ワンルームマンション投資ではエリア(地域)選びも重要です。エリアは将来の賃貸需要の高低に直結するうえ、一度購入したマンションを移動させることはできませんから、慎重に検討しなければなりません。今回は、「都心エリア」と「郊外エリア」について、それぞれの特色とメリット・デメリットを考察します。※本連載は、将来お金に困ることがないように、若いうちからできるライフプランニングに役立つ情報を紹介する「ライフプランnavi」の記事を抜粋、一部改変したものです。

投資用ワンルームマンション「都心エリア」の特色

投資用マンションの立地について、まず「都心エリア」から考えてみましょう。

 

ここでいう「都心エリア」とは、東京23区の中でも、山手線の内側、あるいは都心6区(千代田区、中央区、港区、渋谷区、新宿区、文京区)と呼ばれるようなエリアです。

 

都心エリアのワンルームマンションは、都心にオフィスがある会社員の方がメインターゲットになります。また、比較的裕福な実家から仕送りをもらっている学生なども入るでしょう。

 

都心エリアのメリットは、将来も人口増加が続くか、あるいは人口減少の進行が緩やかであるという点です。

 

すでに日本全体では人口減少社会になっていますが、東京の都心部では、まだ人口増加が続いています。(『東京都区市町村別人口の予測』『「東京都の人口(推計)」の概要(平成31年1月1日現在)』)。

 

【メリット】

 

人口が増えるということは、賃貸住宅需要の基礎的となる部分が増えることなので、「需要が減りにくい=空室リスクが低い」という点が都心エリアのメリットになります。

 

ただし、都心に住みたい人は「通勤時間」「通学時間」を意識している人が多いと推測できます。そうなると、都心エリアであっても、さらに「駅近」という要素が重要な需要ポイントになることは、留意しておいたほうがいいでしょう。

 

とはいえ、その地域が良いということで需要以上に賃貸住宅の供給が増えれば、空室や賃料の値崩れが起きることもありますので注意が必要です。

 

遠い将来のことはわかりませんが、当面の間は都心エリアにおいて、大きな地価の下落が起こることは想定しにくいと思われます。

 

そのため、資産の価値保全という意味でも安心感が高いことが、都心エリアのメリットです。

 

【デメリット】

 

一方、都心エリアのデメリットは、地価が高くマンション販売価格が高いことです。

 

したがって、一定以上の自己資金があるか融資を受けられる環境がないと、そもそも投資ができません。

 

また、貸し出す際に、賃料には比較的広い範囲で適用される一定の「相場感」があるため、物件価格の差ほど、賃料の差をつけることができません。物件価格が相対的に高く、賃料はそれほど高く設定できないといため、投資利回りが下がります。

 

一例として、不動産調査会社の東京カンテイが公表している資料によれば、首都圏の新築賃貸マンションの平均利回り:4.44% であるのに対して、

 

●日比谷線六本木駅周辺:2.34%

●JR山手線浜松町駅周辺:2.93%

 

など、顕著な差がみられます(東京カンテイレスリリース「築年数別に見る駅別利回り分布の分析(首都圏)」2017年10月31日)。

「郊外エリア」の特色…物件価格が相対的に低い!

上記資料「東京都の人口(推計)の概要」からもわかるように、東京都といっても、西部のエリアではすでに人口減少がはじまっています。

 

この傾向は、神奈川件や埼玉県などでも同様で、神奈川なら横浜エリア、埼玉県なら、さいたま市の大宮エリアなどでは、ぎりぎり微増か、横ばい程度で推移していますが、他のエリアでは人口減少がすでに進んでいます。

 

【メリット】

 

郊外エリアのメリットは、物件価格が相対的に低いことです。

したがって、資金にあまり余裕がない人で不動産投資をスタートさせやすいといえそうです。

 

また、物件価格が低ければ、利回りは相対的に上がります。都心6区のワンルームマンションの表面利回り平均が4~5%程度なのに対し、葛飾区や足立区だと7~8%になるといった差です。東京以外の地方都市では、利回り10%程度の中古物件も珍しくありません。

