世界有数の成長国として知られるフィリピン。日本の富裕層による不動産投資が人気だが、近年、新たに注目が高まっているのが「フィリピン株式投資」である。「フィリピン株式」である。本連載では、フィリピン不動産をはじめ投資事情に詳しいハロハロアライアンス・ディレクター鈴木廣政氏と、『フィリピン株.com』の編集長 仁科剛平氏に、「フィリピン株式投資」の魅力について伺っていく。第2回目のテーマは「日本の株式市場にはないフィリピン株式市場の特徴とは」である。

上場銘柄数は日本株式市場の1/10

日本人の多くにとって、フィリピン株式市場はなじみが薄いでしょう。

 

そのため、「最近になって整備された、新興の市場なのでは」と思われるかもしれません。しかし、その歴史は東南アジアの中でもかなり古く、1927年にマニラ証券取引所が開設されています。これは、当時の宗主国であった米国をモデルにしています。その後、米国系以外の国内証券会社などが中心になって、1963年にはマカティ証券取引所が設立されました。両取引所は1993年に合併して、現在のフィリピン証券取引所(Philippine Stock Exchange:PSE)となり、現在に至ります。

 

フィリピン証券取引所には、ファーストボード、セカンドボード(東京証券取引所の第一部、第二部に該当)などの区分は一応ありますが、同じシステムで取引されているため、その違いを意識する必要はあまりありません。

 

上場銘柄数は、現在272銘柄です。これは東京証券取引所の第一部、第二部合計の銘柄数2,623銘柄(2018年11月現在)と比べて、約10分の1であり、非常に銘柄数が少ないことがフィリピン証券取引所の特徴のひとつです。

 

さらに、この少ない銘柄のうち、財閥系企業が多くを占めていることも特徴です。時価総額上位の銘柄は財閥の持株会社が多くを占め、他には不動産、金融、資源・エネルギー、インフラなどの基幹産業が目立ちます。反面、サービス、小売りといった業種の地位が、相対的に少なくなっています。

 

この272の銘柄のうち、代表的な企業30社で構成されるのが、フィリピン総合指数(PSEi)です。フィリピン総合指数は時価総額加重平均指数で、フィリピン証券取引所に上場している商工業、不動産、鉱業、石油の各セクターの銘柄で構成されています。1994年9月30日が基準日で、その日の時価総額は2922.21でした。そして、現在(2018年12月14日)の指数は、7524.37です。約24年で、約2.6倍に上昇していることになります。ちなみに、東京証券取引所の株価指数であるTOPIXを同じ期間で比べると、1994年9月30日には1576.89、2018年12月14日には1592.16であり、この24年間で、ほとんど上昇していません。

 

[図表1]フィリピン総合指数とTOPIXの推移

 

フィリピン株式市場に上場されている全銘柄の時価総額は、約16.3兆ペソです(2018年12月現在)。日本円にすると、34.8兆円(1ペソ=2.14円)となります。東京証券取引所第一部の時価総額が約620兆円ですので、円ベースで見た市場規模としては、約18分の1と、非常に小さい市場です。前回の記事で見たように、フィリピンのGDPは日本の15分の1なので、GDP比よりもさらに小さい市場ということになります。

 

この理由の1つには、フィリピンにグローバル企業が少ないこともありますが、フィリピン国内での、株式投資人口の少なさも一因だと思われます。

若年層を中心に証券口座数は増加

フィリピンの伝統的な国民性として、消費が好きで手持ちのお金は使ってしまう傾向があげられます。銀行口座の普及率は14%しかないと言われています。つまり、国民10人のうち8人は、そもそも銀行に口座すら持っていないのです。さらに銀行口座を持っている家庭でも、半数以上が口座残高は5,000ペソ(約11,000円)しかないという調査もあります。

 

そういう国民性ですから、証券投資に対しても、これまで多くの国民は関心を持っていませんでした。フィリピン証券取引所のデータでは、2017年のフィリピン全体の証券口座数は約87万口座です。人口が1億人以上の国としては、非常に少ないと感じます(ちなみに、日本の証券口座数は約2,423万口座です)。

 

しかし、約87万口座という証券口座数は2016年比で見ると、約12%増えています。その中でもオンライン口座に限ってみると、約39万口座であり、前年比で約29%増えています。これは、海外での勤務を経験した若い世代が、証券投資に参加していることが背景にあるようです。私も現地で実感していますが、フィリピンの若い世代においては、投資に対する意識は確実に高まっています。

 

上場企業数、時価総額、口座数などの数字ベースでは、まだまだ発展途上のフィリピン株式市場ですが、だからこそ今後は、日本では考えられないような大きな成長を遂げる可能性があるのではないでしょうか。