今年、設立10周年を迎えるコモンズ投信。3回シリーズで、コモンズ投信が立ち上がるまでのストーリーと今後の展望等について、渋澤氏と伊井氏のお二人に語り合っていただきます。2回目となる今回は、コモンズ投信立ち上げまでの道のりと、顧客からの信用の獲得に至ったビジネス展開がテーマです。

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道が違うだけで「登っている山」は同じだった

渋澤 伊井さんは当時、本当にお客様に勧められる金融商品がないことに不満を抱いていた。私は、自分の個人的な長期投資の体験、澤上さんや村上さんとの出会い、経済同友会から得た知見などから、日本全国から「今日よりも良い明日」を望む個人の成長性ある資金が集まってくれれば会社の価値創造に貢献できる長期資本を共に創れると考えていて、それを投資信託という枠組みで提供したかった。両者の考えが一致したんですよね。

 

取締役会長 渋澤 健氏
取締役会長 渋澤健氏

伊井 結局、登っている山は同じで、道が違うだけだということに気づいたのです。それで一緒に投資信託会社を立ち上げることになったのですから、人生って分からないものですよね。澤上さんから、「やってみたらいいじゃない」って言われたことで、背中を押してもらったということもありましたが。でも、投資信託会社を立ち上げようということになってからも、本当にいろいろなことがありました。

 

渋澤 土壇場で、一緒に起業しようと設立準備していたファンドマネージャーが参画できなくなったりしてね。

 

伊井 あの時は、これで投資信託会社を立ち上げるのは無理だなと思ったのですが、ベンチャーなのだから、この程度のことはよくあることだし、やはり前進しようと、その時の設立メンバーだった渋澤さんと佐藤明さん、私の3人で決めたのでした。


佐藤明さんは以前、野村證券のトップアナリストだった方で、30年先のエクイティストーリーを描いてみたいけれども、今の証券会社では四半期ごとの見通しばかり求められるので、長期投資を前提にするコモンズ投信の設立にジョインしたいという話でした。その佐藤さんと、ファンドマネージャーは誰が良いかと話していた時に挙がったのが、吉野永之助さんだったのです。

 

渋澤 当時、何と70歳。

 

伊井 キャピタルインターナショナルの日本代表もされて、ご本人も完全引退を決められていた時期でした。私たちがコモンズ投信を設立する意図などを話すと、「忘れ物を取りにいくつもりでお手伝いします」と言って下さいました。

 

吉野さんも、ご自身は長期投資では世界的にも有名なキャピタルで働くことが出来たが、日本には長期投資の文化が根付いていないとの深い思いがありました。長期投資の素晴らしさを多くの方に伝えたいという想いがあったのだと思います。それが「忘れ物を取りにいく」という言葉になったのでしょうね。

先輩から言われた「胆力が大事だ」を実感する日々

渋澤 もともとは出会い系サイト(笑)で出会った我々でしたが、日本の金融を変えたいという伊井さんの想いと、長期投資の魅力を知りその世界にのめりこんだ私がその想いで作った会社が「コモンズ投信」だった、ということですね。

 

代表取締役社長 伊井哲朗氏
代表取締役社長 伊井哲朗氏

こうしてメンバーが揃って会社を設立したのですが、その後もまた色々と大変でした。ベンチャー企業って、何かしら大きな理想を掲げてスタートします。でも、続けていくうちに、理想と現実のギャップに直面するわけです。それを解決しながら経営を続けていくのは、大変なことだと実感しています。

 

伊井 何しろ最初の時点で1億5000万円くらいの資金を集めなければなりませんからね。いきなり黒字決算にはなりませんから、赤字決算が続く間、経営を続けるのに必要な軍資金が必要です。本来、投資信託会社を設立する際の要件として、金融庁から最低資本金は5000万円と言われたのですが、なんだかんだと1億5000万円くらいの資金は、どうしても必要になる。先輩からは「胆力が大事だ」と言われました。最初はピンと来ませんでしたが、その後、まさに実感する日々でした。何しろ、苦労して集めた資本金が、どんどん目減りしていくのですからね。

