予備校講師が「受験諦めたい…」と絶望する子を「褒める」理由

長期に渡る医学部受験。わが子はしっかり勉強しているのか、今年こそ合格できるのか…心配が積もるばかりです。最新の大学情報・勉強法・メンタルケアの方法を知り、親子ともども、来たる日に備えましょう。医学部受験の最新情報を配信する『集中メディカ』より、厳選した記事をお届けする本連載。今回のテーマは、「子どもが受験を諦めそうなときの対処法」。

「今まで頑張ってきた苦労が水の泡じゃない」は禁句

もしわが子から「受験を諦めたい」と打ち明けられたら、親はどのように受け止めてあげるべきでしょうか? 勉強に疲れてしまった様子の子どもに対して、「何泣きごとをいっているの?」「今まで頑張ってきた苦労が水の泡じゃない」と発破をかけますか? ちょっと待ってください。それは逆効果かもしれません。

 

高校時代の3年間、いえ、それよりも長い期間、頑張り続けていた人もいることでしょう。体力的、精神的にも参ってしまったとはいえ、ここで諦めてしまったら、受験にささげた途方もない労力・膨大な時間がムダになってしまいます。

 

「できれば合格まで頑張ってほしい」と願うのが、親心というものです。なんとかやる気を取り戻してくれる術はないものでしょうか。

 

◆受験生のやる気を回復させるには?

 

●医師を目指すと決めたときの「ワクワク感」を思い出させる

 

初心に帰ることは、やる気を回復させるのに効果的な手法です。たとえば、親子で一緒に、面接試験の練習をしてみたらいかがでしょうか。医師を志す理由は人それぞれですが、医学部の面接試験で受験生が説明するのは、次のような内容です。

 

「家族に医師や医療従事者がいる。働く姿を見て、自分も目指したいと思った」

「家族や友人が、重篤な病気、または不治の病と呼ばれるもので長患いしているため、自分が医師となって助けてあげたいと思った」

「『国境なき医師団』などの医療系NGOに所属する医師たちが、世界各国で活躍する姿を見て憧れを持った」

「テレビで放映された医療ドキュメントや医療ドラマを見て、高い医療技術を持つ医師やへき地医療などに興味を持った」

 

初心を思い出させるのに打ってつけの機会ですよね。昔を思い出すことで、医師を志すことを決めたときの気持ちがよみがえり、「過去の自分を悲しませないように頑張ろう!」という気概が復活してきます。面接試験の準備は、受験勉強の一環でもあるので、「意味のあることをしている」「先に進んでいる」という前向きな気持ちにもなれ、一石二鳥でしょう。

 

●いったんリセットして、趣味や遊びを解禁するのも手

 

面接試験の練習すらできないくらい、気が滅入っているならば、親のほうから、「わかった。もう勉強はやめなさい。受験しなくていいよ」と伝えてあげてください。もちろん、これは一時的なものです。大切なのは、「受験を諦める」のではなく、「受験からいったん気持ちを遠ざける」ようにすることです。

 

一度、受験生の呪縛を解いてあげれば、彼らはのびやか、晴れやかな解放感に包まれます。勉強をやめたことで時間に余裕ができますから、スポーツやゲームなど、今までできなかったことをやってみるのも気晴らしになるでしょう。どんどん遊ばせてあげてください。

 

しかし、毎日好き放題にして過ごしていると、不思議なことに、受験生本人が「物足りなさ」を感じてきます。そして我に返るのです。「あんなに頑張っていた勉強をなぜやめたのだろう?」と。

 

人は、ある程度のストレスを感じていたほうが精神的に安定するといいます。ストレスが過剰になると何もかも投げ出したくなりますが、まったくなくなると、逆に不安になるのです。

 

特に、医学部を目指す子どもたちは大変真面目です。これまでと違った生活環境(=趣味や遊びの世界)に自分の身を置くと、勉強漬けだったときの頭の中がリセットされます。しかし、一定の時が経てば、遊び倒す生活が退屈に思えてくるものなのです。

 

これまで沢山の受験生を合格に導くことができた経験からいえることですが、たとえ少しの期間を受験勉強以外に費やしたとしても、合格圏内まで学力を伸ばすことは可能です。

 

「もう嫌だ」と子どもが伝えてきたときは
「もう嫌だ」と子どもが伝えてきたときは

挫折することによって新たに見えてくるものがある

◆「挫折」することは成長の一歩

 

受験生にとって第一志望の医学部に入ることが人生最大の目標であった場合、受験に失敗して進学できなかったという経験は「挫折」という心の痛みとなります。そしてその痛みを癒さなければ、トラウマとなって受験生の心に居座り続けてしまう可能性もあります。だからこそ、親御さんや家族は、しっかりと受験生の心に寄り添い、サポートしていただきたいのです。

 

精一杯努力したのであれば、挫折は無意味ではありません。チャレンジすることが大切なのですから、恥ずかしいことは何もありません。挫折こそ、努力の証でもあるのです。受験生の努力を労い、褒めてあげてください。

 

また、挫折することによって新たに見えてくるものもあります。たとえば、「入試問題の解答を見て、自分の苦手な分野がはっきりわかった」とか、「社交的だと思っていたのに、面接で緊張してしまう人見知りな自分に気づいた」など、弱点発見のきっかけになるのです。

 

挫折は成長するために必要な人生経験であり、それを克服する知恵と勇気さえあれば、さらに大きな人間になれます。「ここで終わり」と萎縮せず、未来へ向かうための一歩と考えれば、挫折することも励みとなります。

 

◆将来、自分を必要とする医療機関があると信じて

 

「努力を怠らなければ夢は叶う」といわれます。しかしそれだけでは足りません。「努力を継続し、諦めないこと」も重要なのです。

 

医学部の受験生にはさまざまな人がいます。現役高校生はもちろん、10代から20代の浪人生、社会人経験を経た30代以上の人もいます。また、近年では海外からの受験生も増えています。年齢や国籍に関わりなく挑戦する多くの受験生も、挫折という心の傷を何度も受けながら頑張っているかもしれません。その熱い戦線から離脱することはいつでもできますが、一度離脱したら、今と同じ位置に戻るためには、今の数百倍、いや数千倍の努力や精神力が必要になることでしょう。

 

本来なら友達と遊んだり、部活に打ち込んだりと、楽しいことばかりの青春時代に、勉強一辺倒の日々を送らなければならないのは辛いことです。この貴重な時間を犠牲にしてまで挑戦する医学部受験は、価値のある大業です。挑戦すること自体を褒め続けてあげてください。

 

 

亀井 孝祥

医学部受験専門予備校メディカ 代表

 

医学部受験専門予備校メディカ 代表
数学講師 

愛知・東海高校から東京理科大学へ。塾講師を経て医学部受験予備校YMSにて数学科主任、教学部長など9年務めたあと、姉妹校設立のため独立。姉妹校提携解消後、医学部受験専門予備校メディカを設立。現在に至る。

著者紹介

連載受験のプロが徹底解説!医学部「絶対合格」の秘訣

本記事は、医学部受験サクセスガイド『集中メディカ』ホームページのコラムを抜粋、一部改変したものです。