不動産投資は安定した家賃収入を得る手段ではありますが、購入・保有・売却等のタイミングによって、様々な税金が発生することも忘れてはなりません。今回は、不動産投資の際に必要となる税金について、概要を整理します。※本連載は、将来お金に困ることがないように、若いうちからできるライフプランニングに役立つ情報を紹介する「ライフプランnavi」の記事を抜粋、一部改変したものです。

不動産の購入・取得時にかかる税金の種類

不動産の購入・取得時にかかる税金には、次の3つがあります。

 

①印紙税

②登録免許税

③不動産取得税

 

それぞれの内容、税額、納税方法などを説明しましょう。なお、税額については、2000万円の新築ワンルームマンションを購入し、固定資産税評価額(後で説明します)が1000万円のモデルケースとします。


①印紙税

 

不動産取引に限ったものではなく、一定の課税文書に課税される税金です。不動産取引の場合は、「不動産の売買契約書」「金銭消費貸借契約書」などの契約書に対して課税されます。税額は、契約金額に応じて細かく定められています。たとえば、2000万円のワンルームマンションを購入した場合の印紙税額は、2万円です。

 

その他の詳細は、以下の国税局のWebサイト「印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで」でご確認ください。

 

なお、印紙税は、契約書に貼付する収入印紙の代金を払うことによって納税します。印紙税は、国税に該当しますので課税主体は国になります。

 

②登録免許税

 

住宅にかかる不動産を購入した場合には、自分のものであることを証明するために不動産の登記を行います。不動産の登記の際に課税されるのが登録免許税です。

 

不動産売買の場合の登録免許税は、固定資産税評価額を基準として計算され、土地はその2%(令和3年3月31日までの間に登記を受ける場合1.5%)です。建物は、居住用かそうでないかによって税率が異なり、投資用マンション(居住用ではない)の場合は2%になります。

 

マンションは土地(敷地権)と建物との割合によって、売買価格を按分して、それに応じた課税がされます。2000万円のワンルームマンション(固定資産税評価額1000万円)の場合、20万円弱になります。ただし、これは敷地権割合によって異なります。

 

なお、登録免許税は、現金もしくは収入印紙で納付をします。登録免許税も国税に該当しますので、課税主体は国になります。

 

③不動産取得税

 

不動産取得税は、不動産の取得に課税される地方税(都道府県税)です。税額の求め方は、固定資産税評価額×税率です。税率は本来、土地、住宅ともに4%ですが、令和3年3月31日までに取得した土地、住宅の場合、3%とされています。2000万円のワンルームマンション(固定資産税評価額1000万円)の場合、30万円になります。

 

なお、新築の住宅を購入した場合は、不動産取得税の減免の特例があるので、実際は上記よりも安くなるケースも多くあるでしょう。ただし、特例の適用条件や計算方法は複雑なので、ここでは割愛します。

 

なお、不動産取得税では、不動産購入後、半年から1年程度で購入した不動産の所在地の各都道府県から納税通知書が届き、それによって納付します。忘れたころにやってくるので注意が必要です。

 

税金以外に必要となる「各種手数料」とは?

 

ちなみに、不動産の売買の際には、税金以外にも、不動産会社に支払う手数料(一般的には売買代金の3%)、融資を受けるのであれば、融資手数料、司法書士に支払う登記報酬などの各種手数料も必要です。不動産は取引金額が大きいので、それらの合計額も意外と馬鹿にならない金額になることをおぼえておきましょう。

不動産の保有時にかかる税金の種類

不動産を保有している期間中、何もしなくても課税されるのが、下記の2種類の税金です。

 

①固定資産税

②都市計画税

 

それぞれの概要を見ていきましょう。

 

①固定資産税

 

固定資産税とは、不動産や機械などの固定資産に課せられる税金になります。毎年1月1日時点で、課税対象となる土地や建物などの資産を所有している人に課せられる地方税です。課税額は、国が定めた「固定資産税評価額×1.4%」を基本として、自治体により多少の差があります。

 

この固定資産税をはじめ、登録免許税や不動産取得税でも「固定資産税評価額」が課税標準(税額計算の基準)として用いられます。固定資産税評価額がいくらなのかが、不動産投資に関するさまざまな課税において、重要なポイントになります。

 

では、その固定資産税評価額は、誰がどのように決めているのでしょうか?

