チェックすべき項目
投資物件を購入する際には、販売側の説明をしっかり聞くことはもちろん、建物の内外のほか、立地や周辺環境、修繕積立金はどうなっているのか等、押さえておきたい重要な事柄について、自身の目で確認することが重要です。
ここでは絶対に省略してはならない、
「①建物」「②周辺環境」「③管理に係る重要事項調査報告書」「④修繕積立金・管理費」「⑤理事会構成・管理会社」「⑥管理規約」「⑦売主から確認すべきこと」
のチェックポイントを見てきましょう。
①建物チェック…必ず「自分の目」で行う
建物の内外については、必ず現地に出向き、現物を確認します。チェックすべき箇所は、大きく次の2つです。
・建物の外部と共用部
・室内
【建物の外部と共用部のチェック方法】
まず、マンションの建物全体をぐるりと1周して見て回り、気になる点がないかチェックします。たとえば、
・外壁や基礎部分にひび割れや欠損、タイル浮きがないか
・放置自転車やタイヤ、ゴミなどが散乱していないか
・エレベーターの作動状態や点検実施状態に異常はないか
・植栽・雑草の手入れ状況
といった点です。
外壁は長期修繕計画により定期的にメンテナンスするのですが、現状を把握しておき「修繕履歴」が入手できるなら、それと照合して適正に管理されているかを確認します。
ゴミや放置自転車などの散乱は、管理状態が悪いことの現れです。これは入居者募集がうまくいかない原因になります。
エレベーターは定期点検が義務づけられています。エレベーター内に貼ってある点検シールで確認しましょう。
【室内のチェック方法】
室内の確認箇所は、入居の有無によって異なりますが、できるだけ多くのポイントをチェックするようにしたいところです。チェックの際には下のようなチェックリストを利用すると、見落としがなくなります。
各種設備は、動作確認もしておくとよいでしょう。チェック結果は購入後の修繕工事見積りにも役立ちます。あまりにも問題箇所が多いと、購入後の修繕費用がかさむ場合があります。
②周辺環境…自ら歩いてみて、確認を
周辺環境は物件資料などにも記載がありますが、必ず自分の足でも確認します。
「駅まで〇分」と記載する、最寄り駅までの徒歩時間は、「1分間=80メートル」で計算するよう決められています。
しかし実際には、坂道や踏切等で想定以上の時間がかかることもあるため、必ず自分の足で歩いて実測します。
また、ワンルームマンションはほぼ単身者用です。したがって、コンビニやコインランドリーなどの環境ニーズが高くなります。
自分が入居者になったつもりで、周囲の利便性をチェックすることが大切です。
さらに近年重要性が増しているのが、自治体のホームページで確認できる「ハザードマップ」です。
自然災害が多くなり、「まさか」と思う地域でも被害が生じています。売買契約時の重要事項説明では説明義務がないので、自分で調べておかなければなりません。
③「管理に係る重要事項調査報告書」…事前チェックをすませておく
マンションの管理は、管理会社に委託しているケースがほとんどです。
売買契約時の重要事項説明では「管理に係る重要事項調査報告書」についても説明を受けますが、事前に見せてもらい、ぜひ自分でチェックしておくべきです。
④修繕積立金と管理費項目…注目すべきは「修繕積立金の残高」
修繕積立金と管理費に関する事項については以下の内容が書かれています。
・修繕積立金の月額金額
・管理費の月額金額
・売買対象住戸の修繕積立金と管理費の滞納額
・マンション全体の修繕積立金と管理費の滞納額
・修繕積立金の残高
もっとも注目したいのが「修繕積立金の残高」です。
マンションの規模にもよりますが、外壁や屋上防水のメンテナンスや給排水管の交換工事など、大規模修繕工事には高額な費用が必要です。
修繕積立金はその費用に充当するのですが、もし不足する場合は各区分所有者(投資家)がそれぞれ負担しなくてはなりません。
マンション購入後に大規模修繕工事費用を負担すると、一気に投資効率が悪くなります。
また、修繕積立金の不足により大規模修繕工事ができないというマンションも実際にあり、そうすると入居者に不便を強いることになるため人気が落ちてしまう=資産価値が大幅に落ちてしまう原因にもなるのです。