 

利回りが高いということは、それだけ早くキャッシュが回収できるということです。単純に考えると、利回り5%の場合は物件購入価格を回収するのに20年かかりますが、利回り10%なら10年ですみます。(実際には空室率や経費、税金分を考慮する必要があります。)

 

したがって、「手もとのキャッシュが少ない」かつ「早期に資金を回収したい」という人は、空室リスクの少ない地域という条件はつきますが、郊外物件も選択肢に入るでしょう。

 

【デメリット】

 

人口が減少すれば、当然基礎的な需要が減ることになり、将来にわたった空室リスクが高くなります。これが郊外エリアのデメリットです。

 

ただし、郊外エリアといっても、一括りにはできないことも事実です。

 

ワンルームマンションの場合、単身の会社員や学生の入居者中心ですので、それらの人が通勤、通学に便利な場所であれば、都心エリアとは違った形での、比較的安定した需要が望めます。

 

典型的なのは、郊外にある大学の近隣、あるいは、大企業の工場がある地域などです。こういった地域であれば、空室リスクは低くなる傾向があります(ただし、施設の移転・閉鎖などには十分な注意を要します。そこだけの需要に頼っていた場合、需給バランスが完全に崩れるため賃料を下げても空室が埋まらないケースも見受けられます)。

 

もちろん、都心部への通勤時間という観点から考えると、快速・急行などの電車が停車する駅での駅近物件であれば、都心物件と大きな差のない通勤・通学を主目的にした賃貸需要が得られるでしょう。

必ず「災害リスク」を確認しよう

近年は、台風や集中豪雨による被害が年々甚大になってきています。不動産投資では、そういった災害リスクも考慮しなければなりません。エリア選びの際にも、エリアの災害リスクを確認する必要があるのです。

 

まず、そのエリアの地方自治体のホームページで「ハザードマップ」を確認しましょう。「○○(エリア名)ハザードマップ」と検索すれば、すぐに見つかりますし、国土交通省が運営している「ハザードマップポータルサイト」からも調べられます。ハザードマップでは、「洪水、土砂災害、津波、液状化」などの災害リスクを調べることが可能です。

 

ちなみに、同サイトにある「重ねるハザードマップ」では、情報ソースがそれぞれ別の「洪水・土砂災害・津波のリスク情報、道路防災情報、土地の特徴・成り立ち」などを、地図、写真で確認できるため、非常に便利です。

 

ハザードマップ上でリスクが高いエリアだったとしても、それを理由に即投資不適格となるわけではありません。

 

リスクの高いエリアは相対的に価格が低くなるのが普通であり、リスクと価格とのバランスが取れていることが重要なのです。

 

さらに、地方自治体によっては「地域危険度一覧表」といったデータを用意している場合もあるので、そちらも確認しておきましょう(例:東京都都市整備局「地震に関する地域危険度測定調査地域危険度一覧表(区市町別)」

 

地域危険度一覧表では以下のような項目を確認できます。

 

●建物倒壊危険度

●火災危険度

●災害時活動困難度

●総合危険度

 

要は、地震が起きたときのリスクを数値化したリスク表示です。この点も上述のハザードマップと同様に、リスクが高いから絶対NGというわけではありません。そのリスクが適切に価格に織り込まれているのかを確認しつつ、地震保険への加入などで対処します。

まとめ

「都心エリア」「郊外エリア」という分類でワンルームマンション投資を考察しました。

 

それぞれの特徴、メリット・デメリットを押さえておくことは必要ですが、それらの広域エリアのなかはさまざまな特徴をもつ街に分かれ、それぞれ個性を持つ不動産物件があります。

 

世界に2つと同じ不動産物件は存在しません。したがって、おおまかにエリアの特徴を把握したら、「この街・この物件はどうなんだろう?」というふうに、個別的の特徴を自身の目で確認するほうが、より実践的かつ有益なのです。

 

 

 

※本連載は、『ライフプランnavi』の記事を抜粋、一部改変したものです。