前回は、オーナーにとって「羊羹型」アパートのデメリットが大きい理由を説明しました。今回は、会社の危機を救ったアイデアの事例を見ていきます。

部屋を広く見せ、段差をお洒落に配置するための工夫

今回は、オーナー様からのリクエストで、弊社を代表するブランドであります、グランティックシリーズがどうやって誕生したのか、その話を致します。

 

私が、福岡にて独立したのが、2006年の8月。それまでは、前職にて同じようにアパート販売を行っておりました。

 

約10年弱お世話になったわけですが、その間にもいろんな商品開発を行い、試行錯誤を繰り返しておりました。

 

当時はまだ単身者用(1Kタイプ)が主流でしたので、いかにロフトをうまくからめ、部屋を広く見せ、段差をお洒落に配置するかを考え、様々な工夫をこらし、5~6タイプほど商品開発した記憶があります。もう約17年前の話です。

 

そのころは私もまだ若く、33~38歳の間は特に、いろいろと想像するのが楽しくて仕方ありませんでした。が、次第に社長との間で溝が生まれます。

 

結局、独立することになった私は、家内と2人でワンルームマンションの7階1室を借りて事業をスタートしました。14㎡で居室は4畳ほど。そこには、コピー機と白い4人掛けのテーブルと作り付けのベッド棚だけのスペース。仕事をするのも、お客様との商談も全てテーブルの上で行いました。余談ですが、その思い出のテーブルは今でも福岡支店で現役です。

 

そんな事務所で仕事をしていた当時、あるオーナー様から、

 

「どうして、もっと建物にこだわらないの?どうして一つ一つの備品にまで気を配らないの?コストが少しくらい上がっても、ワンランク上の良い商品を買いたいと思っているオーナーは多いと思うよ」

 

と、お叱りを受けました。以来、そのお言葉が私の頭に強烈にインプットされ、お陰様で今日があります。とても感謝しております。

「ロフト」の概念が厳しく見直された結果…

そんなこんなで、この狭いスペースでいろんなアパートの企画を行いました。事業スタートから1年~2年後には、前職時代の部下3人からの入社希望があり採用。その後、近くの13坪店舗に引っ越し、社員も8人に増えます。と同時に、前職時代に販売していたアパートから、もう一歩進化させたアパートを設計担当と共に開発。新しいブランド名を初代「メゾネティックシリーズ」と名付けました。

 

メゾネティックは、ハシゴ付きのロフトではなく、階段移動のロフトを採用した、まるでメゾネットのようなお部屋のアパートです。2階のお部屋には、専用のスカイバルコニーを設けています。このメゾネット風の造りが売りとなり、自分で言うのもなんですが、これが大ヒット。福岡のある駅周辺は、当時弊社メゾネティックシリーズの建設ラッシュとなり、スカイバルコニー付きアパートはここから始まります。

 

このように順風満帆に見えた弊社に、この後思いもよらない出来事が起こります。

 

2006年の夏に独立し、4年後に「メゾネティックシリーズ」を販売開始し、その次の年の2年間で計36棟の販売と、当時としては順調に軌道に乗ってきた矢先。

 

いきなり梯子を外されます。

 

忘れもしない2011年3月。

 

福岡市の条例の改定により、4月より、今までのような「メゾネティックシリーズ」の建設はできない旨の通達が届きます。ロフトの概念を厳しく見直したためとのこと。その通達には、断面図まで書かれていたのですが、それを見てびっくり。弊社以外にはやっていないはずの屋上バルコニーまで書かれていたのです。妙な圧力みたいなものを少し感じつつ、途方に暮れてしまいました。やっと軌道に乗って、さあ今からという矢先の出来事だったからです。

 

同業他社と比べ、弊社が一番凝った作りにしていたため、全否定されたようなもの。大黒柱を失ってしまいました。

1か月とことん悩み抜いた後に得たヒントとは?

そして、この通達以降、業界全体に影響が出始めます。市外へ活路を見出す業者や、新しいロフト基準で販売する業者など各社試行錯誤。今考えると、あのときに、業者はかなりふるいにかけられた感じがします。

 

私も、さあどうしたものかと、悩んでいると、追い打ちをかけるように例の大震災が起こります。世の中が、超自粛モードへ突入しました。今はアパート経営どころではないと言わんばかりに。

 

そして、その後、丸1年間現場が混乱することになります。職人さん不足と、資材不足などが重なり、弊社も最大で1か月半遅れの現場がありました。ただ、当時は業界全体がもっとひどい状況でしたので、恵まれていたほうだと思います。

 

さて、福岡市からの通達を受け、大黒柱を失った私は考えました。福岡市郊外へ出ていくわけにはいかないし、かといって新しいロフト基準では商品力が半減するし、どうすれば良いのか、と。1か月とことん悩みました。

 

しかし、どうにも結論が出ないので、気分転換に後輩の賃貸ショップに遊びに行くことにしました。こういうときこそ、現場の生の声を聴いてみようと思ったのです。何かヒントをもらえるかもしれない、と藁をもすがる気持ちでした。

 

「最近どうよ?お客さんはどんな部屋を探してる?」と聴いたところ、間髪入れずに、「単身でも、1LDKのような、広めの部屋を探している人が多いですよ。マンションに比べて家賃が安ければニーズはかなりあります」との回答が。

 

その2分後には、お礼もそこそこに私は車に乗っていました。

 

「これだ」と確信を持ち、会社に戻るやいなや、「新商品は1LDKを販売する。しかも今まで通り屋上バルコニー付きで」と社員に発表し、即みんなの賛同を得、商品化し、発表したのが5月上旬のことでした。

 

ブランド名は、紆余曲折のうえ、「グランティックシリーズ」と名付けました。「ふさわしい名前じゃないか!」と全員納得。

 

オーナー様には、「こういう広めのタイプが良いと思っても、今までは狭いタイプばかりだったんですよ」と、嬉しいお言葉を頂きました。

 

この新しいタイプのアパートは、たくさんのオーナー様、入居者様からご支持をいただき、今では弊社の顔と言っても過言ではありません。

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    本連載は、2016年11月30日刊行の書籍『新築アパート経営こそ副業の中の本業 成功の秘訣55』(幻冬舎メディアコンサルティング)から抜粋したものです。稀にその後の法律、税制改正等、最新の内容には一部対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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    中島 厚己

    幻冬舎メディアコンサルティング

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