 

まず、地方税法の規定によって、土地と家屋などをどう評価するのかを国が定めた「固定資産評価基準」という基準があります。その「固定資産評価基準」を基準にしながら、各市町村(東京は23区)が、不動産物件ひとつひとつをすべて調べています。そこで、不動産の場所や形状、築年数なども加味しながら個別に決定しているのが、固定資産税評価額というわけです。

 

一般的には、土地の場合は、時価の約70%、新築家屋の場合は請負工事金額の約50~60%だといわれていますが、上述のように個別の状況によって差があります。

 

本記事では、2000万円のマンションの個性資産税評価額を50%(1000万円)と仮定しています。すると、固定資産税は28万円になります。なお、固定資産税評価額は、原則的に3年ごとに評価替えがなされます。

 

②都市計画税

 

都市計画税とは、「市街化区城」に土地や建物を所有する方に課される税金で、その課税額は「固定資産税課税標準額×0.3%」を上限として、自治体が定めた金額となります。2000万円のワンルームマンション(固定資産税評価額1000万円)の場合は、最高3万円です。

 

なお、固定資産税、都市計画税にも、軽減の特例措置がありますが、詳細はここでは割愛します。

不動産の売却時にかかる税金の種類

不動産を売却した場合、売却で得た譲渡所得に対して、下記が課税されます。

 

①所得税

②住民税

 

ちなみに、不動産を売却した場合も売買契約書が必要になりますので、印紙税も必要です。譲渡所得は、以下の計算式で求めます。

 

譲渡所得=不動産売却代金-取得費(購入代金から減価償却費を引いたもの)-売却費用(仲介業者に支払う手数料など)

 

たとえば、2000万円のマンションを25年後に1500万円で売った場合、これだけ見ると、マイナス500万円ですから、譲渡所得は発生しないように見えます。しかし、不動産の取得費は、購入代金から、売却時までに支払った減価償却費を差し引かなければなりせん(減価償却の詳細は、別記事で解説しているのでここでは割愛します)。

 

仮に、25年間で支払った減価償却費が1000万円だとした場合、売却時のマンションの価値は、「2000万円-1000万円=1000万円」として評価されます。そこで、500万円の譲渡所得が生じることになります(簡略化のため、手数料等は無視しています)。

 

なお、譲渡所得の税率は、売却した不動産の保有していた年数によって異なります。

 

長期譲渡所得(5年超での売却):20.315%

短期譲渡所得(5年以内の売却):39.63%

 

(税額の計算は、所得税・住宅民税・復興特別税の合計となります。国税庁、「No.3208 長期譲渡所得の税額の計算」「No.3211 短期譲渡所得の税額の計算」)

 

なお、年数計算は、実際の保有期間ではなく、1月1日時点を基準に計算されます。また、譲渡所得は、確定申告により納税します。

不動産の相続時にかかる「相続税」

不動産を保有している方に万が一のことがあり、相続が発生すると相続税がかかる場合があります。相続税というと、一部の富裕層が納める税金というイメージがあるかもしれません。しかし、相続税は2015年に基礎控除の引下げがあって以降、対象者が増えています。

 

国税庁によると、平成29年中に亡くなられた方(被相続人数)は約134万人、このうち相続税の課税対象となった被相続人数は約11万2000人で、課税割合は8.3%となっています(国税庁「平成29年分の相続税の申告状況について」)。

 

なお、相続税については、いろいろ複雑な要素があるので、今回の記事内ではお伝えしきれないため、別の機会に詳しく解説したいと思います。

税金は避けられないコスト…しっかり概要を理解して

不動産投資を思い立った際、投資金額や融資、家賃収入については気が回るものの、課税される税金について事細かく調べる人は案外少ないものです。

 

しかし、税金はぜったいに避けられないコストであり、投資結果を左右する重要な要素です。不動産投資の際は、ぜひ税金についてもしっかりと押さえておいてください。

 

 

※本連載は、『ライフプランnavi』の記事を抜粋、一部改変したものです。

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