そろそろこの話も飽きている人が多いかもしれないが、「老後の資金は2000万円が必要」とも読める金融庁の資産形成を促す報告書が話題となった。「投資信託にお金を流したいのではないか?」などという世間の声もあるが、報告書の内容やメディアの報道のあり方はともかく、多くの人にとって老後の資金が足りていないことは、紛れもない事実。そこで今回は、資産形成を20代、30代の早い時期から始めるべき理由とそのメリットについて解説した記事を紹介する。

「時間」は資産形成において強力な武器となる

高齢化社会が進む日本では、年金制度や社会保障制度への不安があり、老後の生活資金に不安を感じる人が増えています。また、終身雇用制度がなくなった現在では、ライフプランと資産形成について自ら考えながら働く必要もあります。そうしたことから関心が高まっているのが「資産形成」に関する知識です。

 

資産形成と聞くと、まとまった資産を保有している人や高所得者が行うものというイメージを持つ人もいるのではないでしょうか。

 

20代、30代の人の多くは「まだ自分には早い」と先送りにしているようです。日本証券業協会のリサーチによると、日本の25歳~29歳で株式を保有している人の割合は7.4%となっています(平成30年度『証券投資に関する全国調査(個人調査)』より)。資産形成にはいくつかの方法があるため、株式投資だけで計ることはできませんが、このデータから20代の投資参加の少なさをうかがい知ることができます。

 

しかし、一般的に「資産形成はなるべく早く始めるべき」と言われます。それはなぜなのでしょうか。早く始めることのメリットと、若いうちから上手に行う方法について考えてみましょう。

 

資産形成を早くから始めるメリットは、「時間を味方につけることができる」ということにあります。少ない資金であっても長い年月をかけることで、着実に資産を増やす可能性が高まるからです。

 

投資には「複利」という考え方があります。投資をして元本が増えると、さらにその増えた状態で再投資することができるため、より大きなリターンを得ることができるということです。

 

例えば100万円を利回り5%で投資すると、1年後には105万円(税引前)となります。さらにその105万円を利回り5%で投資するということを10年間繰り返すと、10年後には約163万円(税引前)になります。そして投資期間が20年、30年と長くなるほど、この複利によるリターンは増えるため、早くから投資に参加することは有効であり、資産形成に役立つと考えられるのです。

「ロボアドバイザー」の登場で少額投資がやりやすく

時間を味方につけることで大きなリターンを得ることができることは理解いただけたでしょうか。だからこそ、20代、30代といった世代であっても、可能な範囲の金額で資産運用をおすすめしています。初めは少額な資金であっても、資産形成に大いに役立つからです。

 

それでは、少額で始められる資産形成にはどのような種類があるのでしょうか。ひとつは預金です。堅実な人であれば毎月一定額を銀行に預金している人もいるでしょう。また、定期預金を選択することで、一定の時期までお金を引き出すことができず、余計な出費を防ぐことができます。

 

ただし、銀行への預金はリスクが最小である分、利息はほとんど期待することができません。定期預金が0.02%~0.025%の利率で、「増える」ことは期待できません。しかもインフレが進む現在では貯蓄したお金の価値は相対的に下がっていくため、資産が「減る」ことになってしまうとも考えられます。

 

そこで資産形成には資産を「運用する」意識が必要となってくるでしょう。会社が発行する借金の借用書である「社債」や、外国の貨幣に変換して預金を行う「外貨預金」といった方法であれば、少額から始めることができます。

 

また、最近では「ロボアドバイザー」という自動で運用をしてくれるAIサービスも生まれています。月額1万円から始められるサービスもあり、若年層を中心に利用する人が増えているようです。「AI」とか「ロボ」とか、未来っぽいキャッチーな表現もウケているのかもしれません。

 

「自動でお任せでできる」という点も、今の若年層に合っているのでしょう。実際、投資金額が少額であるにもかかわらず、自らで分析し最適なポートフォリオを構築することは、現実的ではありません。

 

ロボアドバイザーが優れている点としては、簡単な質問に答えるだけでリスクプロファイルを推定し、自動的にリバランスを行いながら、世界中のあらゆる資産クラスを購入してくれることです。

 

ロボアドバイザーを利用することで、初心者であっても自身のリスク許容度を加味しながら、ある程度の利回りを期待して投資に参加することができます(ロボアドバイザーが万全というわけではありませんので、リスクはあります)。このように新しい仕組みも合わさって、少額投資へのハードルはより下がってきています。

年収が上がっても「手元に残る金額」はそう増えません

若い世代の人には、収入が増えたら資産形成を始めようと考えている人も多いようです。しかし、実は収入が増えたからといって、資産形成のために投下できる資金が増えるかというと、必ずしもそうではありません。

 

累進課税である日本では、収入が増えれば増えるほど、税金で徴収される額は大きくなるため、年収が上がったとしても手元に残る金額がそれほど増えないと感じる人が多いようです。一方で、結婚・出産・子供の学費など、家計の出費は増え続けるため、20代のときのほうが自由に使える金額が大きかったという30代の声を聞くこともあります。

 

自分の年収はまだそれほど高くないからと考えるのではなく、さまざまなライフイベントが始まる前の時期だからこそ、資産運用にお金を投下することができると考えるべきです。

 

資産形成を早く始めることのメリットは、時間を味方につけることで効果的な資産運用を行うことができることです。そして資産運用にあたっては、少額からでもスタートすることができ、それなりのリターンも期待することができます。

 

早い時期にスタートすることで、これから訪れるライフイベントや老後に必要な生活資金への不安を軽減することができる……という考え方です。なかなか堅実ではないでしょうか。

 

 

※本連載は、『ライフプランnavi』の記事を抜粋、一部改変したものです。

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