先ごろ、金融庁は資産形成を促す報告書をまとめ、「95歳まで生きるには夫婦で約2000万円の金融資産の取り崩しが必要になる」との試算を示しました。今後、保有資産の運用など“自助”の取り組みが一層求められることになります。そこで今回は、税の優遇を受けながら老後資金を確保できる「iDeCo」について、わかりやすく書かれた記事を紹介します。※本連載は、将来お金に困ることがないように、若いうちからできるライフプランニングに役立つ情報を紹介する「ライフプランnavi」の記事を抜粋、一部改変したものです。

現在の公的年金では豊かな老後を送るのは不可能⁉

iDeCoとは個人型確定拠出年金の愛称で、「老後資金をお得に貯められる、国がつくってくれた制度」です。iDeCoでは、自分で自分のための年金をつくります。なぜiDeCo制度が設けられたかというと、現在の公的年金(国民年金、厚生年金、共済年金)だけでは豊かな老後生活を送れないことが懸念されているためです。

 

公益財団法人生命保険文化センター「平成28年度 生活保障に関する調査」によると、ゆとりある老後の生活を送るために必要なお金は毎月34.9万円とのこと。そのうち、老後の日常生活にかかる最低費用は毎月22.0万円で、ゆとりのためには12.9万円の上乗せが必要になります。

 

そのため、個人年金保険を利用して、できる限りゆとりを持たせようとしている方も多いと思いますが、老後資金を貯めるのであれば圧倒的にiDeCoの利用をおすすめします。なぜiDeCoの利用をおすすめするかについては、以下でご説明します。

iDeCo最大の魅力は「税の優遇制度」を活用できること

iDeCoには、さまざまなメリットがありますが、主なものを4つご紹介します。

 

①iDeCoの掛け金は全額所得控除の対象になる

iDeCoの掛け金は全額所得控除の対象になります。つまり年末調整や確定申告をすると支払った税金の一部が戻ってくるのです。例えば年収500万円のサラリーマンが月2万円iDeCoを利用した場合、年間で4万8,000円の税金が軽減されます。

 

②iDeCoで利益が出た分は非課税

iDeCoで運用して出た利益は、全額非課税になります。通常株式や投資信託で運用した場合、現在だと20.315%の税金がかかることを考えると、かなりお得感があります。

 

③iDeCoで貯めた資金を実際に受け取るときの税制がお得

実際にiDeCoで貯めたお金を受け取るときの税制もかなり優遇されています。iDeCoで貯めた資金の受け取り方は、「一括」「分割(年金方式)」「一括+分割(年金方式)」の3種類から選べます。一括の場合は、退職所得控除が適用され、分割(年金方式)でも公的年金等控除が適用されます。どちらもかなり優遇された税金の制度ですので、ぜひ活用したいところです。

 

④少額(月5,000円)から始められる

少額から始められることもメリットです。毎月5,000円からと無理なく始めることができ、運用に慣れたり、家計に余裕ができたら、少しずつ増額することができます。

長期運用ゆえに「換金性が低い」というデメリットも

メリットの多いiDeCoですが、当然デメリットもあります。主なデメリットは以下の3つです。

 

①60歳になるまでお金を引き出すことができない

iDeCoは原則60歳になるまでお金を引き出すことができません。お金を引き出せないからこそ、余計な出費をせず、しっかりと運用・貯蓄できるという見方もできますが、いざというときの換金性の低さは大きなデメリットだと言えます。

 

②掛け金の上限金額が低い

掛け金の上限が低いこともiDeCoのデメリットです。会社員の場合、月に最大2万3,000円しか積み立てることができません(企業年金のある会社に勤めていると更に少なくなります)。しかし、無理のない範囲で、コツコツと老後資金を貯めたい方にとっては、気にするほどのことではないかもしれません。

 

③手数料がかかる

iDeCoの利用には手数料がかかります。口座開設や毎月の運用維持費用かかります。月々の維持費用はわずかであっても、60歳までの長期運用であることを考えれば、無視できません。口座維持にかかる費用は、金融機関によって異なりますので、口座開設の際には手数料も意識するとよいでしょう。

iDeCoの商品で「投資信託」おすすめする理由

iDeCoでは、さまざまな商品で資産を運用することができます。代表的なものが、投資信託と定期預金です。定期預金は元本割れがないのはメリットですが、現在の超低金利では、毎月の口座維持手数料を考えるとほとんど利益が出ないので、おすすめの運用商品は投資信託です。

 

iDeCoで運用できる投資信託は、購入時の手数料が無料で、信託報酬の低い商品も多く、運用にかかるコストを抑えることができます。投資信託の積立運用は、商品にもよりますが10年以上の長期で行えば元本割れする可能性を低くできるでしょう。コストを抑えた投資信託でしっかり利益を確保しましょう。

金融機関ごとに「手数料や扱う商品」が大きく異なる

メリットの多いiDeCo。興味はあるものの、どうやって始めていいのか分からないという方も多いと思いますが、iDeCoの始め方はとても簡単です。

 

まずiDeCoを取り扱っている金融機関を探します。このときのポイントは、どこの金融機関も同じだと思わないことです。手数料や扱っている商品が大きく異なりますので金融機関選びは慎重に行いましょう。

 

iDeCoを始める金融機関が決まったら申込書を取り寄せます。申込書の中に、「事業所登録申請書兼第二号加入者に係る事業主の証明書」という書類があるので、お勤め先に提出し記入・捺印してもらいます。それを申込必要書類と同封して返送するだけです。運用が始まると毎月指定した口座からお金が引き落とされます。郵送で手続きができるので手軽に始めることができます。

 

iDeCoは手軽に始められるうえ、掛け金の上限も定められており、初心者にうってつけの資産運用法だと言えます。まずはiDeCoを老後の資金づくりに活用し、そこで資産運用の十分な知識や知見が得られたら、他の運用方法を検討するものいいかもしれません。

 

 

 

※本連載は、将来お金に困ることがないように、若いうちからできるライフプランニングに役立つ情報を紹介する「ライフプランnavi」の記事を抜粋、一部改変したものです。