【修繕履歴から読み取れる管理状態の健全性】
「修繕積立金」とも関連しますが、これまでの修繕履歴をチェックすることにより、必要な時期に大規模修繕工事を行っているか実施状況が把握できます。
築浅の物件の場合、まだ大規模修繕工事を実施する時期に至ってないことが多く、修繕積立金の残高はある程度あるはずです。
修繕履歴と積立残高には関連性があるので、健全な管理が実施されているかどうかがわかります。
大規模修繕工事以外にも、築年数の古いマンションでは劣化状態に応じて、共用部の修繕工事を行うものです。
そのような履歴がきちんと残されていて確認できる物件は、管理面において健全なマンションだといえるでしょう。
⑤理事会構成と管理会社…資産価値を維持するために
マンションの管理方法は以下の3パターンあります。
・管理会社に全部委託
・管理会社に一部委託
・管理組合で自主管理
マンションの管理は区分所有者で組織する「管理組合」が行うのが原則です。
しかし管理には専門的な知識も必要なため、管理会社に委託するマンションがほとんどです。
戸建住宅であれば、所有者が必要なメンテンナンスをしながら資産価値を維持することもできますが、マンションの場合は個人ができることはほとんどありません。
管理組合がしっかり機能していないと管理がおろそかになり、資産価値の低いマンションになってしまいます。
マンション管理会社は登録制度になっているので、対象マンションの管理会社が登録業者かどうかは念のため、国交省の「マンション管理業者一覧」で確認してください。
(国土交通省:「マンション管理業者一覧(登録番号順)」)
管理会社に委託しない場合は「自主管理」を行います。
自主管理は管理組合の理事会がしっかりしていないと機能しません。
またワンルームマンションは投資用の住戸が多く、区分所有者がマンション内に居住していないケースが多いものです。
このようなマンションの場合は、理事会の構成によって管理状態が左右される可能性が高いので、注意すべきでしょう。
⑥管理規約…民泊利用を検討するなら
マンションは通常、「管理規約」を定めています。ただし、古いマンションには管理規約のない物件もあるので注意してください。
規約では、専有部分と共有部分それぞれについて、利用規定や使用細則を定めています。禁止事項等もあるので、確認を忘れないようにしましょう。
東京オリンピックを控え、インバウンド需要が増すなか、1Rマンションを「民泊」として利用することを考えている方もいるかもしれません。
2018年に「住宅宿泊事業法(民泊新法)」がスタートし、マンション管理組合では管理規約に「民泊利用」に関する規定を設けるようになっています。
もし、購入物件を民泊として活用する可能性があるなら、管理規約の民泊規定を必ず確認するようにしておきましょう。
逆に、民泊での活用予定がないなら、管理規約で「民泊禁止」となっているほうが望ましい、という考え方もあります。
⑦売主から確認すべきこと…「売却理由」も知っておきたい
可能であれば、前オーナーの売却理由も確認できるといいでしょう。
実際に住んでいた方がオーナーの場合、経済的事情や転勤、家族構成の変化による住み替えといった理由であれば、とくに問題はありません。
また、投資目的のオーナーだった場合、物件の入れ替え、現金が必要になったなどの理由であれば、同じく問題はないでしょう。
ただし、居住していた場合に「環境が悪くなって暮らしにくくなった」、投資目的だった場合に「空室期間が増えた」といった理由があるなら、細かく事情を調べた方がいいでしょう。
オーナーの努力で解決できる問題ならいいのですが、そうでないなら、投資は見送ったほうがいいケースもあります。
売却理由には、投資の判断材料になる重要ポイントがあるものなのです。
まとめ
投資用ワンルームマンションのチェックポイントについて解説しました。
比較的少ない資金でもはじめられるワンルームマンション投資は、不動産投資の初心者でもハードルが低いでしょう。
しかし不動産仲介会社からの情報だけで判断せず、自分の目や耳を使って物件に関する情報を集めて検討することが大切です。