ワンルームマンション投資をする人の多くは、融資を受けるでしょう。しかし、現在はフルローンのハードルは高くなっています。今回は、不動産投資における融資の基礎知識を確認していきます。※本連載は、将来お金に困ることがないように、若いうちからできるライフプランニングに役立つ情報を紹介する「ライフプランnavi」の記事を抜粋、一部改変したものです。

住宅ローンと投資用融資は「まったくの別もの」

自宅を購入した方の多くは、フラット35をはじめとする住宅ローンを組まれているでしょう。たまに、ワンルームマンション投資も「住宅ローン」を組んで購入すると思っている方がいますが、それは違います。

 

居住用の住宅ローンと投資用の融資(アパートローン、プロパー事業融資など)は、まったくの別ものです。まずはその違いを確認しながら、投資用融資の特徴を理解しましょう。

住宅ローンと投資用融資の違い①融資目的と返済原資

住宅ローンは、その人が住む家を買うためのローンで、返済はその人の給与などから行われます。そのため基本的には、借りる本人の勤務先、給与額などによる返済能力が重視されます。

 

一方、投資用融資は、収益を生む事業物件に融資をするもので、基本的にその事業から得られた収益(不動産投資なら家賃)から返済されます。したがって、融資の際は、物件の事業性(収益力)と、万一事業が失敗しても返済してもらえる資産価値が重視されます。

住宅ローンと投資用融資の違い②本人の属性評価

融資を受ける人についての「家族構成・職業・勤務先・勤続年数・役職・給与・過去に受けた融資やその返済履歴(クレジットヒストリー、信用情報ともいう)」といった本人にかかわる情報を、「属性(本人属性)」といいます。

 

一般的に、社会的ステータスがあって高収入の医師や弁護士、一部上場企業の役員クラスなどが高属性とされます。給与はそこまで高くなくても、地位の安定した公務員なども比較的高い属性だといえるでしょう。

 

住宅ローンは原則的に、借りる本人の属性が融資額に直結します。まず属性があり、そこから融資される金額が算出され、それに自己資金をあわせて、「買える物件」の価格が決まるというのが、住宅ローンの流れです。

 

一方、投資用融資は、事業から得られる収益(賃料)からの返済を見込むため、まず物件の資産価値・事業価値の評価がなされます。それに対して、融資額、融資返済額が十分に低ければ、融資を受けられるというのが原則です。

 

もちろん、もし何からの事情で事業性が落ちた(賃料収入が減った)場合でも、本人の属性が高ければ、そちらから返済をしてもらえます。そのため本人属性も無視されるわけではありませんが、あくまでも補足です。こうしたことから、本人属性の重要度は、住宅ローンと比べると低くなります。

投資用の融資は、NGの基準

住宅は国民の生活の基盤であり、それらに付随したさまざまな産業も形成されています。そのため、国(政府)も国民の住宅取得を促進させる政策を採り、その一環として長期返済、低金利の公的ローン(フラット35)を用意しています。建物や本人の属性が一定の条件にあてはまれば、どこの金融機関でも低金利で融資が受けられます。

 

逆にいうなら、ひとつの金融機関でNGを出された場合は、ほかの金融機関でも同様の評価を受ける可能性が高いということです。

 

一方、投資用の融資は、原則的に、各金融機関が事業(不動産賃貸事業)の収益性を判断して行います。そのため、物件の資産性・収益性への評価には、金融機関の判断が大きく影響します。融資の可否、金利水準などは、金融機関によって大きく異なることもよくあります。

 

あの金融機関はNGでも、この金融機関はOKだった・・・ということは普通にあります。そのため、投資用物件の融資を受ける際は、多くの金融機関に当たってみることも大切です。

低金利だからと住宅用ローンを投資用物件に使うと…

一般的に、住宅ローンの金利は投資物件用のローンより低金利です。しかし、住宅ローンの適用条件は「自己居住用」に限られ、投資用物件には使えません。(【フラット35】ご利用条件)。

