医学部受験…合否は「親の動き」が決める?

1浪、2浪は当たり前、浪人生活4~5年目ということも、ザラに起こる医学部受験。現役で合格できる生徒は限られていますから、今年度も多くの生徒が「予備校生」として受験生活を再スタートしました。もちろん、本人のがんばりに勝るものはないですが、一方で「親」が受験の結果を左右しているのも、明確な事実なのです。医学部受験サクセスガイド『集中メディカ』を運営する、医学部受験専門予備校メディカ代表・亀井孝祥氏が解説します。

選択が多すぎて「選択できない」時代だから…

突然ですが、「選択回避の法則」という言葉をご存じですか? コロンビア大学ビジネススクール教授のシーナ・アイエンガー氏が提唱した有名な法則ですから、お聞きになったことがある方も多いでしょう。「受験とどのような関係が?」と思われるかもしれませんが、まずは簡単にご説明します。

 

アイエンガー氏は、「選択肢の増減」が消費にどのような影響を与えるのか調査するため、スーパーマーケットの店員に扮し、2回にわけてジャムの試食サービスを提供しました。

 

1回目は6種類のジャムを用意し、2回目は24種類に増やして試食を行いました。その際、ジャムを手にした人に1ドル引きのクーポンを渡し、商品がどれほど購入されたのかを調べたのです。

 

結果はどうだったのでしょうか。結論から述べると、ジャムが多く売れたのは「前者」、つまり選択肢が少ないほうでした。6種類の試食に立ち寄った客のうち、ジャムを購入したのは3割ほどでした。一方で、24種類の試食の場合は、その10分の1、わずか3%の人しか購入しなかったことが判明したのです。

 

この調査によって、多すぎる選択肢を提供された人々は、「選ばない」という、一番消極的な決断をしていることが判明しました。この調査結果は、受験対策、特に医学部受験の現状とも結び付く部分があります。

ネットが普及した現代、適切な情報収集の方法とは?

情報化が進み、正しい選択をするのが難しい時代になりました。

 

本屋に受験対策本が並ぶだけの時代は終わり、勉強の形態は多様化しました。YouTubeで「受験対策」と一言検索すれば、科目ごとに、大量の授業動画が出てきます。スマホアプリも日々リリースされ、おびただしい量の情報がネットに蔓延しています。

 

私たち親世代のころを考えると、信じられないような世の中になりました。自分の学生時代を思い出し、「こんなに簡単に学習教材や受験情報が手に入るのか……」と羨ましく思う方もいるかもしれません。

 

もしくは、「これだけ手軽に勉強できるのだから、親が面倒をみる必要はないだろう」と考える人もいることでしょう。しかし、ジャムの試食サービスのように、「多すぎる選択肢」は受験生を余計に悩ませる要因になるようです。

 

勉強をする前に「どれにしよう……」と悩むことに頭を使いすぎて、結局、我が子が「何も選ばない」という選択をしているとしたら、恐ろしくありませんか?

 

親御さんには理解しがたい現象かもしれません。しかし、情報が多すぎてスタートする前に混乱をきたし、せっかくの「医師になる道」を自ら閉ざしてしまう生徒は、確実に増えています。加えて、子どもたちを取り巻く問題に気づいていない親御さんも多いように感じています。

 

令和時代、親はどうやって子どもに接するか?
令和時代、親はどうやって子どもに接するか?

