前回に引き続き、「マンションに二世帯で暮らしていた場合」の相続税対策を見ていきましょう。今回は、「小規模宅地等の特例」が利用できない場合、どういった工夫をすれば相続税の負担を減らせるかを説明します。

二次相続まで視野に入れて「遺産分割」を活用

前回説明したケースでは、遺産分割の方法として、最終的に母親がすべての財産を取得するというプランがまず考えられます。母親が取得した401号室分の土地については小規模宅地等の特例が使えるため、2000万円のうち80%の1600万円を減額することができます。

 

その結果、相続税評価額は次のような形になります。

 

財産種類

現預金他 3000万円

土地 2400万円(4000万円−1600万円)

建物 6500万円

合計 1億1900万円

 

そして、相続税については下記の図表1に示したような形になります。母親については、配偶者控除(法定相続分または1億6000万円の高い方まで控除できる)を使って納税額は0円となりました。

 

[図表1]母親がすべて相続するパターン(1次相続)

しかし、二次相続が発生すると、下記の図表2に示したように、合計で1140万円という高額の相続税が発生することになります。

 

[図表2]母親がすべて相続するパターン(2次相続)

そこで、二次相続における相続税の負担を減らすために、母親が401号室と現預金1500万円を、Aさんが202号室を、Bさんが現預金1500万円を取得することにしました。その場合、相続税は下記の図表3のような形になります。

 

[図表3]対策後(1次相続)

そして、二次相続が発生すると、下記の図表4のような形になります。

 

[図表4]対策後(2次相続)

一次相続の相続税(514万8000円)と二次相続の相続税(120万円)をあわせると合計で634万8000円になります。

 

母親がすべての財産を取得した場合の相続税(1140万円)に比べて、505万2000円も節税できるのです。

マンション全体を親が所有していれば特例が適用される

ちなみに、今のケースの事情を少し変えて、4階と2階の別の部屋に親と子が住んでいるが、分譲マンションの2室を親が所有しているのではなく、マンション全体を親が所有している場合はどのようになるのでしょうか?

 

この場合、4階と2階の2室に対応する土地部分には小規模宅地等の特例が適用されます。なぜならば、この場合は区分所有ではないため、「その被相続人の居住の用に供されていた一棟の建物に居住していた者であって、相続開始時から申告期限まで引き続きその宅地等を所有し、かつ、その建物に居住していること」に該当すると考えられるためです。

 

具体的には、次の部分に対応する宅地等がこの特例の対象となります。

 

①被相続人の居住の用に供されていた一棟の建物が建物の区分所有等に関する法律第1条の規定に該当する建物である場合には、当該被相続人の居住の用に供されていた部分

②①以外の場合には、被相続人または当該被相続人の親族の居住の用に供されていた部分

 

なお、上記①の「建物の区分所有等に関する法律第1条の規定に該当する建物」とは、建物の独立した部分ごとに所有権の目的とすることができる建物を指します。ただし、構造上区分所有しうる建物が当然に区分所有建物に該当するわけではなく、区分所有の意思を表示する必要があると解されていることから、通常は区分所有建物である旨の登記がされている建物となります。

 

また、単なる共有の登記がされている建物はこれに含まれません。そして、4階と2階の2室以外の賃貸部分に対応する土地には、貸付事業用宅地として50%の評価減が適用されます。

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    本連載は、2015年7月30日刊行の書籍『親子で進める二世帯住宅節税』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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