少子高齢化が進む中、国内不動産(投資)の先行きに不安を持つオーナー・投資家は多い。本企画では、土地活用や賃貸経営に悩むオーナーを救う選択肢として、「横浜エリア」の不動産投資の魅力と成功の秘訣を探る。お話を伺ったのは、収益物件の販売企画から管理運営までワンストップで手掛ける株式会社フロンティアハウス代表取締役の佐藤勝彦氏。第3回目のテーマは、横浜エリアの「不動産投資に適した土地の条件」についてである。

入居率を高めるための「3つの要素」

前回述べた通り、横浜エリアの賃貸アパートの平均利回りは6~7%で、東京に比べると2~3%は有利な投資が可能です。しかし、これはあくまで満室になった場合の理論値であり、目安です。投資物件が、どれだけの運用利回りとなるのかは、入居率によって左右されます。

 

では、入居率を高める要素とは何でしょうか? それは、第1に「立地」、第2に、その立地に合った「企画や建物」、そして第3に「管理をはじめとした入居者サービス」です。

 

これらは、いずれも大切な要素ですが、バラバラに存在するものではありません。まず、良い立地であることは大前提になりますが、その立地に合った企画や建物がなければ、その立地の良さも活かせません。また、管理や修繕、入居者サービスがおろそかになれば、長期的な入居率は下がります。つまり、いずれにも目配りして、全体的に最適を目指す「総合力」が重要なのです。

 

3つの要素の中で、もっとも重要なのが立地です。立地には広い意味でのエリア・鉄道路線と、狭い意味での駅からの距離・周辺環境とがあります。

 

広い意味での立地として、鉄道路線では、東横線、京急線、そしてJR京浜東北線の3路線が、都内への通勤、通学の利便性がすぐれた人気路線となります。中でも、東横線沿線はブランドイメージも高く、総じて入居率も高い路線です。

 

狭い意味での立地としては、「駅から徒歩10分以内」が弊社の基準です。例外的に徒歩12、3分程度の物件も一部にはありますが、基本的には駅徒歩10分の範囲内で建てています。

 

ただし、東横線、京急線、JR京浜東北線で、駅から徒歩10分以内で販売される土地は限られており、当然ながら仕入れの競争も激しくなります。幸い、私たちは創業以来、横浜・東神奈川エリアで20年弱の営業をしてきた中で、多くの仲介業者さんや地主さんとお取引をさせていただいた実績があり、そのネットワークを活かして、売地の情報を得ることができます。

 

 

横浜エリアならではの、アパートに適した土地とは?

同じ駅、同じ徒歩分数でも、土地というのは2つとして同じものがなく、形状・周辺環境はすべて異なります。そして、同じ居住地区といっても、アパート、マンションに適した土地と、戸建てに適した土地とは、その性格が異なります。そのため、その土地が本当に長い間収益をもたらしてくれるのかどうか、見極める目利きの力も必要です。

 

株式会社フロンティア ハウス 代表取締役 佐藤勝彦氏
株式会社フロンティアハウス
代表取締役 佐藤勝彦氏

たとえば、いま、国内では若者の「車離れ」があります。横浜エリアでは、坂が多い、駅前の道が入り組んでいる場所が多いといった事情もあり、とくに駅から近い賃貸物件の入居者では、車を持ちたがる人はあまりいないため、賃貸物件には駐車場が必要ありません。一方、戸建て住居は通常、間口が広く、駐車場があり、車が出し入れしやすい道路に面した土地が好まれます。

 

そこで、いわゆる旗竿地のような土地、間口が狭く奥行きが広いような土地、不整形地や傾斜地などは、戸建て住居には向いていないけれども、アパート・マンション用なら問題ないという場合があります。こういった土地は、間口が広い整形地よりは安く購入できることが多く、そのため物件価格を抑えることができ、結果的に利回りの向上に貢献します。

 

弊社の用地仕入チームは、得られた情報をもとに、日々そういった物件を求めて歩き回っていますが、実際に土地を見て、さまざまな収益性計算をパスして購入に至る土地は、15件に1件程度と、非常に少ないのが実情です。

 

アパートが建てられる土地なら、どこでもいいということなら簡単ですが、最終目的はオーナー様に収益を上げていただくことです。将来を見据え、長期間にわたって活用できる土地でなければなりません。そうすると、購入できる土地はおのずと限られてきます。それだけ、収益物件に適した土地というのは希少性があるものです。

 

入居率を上げるためには、どんな入居者を対象にして、どんな広さの部屋にして、どのような設備を備えた建物にするか、という企画・建設面でも、工夫が必要です。

 

弊社では、設計、施工(子会社)、販売、管理を一貫して行っているメリットを活かし、販売や管理の現場が入居者様の声を直接集めて、それを設計や施工に活かすサイクルを作っています。部署ごとに、若手社員が中心となった検討チームを作って、日々「このような声が入居者さんから出ていた」「いまこのような設備が人気になっている」といった声を集約し、導入を検討すべきものを設計チームにフィードバックしているのです

 

そうしたシステムから生まれたのが、たとえば、アパート躯体の天井高を高くとり、1階からロフトを設けているという作りです。これにより、たとえば同じ15平米の部屋でも、入室したときの開放感がまったく違ってきます。天井高をとっていることにより、1階に窓を上下に並べて設けることができ、採光性も抜群ですし、友人を呼んだときなどの居住性も大幅に良くなります。

 

また、細かい点では、シンク上の食器戸棚の戸をガラスにして、中を見えやすくしたり、コンパクトキッチンでも必ず浄水器を設置したりといった、コストアップを抑えながら、入居者様の満足度を大きく上げる工夫を随所に採り入れています。

 

日々の担当業務とは別に、このような入居者ニーズの収集と、企画、設計へのフィードバック活動を行うことは大変な面もあります。しかし、これを続けるのは、入居率を高める工夫を追求していくことが、最終的にオーナー様の利益に結びつくと確信しているからです。

 

 

取材・文/椎原芳貴 撮影/永井浩 
※本インタビューは、2018年10月11日に収録したものです。