投資の世界に「無防備」な状態で飛び込むのは危険
私は資産運用のコンサルタントをしていることから、多くの個人投資家と接する機会があります。日々の業務を通じて常に感じているのは、投資で失敗している人がいかに多いかということです。
どんな人も、苦労して働いて得た資産を守るために投資をするのですが、10人のうち9人以上が、資産を守るどころか減らしています。中には、詐欺まがいの商品に騙され、資産のほとんどを失う人さえいるのが実情です。
なぜ、このようなことになってしまうのでしょうか。
最も大きな原因は、投資の"入口"から"出口"までのプランがまったくできていないことです。資産運用の知識や方法というのは、学校では教えてくれません。最初は誰もが初心者です。にもかかわらず、ほとんど勉強もせず、知識がないままに、いきなり飛び込んでしまうのです。
これは、まったく泳げない人がいきなりアマゾン川に飛び込むようなものです。アマゾン川には肉食魚のピラニアが餌を求めて泳ぎ回っています。無防備な人間が飛び込んで溺れかけていたら、すぐに餌食にされてしまうでしょう。
投資の世界も同様です。世界中の悪人がピラニアのように、カモを探してうごめいています。そんなところに無防備な素人が資金を投じればひとたまりもなく、すぐに餌食になってしまうことでしょう。百戦錬磨の金融玄人に素人が勝てるはずがないのです。
「身の丈に合わない投資はしない」という感覚が大切
たとえば、しばらく前から「サラリーマン大家」がブームになり、不動産投資を始める人が増えました。サラリーマンやOLでも簡単に始められる――書店へ行けばそんな本が数多く並んでいます。
確かに地価も不動産価格も下がりきっていたころなら、家賃収入でよい利回りが得られたかもしれません。
しかし、最近では土地、建築資材、人件費など不動産価格を構成するすべての要素が値上がり傾向にあり、物件価格も大幅に上昇してしまいました。利回りが2%に満たないケースもありますが、それでも投資だと思って、購入してしまう人が後を絶ちません。
利回り2%とは、何を意味するでしょうか。仮に物件価格が2000万円のワンルームマンションを購入したとしましょう。
マンションは管理費がかかりますし、ローンを利用して購入すれば金利負担も生じます。それら、もろもろの経費を除いた家賃収入が年間40万円得られれば、年間収益(40万円)÷投資金額(2000万円)で利回りは2%になります。
では、このまま家賃の金額が変わらなかったとして、いつになったら2000万円の投資金額が回収できるのでしょうか? 1年で得られる収益が2%ですから、これが100%になるには、単純計算で50年かかることになります。
結局、家賃収入が得られるのは実質的に51年目からになるわけです。効率のよい投資とはとてもいえません。不動産価格がどんどん上がっている時代であれば、家賃収入(インカムゲイン)は少なくても、値上がりした時点で売却して売却益(キャピタルゲイン)を狙う方法もありますが、この先、不動産価格がどうなるかは、プロでも正確な予測は難しいのです。
こんなケースもありました。今、何人かの知人がアメリカの不動産に投資していますが、そのメンバーには普通のサラリーマンもいます。その一人がネット銀行から500万円の投資資金を借りて不動産を買うというのです。
確かに筆者は彼に「親御さんが無金利でお金を貸してくれるのであれば、借りて投資をする方法もある」とはアドバイスしました。
借金をしてまで、身の丈に合わない投資をしようというのはナンセンスです。私はそう彼に告げましたが、彼は筆者の言ったことをまったく理解しませんでした。失敗する人はこういう感覚なのです。不動産投資に限らず、このような例は後を絶ちません。