前回は、「建物を増築して二世帯住宅を建てた場合」について説明しました。今回は、マンションに二世帯で暮らしていた場合、相続関連ではどんな問題が発生するのか、具体例を交えて見ていきます。

同じ建物で別々の部屋に住んでいると・・・

今回は、マンションに二世帯で暮らす場合について、以下のケースをもとに見ていきましょう。

 

【ケース】

Aさんの両親は定年を迎えて、都心近郊の駅から歩いて5分程度の分譲マンションでセカンドライフを楽しんでいます。このマンションはどこへ行くにも便がよく、近くにスーパーマーケット、病院もあり快適な住環境です。

 

一方、Aさんは郊外で暮らしていましたが、両親は老後の不安から分譲マンションの別の一室を購入して、Aさん家族を呼び寄せました。両親は401号、Aさん家族は202号に住んでいます(いずれも所有者は父親です)。

 

また、Aさんには弟Bさんがいますが、結婚はしておらず、両親のマンションの近くの賃貸マンションで暮らしています。このような状態で父親の相続が発生しました。相続財産は現預金他の3000万円と、今述べた2室のマンションになります。それぞれの相続税評価額は次のようになっています。

 

401号土地部分は2000万円、建物部分は3500万円(合計5500万円)

202号土地部分は2000万円、建物部分は3000万円(合計5000万円)

 

このケースの場合、別の部屋とはいえ一つの建物(マンション)の内部なので同居とみなされ、Aさんは小規模宅地等の特例を使うことができるのでしょうか? もし小規模宅地等の特例が使えれば202号室の土地については80%の減額ができ、評価額が1600万円も下がることになります。

 

[図表]家族関係図

分譲マンションでは「小規模宅地等の特例」が使えない

結論からいうと、特例は使うことができません。二世帯住宅の用に供されている宅地等については、その同居の判定が問題となります。

 

かつては、構造上内部で行き来が可能な二世帯住宅(構造上区分されていない二世帯住宅)については、全体を一つの住居ととらえ、被相続人と親族が同居していたものと解し、全体について、この特例の適用が可能とされてきました。

 

他方、構造上区分された二世帯住宅の場合は、それぞれの区分ごとに独立した住居ととらえ、被相続人が居住していた部分は他の要件を満たせば特例の適用を認めるものの、それ以外の部分については特例の適用を認めない取り扱いとなっており、納税者からはわかりにくい状況となっていました。

 

このように外見上は同じ二世帯住宅であるのに、内部の構造上の違いにより課税関係が異なることは不合理との指摘があり、二世帯住宅であれば内部で行き来ができるか否かにかかわらず、全体として二世帯が同居しているものとしてこの特例の適用が可能とされ、平成25年の税制改正でこれを法令上も明確化することとされました。

 

具体的には、「同居要件」(同居の存否を判定する要件)について、「被相続人の親族が、相続開始の直前においてその宅地等の上に存するその被相続人の居住の用に供されていた一棟の建物(被相続人、その被相続人の配偶者またはその親族の居住の用に供されていた一定の部分に限ります)に居住していた者であって、相続開始時から申告期限まで引き続きその宅地等を所有し、かつ、その建物に居住していること」とされました。

 

この「一棟の建物」には、いわゆる分譲マンションのように区分所有され、複数の所有権の目的となっているものもありえます。

 

しかし、このケースのように同じ分譲マンションの一室に被相続人(父親)が、別の一室に親族(Aさん)が居住していた場合には、それぞれの専有部分が別々に取引される権利であり、いわゆる「二世帯住宅」とは同視できないと考えられるため、小規模宅地等の特例は適用されません(なお、二次相続が発生し、母親が父親から相続し居住している401号室を、持ち家をもったことのない、いわゆる「家なき子」のBさんが取得した場合には、小規模宅地等の特例を使うことが可能となります)。

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    本連載は、2015年7月30日刊行の書籍『親子で進める二世帯住宅節税』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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