前回は、二世帯住宅を相続税対策に活用するメリットについて説明しました。今回は、贈与税への留意点や「親子ローン」などについて見ていきます。

登記上も「出資と所有の一致」が必要に

登記に関する重要な注意点として、出資割合にしたがって持分割合を正しく示すことも必要です。すなわち、親が所有する土地の上に二世帯住宅を建てる場合、その建設資金については、①親がすべてを出す、②子がすべてを出す、③親子それぞれが出し合うという、3つのパターンが考えられます。

 

いずれの場合にも、出資と所有が登記の上でも一致していることが求められます。たとえば、3000万円の二世帯住宅を建てるために、親が退職金の中から2000万円を出資し、子どもが1000万円の住宅ローンを借りたような場合、親の持分は3分の2、子の持分は3分の1となります。にもかかわらず、親の持分を2分の1、子の持分を2分の1として登記をしてしまうと、親から子どもへ500万円が贈与されたと認定され、贈与税を課されるおそれがあります。

 

したがって、親が全額出資しているにもかかわらず「将来はどうせ息子が相続するのだから」などと安易に、子どもの持分を登記するようなことは避けた方がよいでしょう。

 

もし子どもに十分な現預金がないのであれば、住宅取得等資金の贈与や相続時精算課税贈与、住宅取得資金の贈与の特例などを利用して資金を与えることも検討しましょう。これらの制度を使えば、贈与税の負担を軽減しつつ、子どもに無理なく二世帯住宅の持分をもたせることが可能となります。

 

あるいは、子どもに住宅取得の資金を貸し与えることも一つの選択肢となります。ただし、子どもにお金を貸す場合には、契約書を作成し住宅ローンの金利程度の利率を定めておくことをおすすめします。金を貸しているのに利子をとらないでいては、税務当局に「実質的には持分を贈与したことと同じ」とみなされ、贈与税を課されるおそれがあるからです。

住宅ローンの返済を親子で引き継ぐという選択肢も

親の土地の上に子世帯が二世帯住宅を建てる場合には、土地が担保となることからほぼ確実に住宅ローンを借りられるはずです。その場合には親か子どものいずれか一方がローンを組む形が多いかもしれませんが、親子がともにローンを組む選択肢もありえます。

 

具体的には以下のように、①親子リレーローン、②親子ペアローンという2種類の形が考えられるでしょう。

 

(1)親子リレーローン

親が組んだ住宅ローンを子どもが引き継いで返済する住宅ローン。親が高齢でも、子どもの年齢で借りることができ、返済期間が長いことが特徴。

 

<利用条件>

①同居するか、同居することが確実なこと

②子どもが親の連帯債務者になること

③親子双方に安定した収入があること

 

(2)親子ペアローン

親子が別々に住宅ローンを組んで同時に返済する住宅ローン。収入を合算できるので、住宅ローンの借入額を増やせることがメリット。

 

<利用条件>

①親子双方が団体信用生命保険に加入する必要がある

②親は子どもの、子どもは親の連帯債務者にならなければならない

 

ローンを利用する場合には、何よりもゆとりある返済を心がけることが重要となります。「これだけの金額を借りるとしたら、月々の返済額は○○万円になるがまあ大丈夫だろう」などと借りられる金額ありきで無理な返済計画を立ててしまうと、予期せぬ出費や、突然の給料カットなど不測の事態が生じた時に支払いが厳しくなる危険性があります。

 

過大なローンを組んでしまった結果、後々苦しむことがないように、無理なく毎月返済できる金額をまずは考えて、そこから逆算して借りる金額を決めるようにすることをおすすめします。

 

また、親子リレーローン、親子ペアローンの場合には、万が一、親世帯、子世帯の間でトラブルが起こり、同居を解消するなどということになった場合には、残っているローンの取り扱いが問題となる可能性があります。金融機関との具体的な契約内容にもよるでしょうが、ローンの一括返済を迫られるようなケースも考えられます。ローンを組む前に契約書の中身をしっかりと確認するようにしましょう。

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    本連載は、2015年7月30日刊行の書籍『親子で進める二世帯住宅節税』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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    斎藤 英一

    幻冬舎メディアコンサルティング

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