親との同居が小規模宅地等の特例の適用条件の一つ。親が老人ホームに入居したら特例を使えないおそれがあるのでは、安心して二世帯住宅を建てることができません。今回は、法改正により変わった特例の条件について見ていきます。

所定要件を満たせば老人ホームに入居しても特例が適用

二世帯住宅を相続税対策に用いようと思っても、これまでは「親世帯が途中でいなくなった」後のこと、より具体的にいえば親が老人ホームに入った後のことが難点となっていました。

 

老人ホームには様々なタイプのものがありますが、最も一般的なものとしては公的な施設である特別養護老人ホームと、主に民間企業が運営主体となっている有料老人ホームがあります。前者は利用料が安価であるために人気が高く入居しにくくなっています。そのため、現状では、多くの高齢者が有料老人ホームに終身利用権方式の契約を結んで入居することを余儀なくされています。

 

そして、かつては、このような終身利用権付きの老人ホームに入所し、一度も退所することなく亡くなったような場合には、小規模宅地等の特例を使うことが認められていませんでした。親が亡くなる時まで一緒に暮らすことが、二世帯住宅に特例が適用される当然の前提とみなされていたわけです。

 

しかし、今述べたように、高齢者であれば、多かれ少なかれ誰でも終身利用権付きの老人ホームに入る可能性があります。にもかかわらず、親が老人ホームに入居したら特例を使えないおそれがあるのでは、安心して二世帯住宅を建てることができません。

 

このような不安や懸念が強く存在したことから、改正により、親が終身利用権付きの老人ホームに入居したとしても、所定の要件を満たしている場合には、特例の適用が認められることになったのです(平成26年1月1日以後の相続が対象となります)。

 

この二世帯住宅と老人ホームの問題については、より細かな注意を要するポイントがいくつかあるので、後の回で改めて詳しく取り上げることにしましょう。

80%減額される居住用宅地が330平方メートルに拡大

さらにもう一つの重要な改正点としては、小規模宅地等の特例の適用面積が大きく広がったことがあげられます。

 

従来は、80%減額される居住用宅地は240平方メートル以内に限られていました。しかし、改正により、適用範囲が330平方メートルにまで拡大されたのです。この限度面積の拡大は、平成27年1月1日以後の相続から適用されています。

 

二世帯住宅にする場合、一世帯で住むことを前提にした一般的な住宅と比べれば、どうしても建物の規模が大きくなります。改正前の240平方メートルでも、決して狭いというわけではないかもしれませんが、やはり広さに余裕があるにこしたことはないはずです。たとえば、330平方メートルもあれば、子世帯の子どもたち(親世帯から見れば孫たち)が成長して、部屋数が足りなくなったような場合にも、増改築をスムーズに行うことができるでしょう。

 

また、相続後に賃貸併用住宅にすることを想定して建てる場合には、貸し出せる部屋の数を一つでも多く確保することが可能となるので、限度面積の拡大はやはり望ましいことのはずです。

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    本連載は、2015年7月30日刊行の書籍『親子で進める二世帯住宅節税』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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    斎藤 英一

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