昨今話題の収益アパートの施工不良問題や想定以上のスピードで進む建物の経年劣化、そして巨大地震発生への懸念など、物件を所有するオーナーの心配は尽きない。果たして、真の安心・安全をもたらす「優良住宅づくり」は可能なのか? 本企画では、木造建築の技術力に定評があるナイスグループのプロフェッショナルたちが、オーナーの様々な不安を払拭する「超優良物件」の建て方を解説する。第1回は、菊池建設株式会社副社長・大鋸本賢一氏に、「いま、国内外で「木造建築」が注目される理由」を伺った。

国が「木造建築」を幅広く推進する背景とは?

私たちナイスグループは、木材・建築資材の販売を中心に、住宅の供給、木造建築物の建設などを手掛ける企業グループです。

 

もともとは江戸時代から続く木材商でしたが、1950年に現在の前身となる市売木材株式会社を設立し、木材市場の運営を開始。その後、住宅をはじめ、木造建築関連に幅広く事業分野を広げ、現在は国内外で数十社を抱える企業グループとなりました。

 

ところで、皆さんは「木造建築」と聞くと、どのようなイメージを思い浮かべるでしょうか? 多くの方は、木材の心地よい温もりや香り、日本の伝統といった「古き良き建築」のイメージを持たれるかもしれません。

 

もちろん正しいのですが、真価はそれだけではありません。実はいま、木造建築は、これからの時代に推進すべき最先端の建築として、国内のみならず世界的にも注目を浴びているのです。

 

たとえば国内では、弊社が創業した1950年代には、古いタイプの木造建築が主流であったため、防火や防災の面から一戸建て以外木造建築は禁止される流れができていきました。また、なるべく木は伐採しないほうがいいという誤った森林保護の観点もありました。

 

ところが、2010年に「公共建築物等木材利用促進法」が制定され、低層の公共建築物は原則としてすべて木造にすること、また、民間住宅についても木造利用を促進することが定められました。それまでの流れとは正反対に、国として木造建築を幅広く推進していく方向となったのです。

 

これには、木造建築技術の向上や素材開発の進歩により、耐震性や防災性が高い木造住宅がつくれるようになったこと、また、森林は適度に伐採をしたほうが、森が若返り、環境に良いことがわかってきたことなどが理由として挙げられます。

 

国内だけではなく、持続可能な世界を実現するためにSDGs(持続可能な開発目標)が国際的な目標とされる中で、再生可能で二酸化炭素排出が少ない特性を持つ木材の利用は、世界的にも注目されています。

 

年月を経ても価値ある「木造住宅」とは?

菊地建設株式会社 営業本部常務取締役本部長 大鋸本賢一氏
菊池建設株式会社
副社長
大鋸本賢一氏

「木の家は素材の温もりがあり、環境に優しいのはわかるが、耐久性や耐震性は大丈夫か」「木造住宅は断熱性が低く、光熱費がかかるのでは」といった心配をされる方もいらっしゃいます。おそらくそれは、昔の「安かろう、悪かろう」という時代の木造住宅のイメージがあるからだと思われます。実際、日本では木造住宅の寿命は約30年だといわれて久しくなっています。

 

しかし、しっかりとした設計と施工で建設し、きちんとしたメンテナンスを実施すれば、RC造にも勝る長期間使用できる木造住宅をつくることは、実は難しいことではありません。世界最古の木造建築である法隆寺が、1400年の歴史を持つことからもそれはわかります。また、非住宅の公共建築物に木造を利用する方向になったのも、耐久性や安全性の面で、木造建築でもRC造に劣らない性能が出せることが知られてきたためです。

 

堅牢な住宅をつくり、長く使用することは、環境保全や国民の資産形成にとっても望ましいことです。そのため、国も「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」を制定し、長期間にわたり良好な状態で使用できる優良な住宅を、いわゆる「長期優良住宅」として認定しています。

 

また、その前提として、住宅の性能について、国が定めた一定の基準を満たしているかどうかを専門機関が評価する「住宅性能評価」制度が導入され、設計および建設の両面で客観的な評価を受けることができる制度が設けられています。

 

このような客観的な制度により、一定の基準を満たしていると評価・認定を受けた木造住宅は、適切なメンテナンスをしていれば、100年間の使用にも耐える躯体の耐久性や高度な耐震性を備えています。

 

当グループの主力ブランドである「パワーホーム」は、「パワービルド工法」というオリジナルの規格化された工法で建設され、比較的リーズナブルなコストで、前述した長期優良住宅の認定レベルを上回る、高い耐久性と耐震性能、断熱性を持つ住宅の建築を可能にしました。これは、もともとは木材商社としてスタートした弊社が、木材の特性を十分に理解し、そのメリットを最大限に引き出す木造住宅の研究も長く続けてきたことから生まれた成果です(パワーホームについては、連載第4回、第5回で詳しく解説)。

 

また、グループ企業である菊池建設は、宮大工だった創業者が興した建設会社です。初代社長の菊池安治は、木造建築専門の学校である「日本建築専門学校」を創立するなど、国内における木造建築技術の進歩、普及にも大いに貢献してきた人物です。その高度な木造建築技術で、社寺建築と数寄屋造り(住宅)の両方を請け負っています。

 

社寺建築を担える高度な設計・施工技術を持った職人集団が、同時に数寄屋造り(住宅)も担当し、細部にわたって施主(オーナー)様の美意識やこだわりを活かした木造住宅をつくる、これが同社の大きな特徴で、住宅のほか、茶室やゲストハウスといったおもてなしの空間も数多く手がけています。もちろん、耐久性能や耐震性能は、パワーホームと同等の、最高レベルを実現しています。

 

堅牢性と機能性、伝統美を兼ね備えた菊池建設の住宅は、年月を経ても価値が落ちにくいというメリットもあります。それが現れるのが売却時です。一般的には、築年が法定耐用年数(22年)を超えた木造住宅は、売却価値はゼロであり、場合によっては撤去費用分だけマイナスの評価となることさえあります。ところが、菊池建設の住宅は築20年を超えていても、不動産会社が「菊池建設施工」と銘打ち、価値ある建物として取引されています。

 

このように市場価格が落ちにくいナイスおよび菊池建設の高品質な木造住宅は、住むのに快適で地球環境にもやさしいだけではなく、オーナーの好みを心ゆくまで反映しながらも、現金で建てることにより、相続対策などの点でも有利になるなど、さまざまなメリットをもたらしてくれるものなのです。

 

菊地建設が施工した木造住宅例
菊池建設の木造住宅施工例

 

取材・文/椎原よしき 撮影/永井浩 
※本インタビューは、2019年2月15日に収録したものです。