 

あと、メリルリンチ時代のお客様で会社を起業し上場までさせた創業経営者だった方から、手紙を頂戴したのですが、そこには「起業も大変だが、続けることはもっと大変だ。頑張れ!」と書かれていたことを覚えています。

 

私たちは長期投資のお手伝いをするのと同時に、社会に変革をもたらす長期資本を育てたいということで始まったわけですから、その目的を達成するためには、経営者はもちろん社員にも胆力が求められます。これが本当に大変でした。

「信用があるからお金も集まる」という、厳然たる事実

渋澤 独立するって自分だけではなく、家族にもリスクがあるじゃないですか。私の場合、2001年に起業したときは子供がまだ小さくて、それほど生活費や教育費などが掛からなかったことと、2年ぐらいは収入がなくても食べていけるかなという程度の蓄えがありました。その事業が回り始めて、2007年にコモンズという二度目の創業に踏み切りました。でも、2008年のリーマン・ショックで事業が崩壊するという厳しい側面に立ちました。伊井さんは身近な方の反対とか、大丈夫でしたか。

 

伊井 妻の反対は無かったのですが、当時勤めていた会社が外資系金融機関だったので、上司や同僚からは「経済面を考えればありえない選択だ」とは言われましたよ。でも、私自身はやって後悔するならともかく、やらずに後悔するのは自分の信条としてあり得ませんでしたし、何よりもこのメンバーで起業できるチャンスは二度とないだろうと思っていました。

 

渋澤 恐縮です(笑)。

 

伊井 それと、起業の決断は、自分の腹を固めることが一番大事だと思います。私、高校生だった時、オイルショックの影響で父が経営していた会社が倒産して、資産をすべて没収され、とても厳しい思いをしたことがあるんですよ。母からは「将来、起業してはいけないよ」と言われたものです。コモンズ投信を起業する時は、すでに両親は他界していたのですが、社会の役に立つ起業だから許してくれるよねと、遺影の前で誓いました。

 

渋澤 伊井さんが言うように、ビジネスは継続性が大事です。そして、私たちのビジネスに継続性を持たせるためには、コモンズ投信で働いている社員がとても重要です。ビジネスですから、目標を立てますよね。その目標をすんなりクリアできれば世話ないのですが、現実にはそううまくいきません。スピードが想定より遅いこともあれば、ベクトルがずれてしまうこともあります。そういう時、仕事に対するモチベーションを維持しながら、いかにしてスピードアップを図り、ベクトルのずれを修正していくか。私自身は、コモンズ投信を立ち上げてから日々、経営を行うなかで、特にそれを強く感じています。

 

伊井 社内のマネジメントが大変なのは、ベンチャー企業全般に当てはまることですが、渋澤さんも私も今、やっていることに対して、自信は持っているじゃないですか。少なくとも世の中的に間違ったことをやっているわけではありませんし、まだまだ小さいけれども、徐々に世の中を変革させていくのに必要な、蕾のようなものが増えてきました。

 

実際、私たちの長期投資の考え方、企業との対話の重要性に共感して下さる投資先企業は、着実に増えています。ただ、金融業は信用が何よりも重んじられます。信用があるからお金も集まる。それは、厳然たる事実です。私たちも、お金が集まらなければ運用も出来ず、したがって会社の価値創造に貢献できる長期資本を育てる、という目標も達成できなくなります。信用を築くためには、とにかく継続が大事です。

 

渋澤 人間は誰もが成果をすぐに実感したがりますが、長期投資の日々の投資成果は簡単に実感できません。服用し続けているうちに、いつの間にか健康体になっている漢方薬と同じで、長期投資はデイトレードのように、瞬間的な成果を得ることが目的ではありません。したがって、時間の経過や環境の変化に耐えられる運用を日々、積み重ねていくことが、継続と信用につながっていくのではないでしょうか。

 

 

→後編に続く

 

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