さまざまな要素で乱高下する株価
株式は、投資対象として古くから活用されてきました。企業の業績は物価が上がれば改善する傾向にありますから、インフレに強い資産として、物価上昇に負けない運用成果が期待できることで知られています。
しかし、株式の値動きは決して小さくありません。個別企業の株式であれば、その企業の業績などに株価が大きく左右されるのはもちろん、経済情勢や政治によっても大きく価格変動することがあります。
日本でも政権交代などで、株式相場のトレンドが逆転することがあります。最近でいえば、アベノミクスがよい例です。第二次安倍政権が誕生する前、日経平均株価は9000円前後で低迷していました。
ところが、2012年12月に政権交代すると、その後の1年間で日経平均株価は1万6000円まで上昇したのです。これだけ短期間に上昇することもあれば、逆に急落することもあります。相場というのは上昇よりも下落するときのほうが急であることが常ですから、もっと短期間で一気に値下がりしてしまうリスクをはらんでいるのです。
「下がったら売ればいい」と考える人もいるかもしれませんが、そう簡単ではありません。人間の心理というものは、損失を認めたくありませんから、相場が下がると、「もう少し待てば戻るのではないか」と考えてしまいます。そうやって損切りができないうちにどんどん下がり、ますます売却できなくなってしまうのです。
個人ではコントロールできない要素が多すぎる株式市場
また、株式相場には世界中の動向が影響を与えます。遠く離れた海外の小さな島の出来事があなたの資産を目減りさせる可能性もあるのです。
その理由は、世界がネットでつながっている現在、ニュースは瞬く間に世界中を駆け巡ってしまうからです。こんな例があります。記憶に残っている人も多いと思いますが、欧州のキプロスという小さな国で「キプロスショック」が起きました。
この国の正式名称はキプロス共和国。地中海の東に位置する小さな島国です。2013年の3月16日に行われたユーロ圏の財務相会合で、金融危機に陥ったキプロスへの支援策が話し合われました。
それ自体はいいニュースのように思えますが、支援の代わりにキプロス国内の全預金に最大9.9%の課税を導入することになったのです。大ざっぱにいえば、預金をしているだけで1割が税金として徴収されてしまうわけですから、大混乱に陥りました。預金者の多くが預金を引き出そうとATMへ殺到しました。
結果、ATMに準備されていた現金は底をつき、お金をおろせない人々の映像が世界中を駆け巡りました。そして、世界中の株式相場が影響を受けたのです。小さな島国が世界の株価や為替を大きく動かしたのでした。
このように株式相場には、個人投資家の力ではどうにもならない要素が数多くあります。自分でコントロールできるのは、買う時期と金額くらいです。あとは工夫の余地がありません。これが株式投資の最も大きなデメリットです。
そんな投資対象に大事な資産を託してよいのでしょうか。リスク資産であると割り切って限定的に投資するのならともかく、資産防衛という視点でいえば株式は不向きと言わざるを得ません。