「未完の都市」ロサンゼルスに秘められた可能性
連載第2回目で、首都圏を中心に展開してきた株式会社三栄建設設計が、2014年にロサンゼルスに進出した理由を、同社ロサンゼルス支社の近藤晃弘氏は「将来性、成長性に注目した際、世界的にみても、ロサンゼルスは非常に魅力的なマーケットであると考えたのです」と語った。
ロサンゼルス不動産の投資を検討するにあたり、地域としての魅力をさらに追及してみよう。
ロサンゼルスの魅力は「未完の都市であること」と近藤氏はいう。400万人の人口を抱える大都市が未完成とは、どういう意味なのだろうか。
「ロサンゼルスには高層ビル群もあれば、一戸数億円もする高級住宅地もある一方で、都心から車で30分ほどのところには3,000万~4,000万円でコンドミニアムが買えるエリアがあり、シーサイドにはリゾートもある。ロサンゼルスは、投資対象が実に豊富です。すべての投資家のニーズに応えることができるといっても過言ではありません。
このようなことが可能なのは、地理的なアドバンテージがあるからです。ロサンゼルスには大きな川がありません。ニューヨークやサンフランシスコなど、アメリカでも投資家から人気の都市は、地域が川で分断されており、開発の発展性が限られています。一方、ロサンゼルスには、開発地域を妨げるものがなく、市街地は日常ベースで拡大しています。
一方でロサンゼルスは、公共交通、特に鉄道網は1960年ごろに一度全廃してしまったため、非常に脆弱です。激しくなる一方の自動車渋滞の解決策として、1990年代から、ライトレールや地下鉄などの整備が進められていますが、まだその途中なのです。これだけの大都市でありながら、都市機能はまだまだ発展途上で、これから開発されていく……先進国で、大きな成長性、将来性が担保された大都市は、ロサンゼルス以外にはないのではないでしょうか」
またロサンゼルスは、経済の面でも評価が高い。ハリウッドを中心とした映画産業のほか精密機械工業、石油工業、航空機や船舶など、さまざまな製造業が発展し、米国で第2位の工業地帯を形成している。ハイテク産業や軍需産業なども加わり、産業構造の厚みが経済の強みとなっている。
さらにロサンゼルスの沿岸部一帯に広がる「シリコンビーチ」は、シリコンバレーやニューヨークに次ぐスタートアップ企業の集積地として知られ、将来有望なテクノロジー系の企業が拠点を置いている。このようなスタートアップの下支えになっているのが、名門大学の存在だ。ロサンゼルスは、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)、南カリフォルニア大学(USC)など、世界的に高い評価を受けている大学を擁する。
このような背景から、ロサンゼルスはたびたび「不動産投資に適した都市」に選出されている。ロンドンに本拠地を構えるシュローダー・インベストメント・マネジメントは、『シュローダー・グローバル・シティーズ30・インデックス』で、「世界で最も不動産投資に適した都市」として、ロサンゼルスを選出した。シュローダー社は、ロサンゼルスは働く場所としても暮らす場所しても魅力的であり、1つの産業だけに依存していないことが経済的な強みだと指摘している。
2028年五輪開催で、ロサンゼルスはさらに飛躍する
不動産投資において、「世界一」とまでいわれるロサンゼルスだが、成長スピードの加速が期待されている。キーワードは、オリンピックだ。
「2017年9月にペルーのリマで開催されたオリンピック総会で、2028年のオリンピック開催地がロサンゼルスに決定しました。これまでも交通インフラの整備を始めとした、さまざまなプロジェクトが進行してきましたが、その流れは加速するでしょう。それに伴い、いまでも上昇傾向にあるロサンゼルスの不動産マーケットは、今後も順調に成長していくのではないでしょうか」(近藤氏)
2013年に東京でのオリンピックが決まってから、国内の不動産市場が右肩上がりだったのは、誰もが実感しているところだろう。もちろんそれは、さまざまな要因が重なり合った結果ではあるが、五輪特需が不動産市場を牽引していたことは間違いない。ロサンゼルスにおいても、五輪を見越してインフラ整備が進み、東京のように需要増加と地価上昇が期待されている。東京の次を探すのであれば、「ロサンゼルス」は最有力候補の1つだといえるのだ。
最終回となる次回は、三栄建築設計が手掛けたロサンゼルスでのプロジェクトを具体的に見ていく。