昨今話題の収益アパートの施工不良問題や想定以上のスピードで進む建物の経年劣化、そして巨大地震発生への懸念など、物件を所有するオーナーの心配は尽きない。果たして、真の安心・安全をもたらす「優良住宅づくり」は可能なのか? 本企画では、木造建築の技術力に定評があるナイスグループのプロフェッショナルたちが、オーナーの様々な不安を払拭する「超優良物件」の建て方を解説する。第2回は、ナイス株式会社住宅事業本部パワーホーム特販事業部部長・鈴木芳郎氏に、「分譲一戸建て住宅仕様の『賃貸物件』が最強な理由」を伺った。

木造賃貸住宅の「空室率」を下げるには?

「土地活用の一環としてアパートを建てたものの、入居者付けに苦労している」「せっかく入った入居者が、すぐに退去してしまうことが多く、安定的な経営ができない」といった悩みを抱える賃貸物件オーナー様は少なくないと思いますが、私たちナイス株式会社パワーホーム特販事業部では、「パワーホームプラス」という木造賃貸住宅によって、このようなオーナー様の課題を解決するお手伝いをしております。

 

もともと、弊社では分譲住宅として「パワーホーム」を販売していました(連載第4回、第5回にて詳しく解説)。そのパワーホームの基本的な構造や設備、仕様を、賃貸物件に転用したのが、パワーホームプラスです。簡単にいえば、分譲の一戸建て住宅レベルの仕様、設備、性能を持った賃貸住宅です。またパワーホームプラスは、通常の1階と2階に別の住戸がある木造アパートではなく、1階2階をひとつの住戸にしたメゾネットタイプであることも、大きな特徴になっています。

 

ナイス株式会社 住宅事業本部特販事業部部長 鈴木芳郎氏
ナイス株式会社 住宅事業本部
パワーホーム特販事業部部長
鈴木芳郎氏

入居者になるべく長く住んでもらいたいと考えるのは、賃貸住宅オーナーなら当然です。しかし実際には契約更新の際に、あるいはそれを待たず、わずか数ヵ月で退去されてしまうことがあります。入居者も、ある程度の費用をかけて引っ越してきたのですから、できれば長く住みたいはずです。それなのに、退去してしまうのは、賃貸住宅に対して大きな不満が生じるためです。

 

入居者の木造の賃貸住宅に対する不満でもっとも多いのが「音」です。とくに、上下階から聞こえる足音などの生活音の問題です。そして2番目は収納の少なさ、次いでキッチンの狭さとなっています。逆にいうと、「音」「収納」「キッチン」の3大不満要素が生じないようにすれば、少なくとも建物の構造上の問題による退去は大部分が防げるのです。

 

前回ご説明したように、木造住宅でもしっかりとした設計・施工をすれば、RC造に負けないような耐久性、耐震性を持たせることは可能です。しかし、上下階で伝わる音の問題は、木材という軽い素材の性質上、どうしてもコンクリートにはかなわない面があります。そのため、特に木造アパートの1階は、上階からの音が響きやすくなり、それを気にする入居者が多くなります。

 

木造アパートの入居者のうち6割以上が2階以上の部屋を希望するというデータもあり、実際、築年が古くなるにつれて空室が増えるのは1階です。音の問題に加えて、防犯上の不安、洗濯物が干しにくいといった、主に女性目線で見た生活上の不満が生じるためです。2階は満室なのだけど、1階がなかなか埋まらなくて苦労するというアパートオーナー様の声は、実によく耳にします。

 

こうした入居者サイドの不満や不安を解消するため、私たちはパワーホームプラスをメゾネットタイプの住宅としてご提供しています。メゾネットタイプとは、集合住宅ながら、1階と2階が内階段でつながり、一戸建てのように利用できる住宅のことです。

 

一戸建てのようなメゾネットタイプ
一戸建てのようなメゾネットタイプ

 

3大不満要素を一気に解決するメゾネットタイプ

メゾネットタイプであるパワーホームプラスは、入居者にとってのメリットがたくさんあります。まず、1階2階がまとめて1つの世帯であるため、上下の騒音の問題が少ないこと。次に、屋根裏の空間をロフトとして活用し、収納スペースが大きく増えること。さらに、洗面所や浴室を2階に設置するため、プライバシーが確保しやすく、短い家事導線で2階のバルコニーに安心して洗濯物を干せることなどです。

 

また、これはメゾネットとは直接関係ありませんが、パワーホームプラスは、基本的に分譲住宅のパワーホームと同等の設備・仕様です。そのため、キッチンも対面式のシステムキッチン、バスルームも分譲と同様の追い炊き機能付きシステムバスなどが設けられています。

 

このように、入居者の退去につながりやすい「音」「収納」「キッチン」の3大不満要素をなくすことで、長期の入居が期待できることがオーナー様にとっての最大のメリットです。さらに、1階の空室も、構造上当然のことですが、発生しません。

 

ただし、メリットだけではありません。まず、建築費用は、最低価格クラスの木造アパートと比べると高くなります。また、小さく戸割りをし、部屋数を増やしているワンルームのアパートに比べれば、一定の敷地面積から取れる戸数が少なくなるため、初期の表面利回りはどうしても低くなります。

 

しかし、一般的にそのようなアパートは、新築時はともかく、年月が経つとどうしても空室率が上がります。また、前述の3大要素のような不満が生じるため、入居期間も短くなりがちで、そのための客付けの費用もかさみ、実質利回りは想定よりも低くなります。

 

一方、パワーホームプラスの販売を開始したのは5年ほど前からで、これまでに約300戸程度を建築しましたが、一度入居いただくと、入れ替えがない状況です。ひんぱんに客付けをしなければならない一般的なアパートと比較した際に、長い目で見れば実質利回りは上回るのではないかと思われます。

 

それに加えて、前回触れたように、長期優良住宅の基準を上回る耐久性、耐震性を持たせた設計であるパワーホームがベースになっているため、きちんとメンテナンスをすれば50年、60年と利用できる建物になっています

 

何十年という長期間にわたって、入居率の高い賃貸住宅を持ち続けることができる。これがパワーホームプラスを利用するオーナー様が実感される最大のメリットなのです。

 

分譲住宅と同等の設備・仕様を備える
分譲一戸建て住宅と同等の設備・仕様を備えるパワーホームプラス

 

取材・文/椎原よしき 撮影/永井浩 
※本インタビューは、2019年2月14日に収録したものです。

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