことも大きなメリットです。住宅設備機器は15年前後で交換時期を迎えるのが一般的ですので、修繕計画をあらかじめ立てておき、家賃収入からきちっと積立をしておくことも大切でしょう。
新築マンションのデメリット
●必要資金が高額になる
●入居が決まるまで時間がかかる
●購入後2年ぐらいで資産価値が大きく下がる
新築マンションのデメリットを補うには「自己資金」が必要です。そのため、これから不動産投資を考える人にとってはハードルが高いといえるでしょう。必要資金が高額になれば、利回りが少なくキャッシュフローが小さくなります。予定外の出費に対応できる余剰資金は必ず確保しておく必要があります。
また、賃借人が入居するまで時間がかかると、その間はローン返済・管理費・修繕積立金の支払いは自腹です。そのための資金がないと、行き詰ってしまいます。
投資スタイルから考えると、購入後2年ぐらいで資産価値が大きく下がることは、購入後10年程度の期間で売却することは難しく、短期保有型の投資スタイルには向きません。
「新築と中古のどちらを買うか」を考えるうえで、新築マンションは「長期保有型投資」スタイルが望ましいという結論が、ここでも出てきます。
また、新築マンションは投資額が高くなるので、利回りは中古マンションより低いことが一般的です。安定的に入居が見込め、さらに年数がたっても家賃の値下げが少ない、立地条件がよい物件を選択することが鍵になるでしょう。
「中古マンション」のメリットとデメリット
中古マンションは、新築マンションとの比較でメリットやデメリットを語ることが多いです。ここでも、新築との比較の視点で解説していきます。
中古マンションのメリット
●必要資金が少ない
●利回りのよい物件が多い
●オーナーチェンジ物件なら購入時点で収益がある
中古マンションのメリットには、不動産投資に必要とされる要件がそろっています。もちろん、あくまでも物件次第であり、中古物件のすべてにこういったメリットがあるわけではありません。いくら安価でも直近に大規模修繕が控えていたり、表面利回りはよくても入居率が50%に満たなかったりといった物件もあるため、物件内容を詳細に検討しない限り、簡単に購入するわけにはいきません。
築年数が古い物件は減価償却期間が短いため、「10年以内に売却する短期保有型投資の物件」と考えるべきでしょう。
築浅の中古マンションは、物件の状態や管理体制、立地条件により「長期保有型投資」が可能な場合もあります。もっとも、条件のよい中古物件を探している投資家は非常に多く、優良物件になるほど、一般公開される可能性は低くなります。そのため、非公開の情報をいかに早く入手できるかが成功のカギになります。
サラリーマン大家のような、情報収集に大きく時間を割けない投資家の場合は、よい物件情報を入手できるコネクションやルートを確保しておくことが重要です。
中古マンションのデメリット
●修繕工事が多くなる
●大規模修繕工事費を負担する場合も
●家賃設定を下げる必要が高い
●減価償却費が低く期間も短い
中古マンションを探す際に避けたいのが、これらのデメリットが明確な物件です。格安物件や表面利回りが際立って高い物件には、このような物件が含まれている可能性があります。
ネット上でも、不動産投資の失敗について書かれた記事をしばしば見かけますが、その多くが、上記のようなデメリットのある物件を購入したことが原因となっています。
ワンルームマンションの中古物件を購入するにあたって留意したいのは、いくつかあるであろう物件のデメリットを、メリットで補うことができるかどうかの判断です。デメリットがない物件はありませんから、その点を踏まえたうえで決断しましょう。
たとえば、デメリットを充分カバーできる収益性があるならば、短期保有型投資の対象として検討する余地はあります。
投資スタイルによる物件選択方法
これまで、新築物件と中古物件のそれぞれのメリット・デメリットを説明し、判断材料になるポイントをあげました。いよいよ、最後の選択材料をお伝えします。
投資スタイルには長期保有型と短期保有型があります。ご自分のライフスタイルや将来計画により、希望するスタイルはそれぞれ違うもの。物件選択で新築にするか中古にするかは、投資スタイルにより変わり、決定づける要素が「返済年数」なのです。
物件選択の決め手となるのは「返済年数」
借入金の減り方は、返済年数によってまったく異なります。下表は新築と中古の場合で、金利3.5%、返済年数を35年と20年で比較し、10年経過後と20年経過後の融資残高を記載したものです。
10年経過後では新築の融資残高は17.5%減り、中古は40%減っています。新築を10年後に売却しようとした場合、売却価格では融資残高の一括返済は難しく、自己資金を返済金に充当する必要がでてきます。
しかし中古は40%も融資残高が減っているため、売却価格で一括返済しても、新規物件を購入する頭金くらいは用意できるかもしれません。
つまり、返済年数から考えると、「長期保有型の場合は新築が望ましく、短期保有型の場合は中古が望ましい」という結論になります。
まとめ
ワンルームマンション投資における新築物件・中古物件それぞれの選択方法を解説しました。
●長期保有型
●短期保有型
以上、2種類の投資スタイルにより、選ぶべき物件は以下のように絞り込めます。
●長期=新築マンション or 築浅の中古マンション
●短期=中古マンション
新築か中古かを決める前に、ご自分にあった投資スタイルを、まず考えてみるのがいいでしょう。とはいえ、初めて不動産投資をする人は、なかなかイメージも湧きにくいと思います。そんなときは、信頼できる不動産業者を何社か選び、相談してみるのもひとつの方法です。