長期に渡る医学部受験。わが子はしっかり勉強しているのか、今年こそ合格できるのか…心配が積もるばかりです。最新の大学情報・勉強法・メンタルケアの方法を知り、親子ともども、来たる日に備えましょう。医学部受験の最新情報を配信する『集中メディカ』より、厳選した記事をお届けする本連載。今回のテーマは、「小論文対策」。

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「医師に相応しい人格者」を見抜くための試験

医学部受験では、医師としての資質を見極めるために小論文試験が実施されています。「学力試験で合格点を取ればいいんでしょ」と考える受験生は多いものですが、そうではありません。医師に相応しい人格者でないと、医学部には入れないのです。

 

当然、「思いのまま書けばよい」という考えは禁物です。医師は人の生命を預かる重大な職務ですから、強い責任感と倫理性が求められます。学力のみならず、受験生の人間性を知るために小論文試験があるということを心得てください。

 

◆医学部「小論文試験」の基本スタイル

 

小論文テーマの出題傾向は各医学部さまざま。多くの受験生は併願をするため、大学ごとに多角的な対策が必要です。とはいえ、医学部小論文試験の出題形式をカテゴライズすることは可能です。以下にその典型的なスタイルを紹介します。

 

・文字数:600~800字、多い場合は1200字程度

・試験時間:60~90分

・文体:論述形式(課題文型、またはテーマ型<絵・写真を含む>など)

 

「課題文型」は、書籍や新聞記事からの抜粋された課題文を読み、それについて論じる形式のことをいいます。「テーマ型」は、あらかじめ大学側が設定したテーマについて論じる形式です。

 

次に、文章全体のまとめ方について説明します。物語に「起承転結」があるように、小論文にも序論→本論→結論と段階を踏むセオリーがあります。

 

・序論:与えられた課題やテーマに対するファーストインプレッション、そしてそこから発想できる「疑問」や「問い」を書きます。

・本論:課題やテーマについての全容や背景を語り、次に序論で掲げた「疑問」や「問い」に関する事象や問題点、今後の課題について書きます。

・結論:本論で掲げた課題についての解決策を具体的に書きます。

小論文対策…日常生活のなかにもヒントが

小論文のヒントは、日々発行・発信されている新聞やTV報道などに隠されています。通常の学力試験のように短期間での追い込み勉強をするのではなく、これから入試日までの毎日が、小論文試験の準備期間と考えてください。

 

・新聞記事やTV報道からヒントを得る

新聞には医療系の記事が毎日必ず掲載されています。たとえば、新型コロナウイルスのニュースを例に取ると、初期発生地域、感染経路、世界各国の感染者数の推移などの情報が逐次掲載されていきます。毎日欠かさず新聞を読むことで、「新型コロナウイルス」というテーマについて、時系列で、広く、深く把握することができるのです。

 

また、TV報道でも、政策の是非や課題について討論されています。報道番組も並行してチェックしながら、そのテーマに対する自分なりの考え方や意見をまとめる習慣をつけましょう。

 

当然ながらコロナウイルス関連の情報は要チェック
当然ながらコロナウイルス関連の情報は要チェック

 

・今年の医療系記事をスクラップしておく

4月から9月の医療系ニュースは、小論文にもっとも取り上げられやすいテーマとなります。今すぐにでも医療系記事のスクラップ(またはネット記事のデータストック)を始めましょう。テーマごとにファイルをわけて、時系列で記事内容を並べるようにしておくと振り返りがしやすいので便利です。新聞・TV報道からの情報収集は、早い時期から継続的に続けることが必要です。

 

◆制限内でベストな小論文を書き上げる訓練を

 

スクラップ(データストック)した新聞記事からテーマをピックアップして、小論文を何本か書いてみましょう。受験前半の時期は、月に1本程度が目安です。

 

小論文試験では文字数や時間に制限があります。決められた範囲でベストのパフォーマンスを出せるよう、自分で時間を計り、できるだけ多くの小論文を書き上げましょう。テーマに合致した文章を組み立てるには、継続的な訓練が必要です。

 

自分のストレートな思いを安易に表現しないように気を付けましょう。前述の通り、小論文は「受験生の医師としての資質を見極めるため」に設けられているものなので、人間性・倫理性が疑われるような表現は避けたほうが賢明です。

 

別の場面であれば個性や本音も大切かもしれませんが、「将来の医学生に相応しい」と評価される内容までに留めてください。

 

訓練のために書き上げた小論文は、医学部受験の専門家に添削してもらいましょう。テーマに対する勘違いや筋道違い、定義のブレがないかを第三者の目から見極めてもらい、適切なアドバイスを受けることで、説得力のある小論文を書く力が備えられます。

小論文試験で「よくある失敗」のパターン

小論文試験は、限られた時間内に限られた文字数内でおさめることが必須となるため、普段ならありえないケアレスミスが多発します。小論文試験でよくある失敗を以下にまとめました。

 

・誤字や脱字が多すぎる

テーマに沿った理論には説得力があるものの、あまりに誤字・脱字が多すぎて試験官が興ざめしてしまうケースもあります。また用紙の使い方や、段落送りなどのルールが守られていないことも評価が下がる原因になります。可能な限りはやめに書き上げて、もう一度読み直す余裕がほしいものです。

 

・文字数が足りない、多すぎる

試験開始後、すぐに全体文字数をチェックして、前述の序論・本論・結論ごとに文字配分を決めましょう。自分がおおよそどのくらいの時間で書き上げられるかも考えながら、時間内、できればそれより少し早めに書き上げられるように進めましょう。文字数不足・過多は減点対象になる場合がありますので、できる限りぴったり、それがムリならせめて8割程度まで埋めましょう。

 

・道徳性が疑われる不適切な表現

医学部の小論文試験は、受験生の人間性や倫理性を知るために実施されています。そのため、道徳・秩序に反するような不適切な表現は禁物です。

 

まとめ

小論文試験では、読解力・思考力・論述力が問われます。試験で課されたテーマを正しく理解し、適切な疑問や問いを投げかけ、その解決策や提案を理論的に語ることが必要です。作文のように、主観的な感想や意見を語るものではありませんので、その点は気を付けてください。さらに、医学部受験の小論文試験では、医学の背景知識も必要になります。これから1年間、新聞記事などのチェックを怠らず、自分なりの考え方や方向性を構築しながら過ごしていきましょう。

 

 

亀井 孝祥

医学部受験専門予備校メディカ 代表

 

本記事は、医学部受験サクセスガイド『集中メディカ』ホームページのコラムを抜粋、一部改変したものです。