 

ところが、投資用物件の販売に際し、一部の悪徳業者が住宅ローンを利用さていたことが発覚し、問題となりました。もしそのような行為があったことが判明すると、ローンの一括返済を求められる可能性があるため、決して手を出してはいけません。

 

ただし、自分で居住するために住宅を購入したあと、転勤などを理由に転居せざるを得なくなり、住宅を他人に貸し出して賃料を得るというケースの場合については、通常、例外として認められています。適用条件に該当するかどうかは、事前に金融機関の担当者に確認しましょう。

融資が出やすい物件、出にくい物件はどこが違うのか?

スルガの不正融資問題以後、金融庁の監視姿勢が厳しくなり、以前ほど簡単に融資が下りなくなりました。では、このような状況にあっても融資が出やすい物件とは、どのようなものなのでしょうか。2つの特徴を押さえておきましょう。

 

特徴①「キャッシュフロー」が出せる物件

 

一般的に、不動産広告で使われる「表面利回り」は満室を想定しますが、ずっと満室が続くことはありえません。一定の空室率などを想定し、それでも融資の返済に耐えられるかをチェックします。以下に簡易的なシミュレーションの目安を示します。

 

エリアや物件の状況によっても異なりますが、一般的には下記の設定が目安になります。

 

    空室率(空室期間割合)=20%

    修繕費や税金などの経費率=20%

    金利=4%

 

この条件から、以下のような計算式が導き出せます。

 

家賃×80%(100%-空室率20%)×80%(100%-経費率20%)>金利4%時の返済額

 

おおざっぱにいうと、「金利が4%になったときの返済額が、家賃収入の約65%以下なら問題ない」だろうということを示しています。もっと余裕を多く見たいなら、金利が5%になったときの返済額としてもいいでしょう。

 

特徴②「資産価値」が高い物件

 

これについては、その地域の人口推移・賃料推移などから、将来にわたって需要が見込める地域であれば、比較的高い資産価値評価が得られます。もちろん、管理体制といった物件の個別要素も関係します。

「融資が出やすい属性」…長期間の積立貯金も有利に

投資用物件の融資の場合、住宅ローンとは異なり、本人属性は補足的な扱いとなりますが、影響がまったくないわけではありません。物件の担保力が同程度であるなら、本人の属性が高いほうが融資を受けやすくなります。

 

職業としては、医師や弁護士などの士業、国家公務員(官公庁)、上場企業の社員の評価が高く、その後、大・中・小企業が続き、中小企業経営者、自営業の順に評価されます。自営業、フリーランスといった不安定な職業は、もっとも低い評価になります。

 

会社員の場合は、原則2年以上の勤務年数を求められ、安定した収入が続いているかどうかがポイントになります。これらの部分はごまかしようがないので、長い勤続年数や安定した収入の維持も重要なポイントになります。

 

仮に収入が少なくても、不動産投資用の資金として、同じ金融機関に長期間(5年以上)積み立て貯金をしているといった実績があれば、そこは評価されます。将来の投資を考えるなら、そのような努力を重ねておくことも必要です。

 

また、一度不動産投資の実績を積んでいて、賃料収入を着実に増やしている人は、2件目以降の融資が受けやすくなります。

金融機関によって基準が異なる…複数あたることが必要

融資をどれだけ上手く活用できるかは、不動産投資の成功に大きく影響します。以前より融資姿勢が厳しくなっているとはいえ、金融機関はお金を貸して金利を得るのが仕事です。一定の基準をクリアしている物件・人には、積極的に融資したいと考えています。ポイントは、金融機関によって融資の基準が大きく異なるというところです。

 

そのため、複数の金融機関と交渉することも、有利な条件を引き出すために必要です。投資物件への融資は、「事業資金を借りる」という意識を持つことが大切なのです。

 

 

 

※本連載は、『ライフプランnavi』の記事を抜粋、一部改変したものです。