中山てつや氏は著書『なぜ職場では理不尽なことが起こるのか?』のなかで、職場における諸問題について語っています。本記事では、中山氏のキャリアコンサルティングとしての実務経験をもとに、日本の企業における問題点を考察していきます。今回は、外資系企業で行われている社内公募、「ジョブ・ポスティング」の仕組みについて、見ていきましょう。
相性が悪い上司、指示を無視する部下…板挟み「中間管理職」の悲哀 (※画像はイメージです/PIXTA)

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外資系に多い人事制度「ジョブ・ポスティング」の実際

最近では、日本の会社でも、同じような運用が行われているケースもあるかもしれませんが、一般的な外資系企業のジョブ・ポスティング制度は、あくまでも「オープン・ポジションありき」で行われます。

 

業務遂行上、不可欠なポストに空きが出た時に、「社外」から転職者を募集する前に、まずは「社内」で該当する人材がいないか、探しに入ります。募集要項は社内のウェブサイトに掲載されるので、社内で欠員が出たという事実は、社員全員がその情報を共有することになります(諸事情で、公にできないポジションもありますが)。

 

応募する際は、こちらも当然のことながら、上司を飛び越えて、直接人事部にエントリーすることになりますので、基本は「極秘扱い」です。

 

応募者が出る都度、選考を行い、良い候補者が見つかれば、その社員が社内異動となります。

 

この方法をとると、外部から人を新たに採用するよりもはるかに早いタイミングで、しかもコストをかけずに効率良く、所定のポストを埋めることができます。

 

社員にとっても、希望の仕事に移行できるわけですから、双方にとってありがたい制度と言えます。一方で、部下を引き抜かれる上司とその部署は、当面大変な思いをすることになります。

 

しかし、人員枠さえ確保されていれば、再度、ジョブ・ポスティングの仕組みを活用し、社内で補充できる人材を、探しに行くこともできます。

 

社内でいい人材が確保できなければ、外部から採用する運びとなります。また、急ぎの場合は、社内のジョブ・ポスティングと、社外からの即戦力採用を同時進行させます。

 

外部候補者の面接が進んでいるにもかかわらず、「社内を優先」する形で募集が終了してしまうことも、たまにあります。

 

外資系のジョブ・ポスティング制度は、必要なポジションを埋めるために行われるので、「社内の人材活性化」とか、「社外に対する広報活動」などの「大義名分」よりも、もっと現実的な路線を追求することになります。

 

「良い人材がいれば、いつでも」などの「ポテンシャル枠」を常時設けるケースもありますが、空いたポストを、いち早く埋めなければならない採用担当者にとって、「社内公募=ジョブ・ポスティング」は、極めて便利な仕組みであるとも言えます。

評価を下すのは制度ではなく、人事権を持つ「上司」

世の中には、様々な種類の人事制度が存在し、それぞれの趣旨に則った評価基準が設定されます。ひと昔前の「年功序列型」から、進化した「成果主義」に至るまで、いろいろな仕組みが、時代を反映する形でできあがり、試行錯誤を繰り返しながら、日々進化し続けることになります。

 

しかし、世の中に完璧な制度など、できるはずがありません。それは、時の経営陣が自らの手で作り上げた「都合のいい尺度」でもあるからです。