やみくもに勉強させても意味がない

もし、「ウチの子はできが悪いから、アプリでもなんでも、とにかく勉強させないと」と考えているのなら、その思考は今すぐ捨てるべきでしょう。なぜなら、受験の合否を左右するのは、勉強量ではないからです。

 

受験業界の現況は、毎年めまぐるしく変化しています。一般的に、医学部の試験は、英国数理などの科目に加え、小論文と面接で構成されています。膨大な量の知識はさることながら、小論文などは、経験やテクニックが求められる作業です。

 

そもそも知識が足らなかった、論理の組みたて方に問題がある、基礎はあるが応用するスキルがない……。惜しくも受験に失敗し、浪人という道を選んだ生徒には、間違いなく科目ごとの「穴」があります。

 

受験成功への効率的な道は、一つずつ丁寧に「穴」を埋めていくこと、これに尽きます。そして、生徒ごとの弱みを減らすことが予備校の最たる役割といえます。しかし、まずはその「穴」を見る機会が無ければ、何も始められません。

 

特に医学部受験の場合、一般的な大学受験とは勉強する期間のケタが違います。個別か/クラス授業か/復習を重視するのか/応用力を鍛えるのかなど、生徒に合った受験生活を提供できるかが学力向上を如実に左右させます。裏を返せば、適切な環境を整えない限り、何年経っても「穴」が埋まらない可能性だってあるのです。

 

となると、親にできることは一つだけ。子どもたちが余計なストレスに苛まれることなく、「自分は今これを学ぶべき」と自信を持って勉強に取り組める環境を用意してあげることです。

 

それは即ち「我が子を、どこの医学部予備校に通わせるか?」という選択を、親の目でしっかりと決めてあげることです。では、どのような視点で医学部予備校を選べばいいのでしょうか?

我が子の「将来を見据えること」も親の役目

受験生の未来について考えてみましょう。無事医学部生になったあとの話です。

 

卒業後、多くの生徒は研修医になります。先輩医師から押し付けられる雑務をこなしながら、自分の医学的知識も日々研鑽しなければならない。一方で、社会的責任の重さはどんどん増していく……。周知の事実ではありますが、研修医時代の生活は決して楽ではありません。こんなときに心の支えとなるのは、共に医学部合格を目指した、受験時代からの仲間たちです。

 

また、つらい研修医時代を終え、勤務医になり、行く末には開業を望んだとしましょう。もしくは大学教授への道を目指すかもしれません。いずれの選択にせよ、キャリアアップの際に重要になってくるのは「横のつながり」です。受験期から「医師を目指す」という大きな志をもった仲間やライバルたちに囲まれることで、合格の先にある大きな目標を心の中に描くことができます。苦しい受験勉強をともにした体験は、一生の固い絆を結ぶきっかけになるのです。

 

どのような医学部予備校なら、医師となった将来にも、お互い助け合い、磨きあえる仲間と出会えるのでしょうか。これはぜひ、多くの見学会などにおもむき、自らの目で実際に見て判断してもらいたいと思います。

 

選択肢がたくさんあると「選べなくなる」という実験結果を先ほど紹介しましたが、医学部予備校の選択に関しても、同じことがいえます。とはいえ、合格のためには「選ばなければ」なりません。ここのエネルギーを、ぜひ親御さんが使っていただければと思います。親がたくさん動き、子の合格のために、最良の学習環境を整えてあげてください。

 

◆「医学部合格」という目先のゴールではなく、さらに先を見る

 

受験をするのは生徒、受験勉強をサポートするのが予備校とするならば、「医学部合格」という目下のゴールだけに囚われることなく、将来を見据えた人生設計を練ることが、人生の先輩である親の役割ではないでしょうか。

 

適切な環境を整え、我が子の行く末を見守る役割への「気づき」が、何よりも大切です。

 

 

亀井 孝祥

医学部受験専門予備校メディカ 代表

 

医学部受験専門予備校メディカ 代表
数学講師 

愛知・東海高校から東京理科大学へ。塾講師を経て医学部受験予備校YMSにて数学科主任、教学部長など9年務めたあと、姉妹校設立のため独立。姉妹校提携解消後、医学部受験専門予備校メディカを設立。現在に至る。

著者紹介

連載受験のプロが徹底解説!医学部「絶対合格」の秘訣

本記事は、医学部受験サクセスガイド『集中メディカ』ホームページのコラムを抜粋、一部改変したものです。