前回は、小規模宅地等の特例について紹介しました。今回は、二世帯住宅を相続税対策に利用するメリットと注意点を見ていきます。

”争続”を防ぐ効果も大きい二世帯住宅

小規模宅地等の特例の改正の結果、二世帯住宅を相続税対策として活用できる範囲は大きく広がりました。しかもさらに、二世帯住宅は、相続税への対応を妨げる〝争続〞を防ぐ手段としても非常に大きな効果をもっています。

 

二世帯住宅には、親世帯にとっては「高齢になってからの暮らし(介護等)に安心感を抱ける」、子世帯には「子どもの世話のお願いができる(親から見れば孫)」などのメリットがあります。それらのメリットの効果により、親子の絆がより深まり、結果的に円満な相続の実現も期待することができるのです。

 

このように二世帯住宅は相続を巡る問題を未然に防ぐうえで、これ以上はない理想的な手段といえますが、それを最善の形で活用するためには押さえておくべき基本的知識や重要なポイントが存在します。

 

そこで、以下では、相続税対策として二世帯住宅を利用する際に必要となる手続きや注意を要すべき点などについて具体的に確認していきましょう。

区分登記では小規模宅地等の特例は受けられない

二世帯住宅に限った話ではありませんが、新たに家を建てた時には登記が必要となります。二世帯住宅の場合には、以下のように3つの登記方法が選択肢となるはずです。

 

①単独登記

二世帯住宅の所有権を一人の名義で登記するもの。

 

②共有登記

二世帯住宅の所有権を複数の名義で登記するもの。

 

③区分登記

二世帯住宅を2戸に分け、それぞれの所有権を登記するもの。

 

この3つの登記のうち、従来、ハウスメーカーなど二世帯住宅を扱う業者は、③の区分登記を積極的にすすめていました。区分登記にすれば、住宅ローンが親と子で二つ組めること、また不動産取得税や固定資産税も単独登記や共有登記の場合に比べて、安くなるというのがその理由でした。

 

しかし、平成25年の改正では、区分所有建物登記がされているものを除き、構造上区分されている二世帯住宅は「同居」とみなされるということになりました。逆にいえば区分登記の二世帯住宅については、小規模宅地等の特例が適用されないことになりました。つまり、単独登記かあるいは共有登記のいずれかでなければ二世帯住宅であっても、最大80%の評価減という恩恵を受けることはできなくなったのです。

 

区分登記の建物について特例を適用しない取り扱いとした理由については、区分所有される建物はそれぞれの専有部分が別々に取引されることが可能な権利であり、二世帯住宅と同視することができないからなどと説明されています。

 

いずれにせよ、これから相続税対策を目的に二世帯住宅を建てるのであれば、区分登記は絶対に避けなければなりません。必ず単独登記かあるいは共有登記のどちらかを選択するようにしましょう。

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    本連載は、2015年7月30日刊行の書籍『親子で進める二世帯住宅節税』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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    斎藤 英一

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