年月が経つほど「希少価値」が増していくコイン
金貨といえば、金の相場によって価格が上下すると考えている人が多いのではないでしょうか。確かに地金タイプ、たとえば純金とか22金のコインは金相場によって価格が変動します。
しかし実は、鑑定会社によって鑑定が行われ、グレードが付与されたものは、金相場の変動による影響をほとんど受けません。人気の高いコインは少しでも価格が下がるとすぐに買いが入るので、価格が維持されるのです。
しかも、年を経るごとに行方がわからなくなってしまうコインがあるので、枚数は着実に減っていきます。少なくとも増えることはありません。ですから、長く保有すればするほど希少価値が増していくわけです。
金の地金であれば、年数が経ったからといっても希少価値は生まれません。金現物としての価値が続くだけです。しかし、コインは一度プレスしてしまえば、同じコインは二度とプレスされることがありません。一度限りであるため、年月が経つほどに希少価値が増していくのです。
コインは、中古車とは異なります。誰か一人が高い値段を付けると、その値段が市場の値段になってしまう世界です。誰かが欲しいと言ったとき、その人の付ける値段が公の値段になるのです。中古車のように同じ車種で同じ年式のものが多数存在し、年を経るごとに価値が低くなっていく種類のものとは、まったく異なるのです。しかも、徐々にオークションに出品される機会が減っていくので、値上がりするしかありません。
富裕層の人は、オークションカタログに2枚のレアコインが掲載されているとすれば、どちらかが必ず欲しいという感覚で参加してきます。ですから、下がる要因がないのです。下がる要因があるとすれば「早く処分したい」という人が出てきたときで、それは、お金が必要になったということを意味します。しかし、コインを保有しているのは富裕層ばかりであるため、そのようなことは少ないのが実情です。
コインを売却する場合は「1月」がいい!?
筆者は今、「ファーストスパウズ」シリーズのコインをメインに販売しています。これは、アメリカの歴代大統領の夫人の肖像をデザインしたものですが、2007年に最初に発行されて、すでに8年間、続いています。
最初の年である2007年には、1万5000枚ほどプレスされました。それでは枚数が多すぎるということになり、翌年以降は、多くても5000枚か6000枚、少ない場合には2000枚程度しかプレスされなくなりました。そうなると、まったくオークションに出てきません。
2007年に1万5000枚がプレスされたものでも、あるグレードのものは2カ月間オークションにまったく出てこない、つまり買えないということが少なくありません。オークションから姿を消したということは、誰かが保有したままになっているということですが、売買されないので価格は下がりません。その後に出てきたとしても、希少性が出ますから、高値で買う人が現れます。結局、値崩れしないということになるのです。
ただ、同じファーストスパウズシリーズでも、これまで8年間、発行されてきた中で非常に値上がりしたものもあれば、そうでないものもあります。それは、大統領夫人自身の人気やデザイン、発行枚数などによって決まります。といっても、値下がりしているものは一つもありません。
発行枚数が2000枚のものもあれば1万5000枚のものもあるので、約10倍の差がありますし、過去に買い占められてしまったものはオークションでも出てこないので相当に値段が上がっています。
発行形態も少しずつ変わっています。これまでは毎年4種類を同時に出していましたが、2015年は2種類、1種類、1種類と時間差をつけて発行しています。そうすると一度に4種類を出すよりも、価格が下がりにくくなるという効果があります。このように発行元も、価格が維持されるように常に工夫を重ねています。
季節で言うと1月はとてもよく売れます。みんながお金を使いたがっているのです。6月などは中だるみの時期ですが、8月に大きなオークションがあるのでそこでまた盛り上がります。売却する場合は1月がよいのですが、売り急いで6月などに売ると価格が下がってしまうこともあるのには注意が必要です。